「で、何で俺らは見張りな訳っ。」シンは不服そうに口を尖らせ、

「ったく、隊長たちは夜の嗜みって、何なのよっ。」ルナも右に同じだった。

制服に着替え、2人はホテルの屋上から海を眺めていた。

キラとラクスの警護を命じられていたのである。



「じゃっ、警護、よろしくっ。」

ディアッカが例の軽い調子で命を下す。

「あの、隊長たちは何を・・・。」

ルナは訝しげに質問をはさむ。

「え?聞くの?大人が夜にすること、わかるでしょ?」

ルナはあからさまに軽蔑の表情を浮かべた。

具体的な任務の目的、内容はイザークの一喝で終わった。

「自分で考えろっ!」




「・・・って言われても、こんな穏やかなのに、何しろって言うんだよっ。」

シンは手すりに背中を預けた。

見上げた空には一面の星が瞬いていた。

寄せては返す波の音、頬を撫でる潮風、満天の星空。

幼少の頃からプラントで育ったルナにとっては全てが美しく感じられた。

その分、任務に対する不満は和らいだ。

「ま、私達肉体派は休まず働けってコトかなぁ。」

メイリンはお役御免でホテルの1室で休んでいる。

「あいつら『ガキは黙って働けっ』って、いっつも仕事押し付けてくるし。最っ悪な上司だ。」

半ば投げやりなシンを見て、

「かつての英雄ですからねぇ、あれでもっ。」

ルナはユーモアを含めて返した。

シンはルナへしかめ面を向けた。

「だいたい、アスランが悪いんだ。俺たちをこんな隊に配属させてっ。」




ミネルヴァのパイロット及びクルーがジュール隊へ引き継がれたのは、

アスランがラクスへ進言したことが契機となった。

デスティニー・プラン執行のため第一線で活躍したミネルヴァには、

戦犯としての罪が世論の矢というかたちで向けられた。

それ以上に、彼らは自分自身によって罪の意識と虚無に苛まれていた。

思い描いた正義と平和が目の前で崩された。

その正義と平和のために命を懸けて戦った。

だが、大儀と信念は否定され、描く先にあったものは平和ではなかったことを、突きつけられた。

自分たちが信じて行ってきたことは、ただの殺戮と破壊だったのか・・・。

あの戦争は一体何だったのか・・・。

自分に出来た事は何か。すべきことは何だったのか。

誰もが平和な世界を望んでいるのに。

それは自分も同じなのに。

何故、出来ない・・・。


自分は何のために戦うのか。

何のために生きるのか。

答えは自分で出さなければならない。

だからこそ彼らはジュール隊にふさわしかった。

イザークとディアッカはあの若さで2度の戦争を経験し、

己の信念を貫きプラントのために戦い抜いた。

彼らの苦しみの根源を知り、同じ痛みを抱え、背負い、

しかし決定的に違う何かを持つ。

イザークとディアッカはそれを示している。


何も伝えることが出来なかった自責の念は今もアスランの胸にある。

だからこそ信頼する戦友に託した経緯があった。

しかし、アスランの意図を知るのは議長であるラクスと、イザークとディアッカだけであった。




「まぁ、メイリンにとってだけは良かったって思うよ。

ディアッカと同じ境遇でしょ。気持ち楽になると思う。」

ルナは姉の顔を見せる。

「そうだけど・・・。」

シンはまだ煮え切らない様子だ。

「で、本当は何が一番不満なの?」

ルナはくるっと振り返ると、覗き込むように問う。

きっとその答えは・・・。

「俺をガキ扱いするなーー!!!!」

ルナの爆笑が夜空に響いた。





ラクスの髪に絡めた指が止まる。

「あれ・・・、今、シンの声が・・・。」

「お元気ですのね。」

ラクスはゆったりと微笑む。

「キラ、続きを・・・。」