悲しい週末
重い雲が立ち込めるある日。
ウチの膨れ王子が3匹の仔猫を拾ってきました。
ワタシにわからないように家の中につれて入り、
自分たちの部屋に置いていたようですが、思いのほか大きな鳴き声でスグにバレます。
「元いた場所に戻してきなさいっっ!!」
ワタシは漫画の中によくあるシーンのように、膨れ王子に言いました。
我が家にはもう既に1匹の犬を飼っています。
ワタシもダンナどんも仕事やスカウトで家にいないことが多いし、
子供たちもバイトや学校で帰りが遅い。
そのウチイタズラを始めるであろう仔猫たちの世話を、
半身不随の母にできるはずもなかったから・・・・・。
だけどワタシがそう言った時、ちょうど雨が降ってきた。
さすがのワタシもその中に、まだ目も開いたばかりであろう仔猫たちを置いてこいとは言えなくなった。
「貰い手を見つけてきなさいっっ!!」
そうは言ったものの、そう簡単には見つからない。
情が移る前に、早く引き取り手を探さなきゃと思う親の気持ちとは裏腹に、
子供たちはそれぞれ名前をつけた。
姫が「みーちゃん」、壊れ王子が「あんず」、膨れ王子が「空」と・・・・・。
いくら名前で呼ぶなと言っても、彼らは「みーちゃん、あんちゃん、そ~ちゃん」と呼び続けた。
ようやくワタシの同僚が1匹をもらってくれることになって、
グレー一色、垂れ目の空ちゃんがもらわれていった。
偶然にも「あんちゃん」と名づけられたその仔は、今でも元気に飛び回ってるようだ。
その後、貰い手も見つからないまま、
「みーちゃん」と「あんちゃん」はおてんば姉妹へと成長していった。
そのあんちゃんが、この日曜日、もう二度と帰ることのない旅に出てしまいました。
その朝まではいつものごとく、姉妹で争うようにしてエサを食べていたのに・・・・・。
我が家にやってきた時には一番臆病者で、
撫でてやろうとすると後ろずさりをし、毛を逆立てて怯えていたあんちゃん。
それが慣れてくると一番のおてんばさんに早変わり。
遠い位置からワタシの足に飛びついて、いくつも引っかき傷を作ってくれたあんちゃん。
家族には「お腹が空いてる時は化け猫やなw」と笑われてたね。
3匹の中で一番の美人さんだったあんちゃん。
おっきなお目目に長くてピンと伸びたおヒゲと眉毛が可愛かった。
だけどそのおっきなお目目ももう開くことはない。
ワタシがスカウトの活動を終えて帰ってきた時には、もう冷たくなっていたあんちゃん。
そのあんちゃんの傍に寄り添うように眠っていたみーちゃんが悲しかった。
誰か可愛がってくれる人の元にと思っていたワタシは、
情が移りそうであんまり写真も撮ってあげなかった。
でももうすっかり情は移っていたんだね。
実は秘かにあんちゃんがお気に入りだったワタシは、
泣き続ける王子たちの前では泣けないので、ベッドに入ってから泣きました。
あんちゃん、大人になるまで飼ってあげられなくてごめんね。
でもキミはきっと、王子たちの心の中にずっとずっと生きてるから、
どうか安らかに眠って下さい。
我が家に笑顔をありがとう。
大好きだよ、あんちゃん。