空の思い出☆ | 空の行方☆

空の思い出☆



仕事帰り、車で信号待ちをしている時、

ふと視線を感じてフロントガラスから上を見上げたら、

お月さまがワタシを見つめておりましたw




「あなたでしたか♪」




思わずそう呟いてしまったワタシ。




今日はいつもとは違う、暖かそうなまぁるいお月さまが、

そこでポッカリと微笑んでる気がした。

ちょっとオレンジ色に染まってね。





で、ふと思い出した。 ついこの間のささいな出来事。






家族で食事に出かけた帰り、車を駐車場に停めて1~2分ほどの家までの帰り道。

ワタシと手を繋いでいた末っ子の膨れ王子が、ワタシの手を引っ張る。




「なぁなぁ、お母さん。」


「なに?」


「さっきから思っててんけど・・・・・。」


「だから、なにぃ~?」


「お月さまがずっとボクのこと、見てんねん。」


「・・・・・・・・・。」





二人で見上げる夜空。

確かにお月さまは、彼を見つめていました。






「なんでボクのこと、見てるんやろ~?」


「う~ん・・・・・悪いことしてないか、見張ってんのとちゃう?」

「そうなん??」






クスクスっと笑いながら、真剣な表情で空を見上げる膨れ王子をからかうワタシ。






「違うで。 アンタのことが大好きなんや♪

 だから、ずぅ~っと見てんねん。」






後ろから追いついてきた長女の姫が、ワタシに「いらんこと言うな」と目で合図。






「そっかぁ~、ボクのこと好きなんや~♪」






ワタシの手を離し、嬉しそうに空を見上げながら前を歩く膨れ王子。

その後ろ姿を見ながら、姫とヒソヒソ話。






「アンタもお姉ちゃんになったな~♪

 そんなこと言うようになるなんて・・・・・。」





ワタシより背の低い姫が「ん?」という顔で、ワタシを見上げながら言う。





「ワタシがちっちゃい時、お母さんが言うてくれてんやん。」


「・・・・・・・何を? なんか言うたっけ??」


「んもう!! 言うてくれたやん。

 ワタシが『お母さん、お月さまがどこまで行ってもついて来る~』って言うた時、

 『それはアンタのことが大好きやから。 だからついて来んねんで~♪』って・・・・。」






・・・・・・・・そういえば、そんなことあったな~。

この子、そんな昔のこと、覚えてたんだ・・・・・・。





ワタシたちの前を、上向きながら歩いてた膨れ王子に、

後ろから走ってきた壊れ王子がちょっかいをかける。

怒った膨れ王子が壊れ王子を追っかけて、家まで競争。





「そういえば、アイツはそんなこと言わんかったな。

 夢がないねん、夢が・・・・・・。」





膨れ王子のちっちゃいお母さんである姫は、

彼にちょっかいかける壊れ王子が気に食わないらしい。





「そんなことないで。 

 お月さまの思い出はないけど、ヤツも昔は可愛いこと言うてた♪」


「えっ? なんて??」


「ふふw・・・・・・・ナ・イ・ショ♪」


「うわぁ~、教えて~や~!!」





今度はワタシと姫が追いかけっこ♪





そう、彼とも懐かしい空の思い出がある。






まだ膨れ王子が生まれたばかりの頃、

年子でお兄ちゃんになってしまった壊れ王子は、

夕方の忙しい時間になると大泣きして、よくワタシを困らせていた。





ある日、当時住んでいたマンションから、西に夕陽が沈むのが見えた。

その日の夕陽は大きくて、オレンジ色で、本当にキレイだった。




それまでは忙しさにかまけて、ゆっくり構ってやれないどころか、

まだ小さな壊れ王子を叱ることの多かったワタシ。




でも、その日はなぜかその夕陽を見て、気持ちが穏やかになった。




「おいで♪」




小さな壊れ王子を呼び、抱き上げて夕陽を見せる。

夕陽に染まるその顔は涙でグチャグチャだ。




「うわぁ~・・・・・。」


「キレイやな~♪」


「うん・・・・・。 お母さん。」


「なに?」


「お日さま、どこ行くん?」


「そやな~、今からはおねんねかな~?」


「また、明日来るん?」


「うん、アンタがいい子にしてたら来るで~♪

 だって、アンタのこと大好きやからな♪」


「ふぅ~ん・・・・♪ 

 お日さま、バイバァ~~イ!!

 また明日な~~!!」






ちっちゃな手、ちっちゃな足、ちっちゃな背中・・・・・。





そう、この子はお兄ちゃんになったけど、まだまだ甘えたい盛りのちっちゃな子供だった。

そのちっちゃな体を「ごめんね」の気持ちを込めて、ギュ~っと抱き締める。

まだ赤ちゃんの匂いがした。




それからは夕方、キレイな夕陽の見える日は、

彼を抱いてベランダに立った。




普段はまだ手のかかる膨れ王子にかかりっきりだったけれど、

その時・・・・・・その数分の間だけは、彼との蜜月。

甘いあま~い時間だった。







「懐かしいな~。」


「また思い出に浸って・・・・・。

 オバハンになったらこれやから・・・・・。」


「うるさいな~~!!」





ダンナさまにからかわれ、ふと現在に連れ戻される。




ウチの家族には、空の思い出がいっぱい♪

いつか、この子たちが大きくなった時、思い出す日が来るのかな?




苦しい時、辛い時、悲しい時・・・・・・。




空を見上げて、青空や、お日さまや、お月さまを見て、



「一人じゃない。 お月さまが見てるから♪」


「明日になったらまた太陽は昇る。

 明日は頑張ろう!!」



そう思ってくれたら、いいのにな~。






そんなことを思ったつかの間の信号待ち。

後ろからクラクションを鳴らされて、慌ててアクセルを踏む。



家で待ってるはずの、生意気盛りの我が子たち。

そしてそれをいつでも、どんな時でも見守ってくれる空。




これからのことを思いながら、クリスマスのイルミネーションが灯りだした道を、

家に向かって車を走らせた、今日の出来事でした。