精密検査は想像以上に大変だった。
度重なる通院、血液検査やMRI検査、超音波検査、CT検査、長い注射針を胸から肺の中に刺す経皮針生検。他にも色々。
筋肉痛のような痛みも少し気になっていたので、 “ 肺癌 腕の痛み ” と調べたら、転移の可能性あり と沢山出てきた。

「もし癌だったら腕に転移してたりして。」
「だけど肺に影が映ることはよくあるらしいし、きっと大丈夫だよ」なんて話してた。

“ たまたま検査に引っかかった ” 
ふたりとも本当にそう思っていたし、まだ夫は30歳だし、咳も痰も出てないし、ご飯もたくさん食べていたから。
なのに、追加検査が続いてなかなか終わらない。徐々にただならぬ予感を感じるようになり、不安が募った。

そうしているうちに独身最後の日を迎えた。
この日は夫の通院日。
料理は全くしない私だったけれど、明日からは奥さんになるんだから!と 気を引き締めて慣れないご飯作りをしていた。
夜19時頃、夫が帰宅。
病院どうだった?と聞いたら、とりあえず大丈夫だったよといつも通りの顔で言われてほっとした私。
夕食を食べ終わって片付けが落ち着いた時、夫に話があると切り出された。
「ごめん、さっきはご飯の前だったから言わなかったんだけど。診察の終わりに先生と少し雑談してて、明日結婚するんですって言ったらさ、速報が出てたみたいで悪性腫瘍だって。俺、肺癌なんだって…」

もともと、入籍日に検査結果を聞く予定になっていた。でも、主治医は明日結婚する事を知り、せめて前日に癌告知を、と考えたんでしょう。かなり苦渋の決断だったと思う。

夫に話の経緯を詳しく聞いた。
肺癌であることは判明したが、ステージについては次の診察時に分かるということ。腕の痛みがもし転移ならば、ステージIVだということ。その場合、治療すれば余命は年単位、しなければ半年ということ。

あまりのショックに思考回路、完全停止。
だけど初期なら望みはあると自分に言い聞かせた。もしそうでなくても、いつかはどちらかが先に死ぬ。病気を理由に心が揺らぐほどぬるい気持ちで決めた結婚じゃない。
突然の告知に冷静さは失っていたが、不思議と結婚に迷いはなかった。なので婚約は破棄しない、と夫に伝えた。

主治医からのお心遣いに甘え、入籍日ではなくその翌日に全体的な病状の説明を受けることに。遠方で暮らすお義母さんとお義兄さんも、来てくださることになった。

新しい人生の幕開けと同時に、すべてが終わりへと向かっていく予感がした。
晴れて夫婦になる日だというのに。

この日はほとんど寝つけなかった。