「あれ?エントリーのタイトルが前回と同じだよ?」
「続きを書くん?っていうか続きがあったんや」
「うん。「徴用の問題」と「徴用問題」は別だっていう話なの」

「?どういうこと?」
「徴用はどういう法令に基づいてどう実施されたか?また徴用に応じた労務者は現場でどのような待遇を受けたか?というのが「徴用の問題」、徴用の実施運営について朝鮮人の強制連行があったとか、現場での使役や待遇に差別があったとかいう話が「徴用問題」と作者は考えているの」
「えーっと、徴用について学術的に検討追究していくのが「徴用の問題」で、そこから法的道義的な責任を探究、追及していくのが「徴用問題」ってことになるんかな?」
「たとえば、労務者の給与について内地人と朝鮮人の間に格差があった場合、朝鮮人差別の証拠であり不当な待遇を受けていたとして、何らかの批評や主張に持っていくのが「徴用問題」って感じかな」
「事実論題と価値論題の違いみたいだね」
「で、今年の夏、韓国では徴用についての訴訟で日本企業に賠償を命じた判決が出てたでしょ。ま、最後はいつもの通り日韓基本条約に伴う請求権協定等で解決済み、ってことになるとは思うんだけど…ちょうどそのころ、徴用の研究に関係する団体の方から軍艦島の問題や「徴用問題」の展開について訊かれた作者は一つの展開、見通しに思い至ったの」
「これからどう展開するかについての見通しやな」
「徴用を強制連行だと証明して日本政府を非難する試みが頓挫した場合、労働環境や人権問題といった視点、切り口に変化してやはり日本批判を続行するようになるぞって」
「労働環境や人権問題にシフト…あれ?どこかで見たような変化だよ」
「うん、所謂『従軍慰安婦問題』と同じ道だよ。「徴用の問題」と「徴用問題」という分け方もそこから来てるの…Polalisさんの教示が元なんだけどね」
「確かに、従軍慰安婦問題は、今は労働環境や女性の人権といった点からどうこう言うようになっとるけど、昔は
「「私は軍の命令を受けて慰安婦を強制連行して送り込んだ」という吉田清治証言がクローズアップされて、従軍慰安婦問題が主張された1990年代初頭は、軍による強制連行、軍の関与が争点だったの」
「あー、秦郁彦が済州島の現地調査で批判したヤツや」
「吉田清治…最初に証言を取り上げた朝日新聞が、最近になってやっと間違いを認めたっていうものだよね」
「で、軍が慰安婦を強制連行した、あるいは強制連行に直接関与していたっていう証拠が見つからないもんだから、軍による「狭義の強制」はなかったが「広義の強制」はあった、なんていう論にシフトしたの」
「?」
「「軍が強制的に慰安婦を連行したというのが狭義の強制で、慰安婦が行きたくないけど行かざるを得ない状況というのが広義の強制らしいけど、強引だよねぇw」
「生活のために働かざるを得ない作者も広義の強制の被害者やw」
「関与の方についても、慰安所の設置規定や管理についての業者への指令を以て「関与があった」としたんだよねぇ」
「そんな「関与」なら普通だよね…運営にしても利用にしてもほったらかしにできないし…」
「で、実は、軍による強制連行・関与の証拠を探すために資料を集めようとしたのが「アジア歴史資料センター」の発端だったりするの」
「でも見つからんかったと」
「うん。そういう政治的な話を別にして、公文書の保存の重要性を知っていた福田康夫さんがアジ歴設立に熱心に動いたんだよね。福田さんの功績の一つだと思うよ」
「地味だけどいいことだよね」
「そういうわけで2000年代初頭には従軍慰安婦問題は強制連行や軍の関与といった論点が崩壊して、新たな論点に移っていったんだけど、なぜか日本国内では論点を変えない人が多かったので、そのへんの変化も一般にはあまり知られてなかったようなんだよね」
「その新たな論点が労働環境・人権問題ってことやな」
「そういうこと。人権意識の進んできた今の時代に合っているし、当時の労働環境が劣悪だったのはすぐわかるから、大義名分としてふさわしいよ」
「徴用問題もそうなるというのが作者の見通しなんだね」
「確かに労働環境は劣悪やったやろしなぁ…」
「でもね、労働環境や人権問題を持ちだす人々は、結局のところ、日本政府非難、攻撃の道具として従軍慰安婦を使っているだけで、慰安婦の人権のことなんて考えてないと思うの」
「ちょ、ちょっとそれは過激、言い過ぎだよ。今の時代の錦の御旗なんだし」
「理由はあるよ。従軍慰安婦の置かれた労働環境や人権侵害に対して本当に問題だと思うなら、なぜ朝鮮人(或いは加えて中国人)慰安婦のことしか言わないの?一番多かった日本人慰安婦について語らないの?」
「あ!一番多いのは日本人か」
「もし、日本人は加害者国の構成員だからというなら朝鮮人も当時大日本帝国の構成員だったし、別の民族だからというならまさに「レイシスト(人種差別主義者)」の行動だよね」
「皮肉なことになるよね…」
「っちゅうことは、徴用問題で労働環境の劣悪について語るなら、日本人も含めた労務者全体の話にせなあかんし、そもそも今の価値観や道徳、社会状況を基準にして当時のことをどうこう言うこと自体がおかしいってことになるやんなぁ」
「そういうことだよ。この見通しが当たるかどうかは分からないけれど、覚えておくと得するかも」
徴用の問題