写経屋の覚書-なのは「今回はね、朝鮮の土地に関する伝統的な慣習について見ていくよ」

写経屋の覚書-はやて「エンコリのスレでは第6回でやったやつやね」

写経屋の覚書-フェイト「じゃぁ、獄長日記の参考エントリーはないのかな?」

写経屋の覚書-なのは「うん。今回のネタ元は統監府が出した『慣習調査報告書 韓国最近事情一覧』なの。まずは122ページを見て」

写経屋の覚書-慣習報告第34問_122
写経屋の覚書-慣習報告第34問_123


第三十四 地上権に関する慣習如何
  地上権又は之に類する権利ありとせは其目的如何(中略)
家屋其他の建物を所有するための借地は契約に因るものなるも十数年前まては無断にて他人の地所に家屋を建造する者往往にしてあり既に建築に著手したる以上は所有者は如何ともするに由なかりしと云ふ是れ第二十五問に記したる「給造家地」の規定並に造家地に付ての慣習に孕胎したる悪習にして之かため他人の土地に家屋を建築したる者は其土地の所有権を獲得するものの如く誤解せられたり(後略)

写経屋の覚書-フェイト「無断で他人の土地に家を建てても、土地の所有者はどうしようもないって…」

写経屋の覚書-はやて「ん?獄長がエンコリでこの手の史料をあげてたような記憶があるんやけどなぁ…それはともかく、むちゃくちゃな慣習やけども根拠っぽいものがあるみたいやね」

写経屋の覚書-なのは「そうなんだよね。で、根拠として書かれている『第二十五問に記したる「給造家地」の規定』については、『慣習調査報告書 韓国最近事情一覧』にこう書いてあるの」

写経屋の覚書-慣習報告第25問_75
写経屋の覚書-慣習報告第25問_76
写経屋の覚書-慣習報告第25問_77
写経屋の覚書-慣習報告第25問_78

第二十五 土地、建物の所有者は如何なる権利を有するか
  例へは政府か土地、建物等の入用ありと認めたるときは所有者の承諾なきも之を収用することを得るか若し然りとせは所有者に償金を与ふるか之を与ふるものとせは其金額は如何にして之を定むるか又土地の所有者は空中又は地下に向ひて如何なる権利を有するか例えは他人か空中又は地下に工事を施すを禁することを得るか

(前略)
また近年に至るまて家屋建設のため土地の売渡又は貸渡を求めらるるときは之を拒むことを得さる慣習ありしか今は行はれす而して此慣習は経国大典戸典給造家地の条に「京中造家地漢城府聴人状告以空地及満二年未造家之地折給若因出使外任遭喪未造家者勿聴大君公主三十負王子君翁主二十五負一二品十五負三四品十負五六品八負七品以下及有蔭子孫四負庶人二負用三等田尺」とあり大典通編に「勿論空垈及圃田許民造家本主防塞抵毀者以制書有違律論斑戸之因此図占民田対索貨賂不給貰銭(借地料)者以侵占田宅律論」とあるに基因す此他隣接地の関係として所有権に制限を受くることは次の第二十六問に記す所の如し
(後略)

写経屋の覚書-フェイト「『家を造るための土地を給付する』ってことだと理解していいんだよね。で、家を建てるという理由で土地の譲渡や貸借を要求してきたら断れないって慣習?」

写経屋の覚書-なのは「漢城の中にある家を建てられる土地で、空地や2年間家を建てていない土地を報告してきた人には、その土地を給付するってことなんだけど、これがその慣習の元ネタになっているって話なの」

写経屋の覚書-はやて「一見むちゃくちゃに見えるし実際むちゃくちゃな規定慣習やねんけど、それなりに根拠つーかネタ元はあるんやなぁ」

写経屋の覚書-なのは「それとね、『造家地に付ての慣習』についてはこういう概念もあるの」

写経屋の覚書-慣習報告第10問_40
写経屋の覚書-慣習報告第10問_41


第十 物の区別あるか
  例へは動産、不動産の別の如きもの
(前略)而して朝鮮従来の慣習として家屋と敷地とか同一所有者に属するときは家屋の譲渡又は典当は当然敷地に及ふものとせり是れ家屋と敷地と併せて売買する風習なりしより遂に家屋の売買及び典当には当然敷地を含むものと看做すに至りしものにして此点に於ては家屋を主たる物と視敷地を従たるものと視る感あり故に家屋のみを目的とし敷地を除外する売買、典当に在りては特に其旨を契約書に明記するを例としたり但光武十年十二月土地家屋証明規則の施行以来土地と家屋とは各別に証明を為すこととなりしより此慣習は漸次廃滅に帰する傾あり

写経屋の覚書-はやて「土地の上に家が建っとるんやのうて、家に土地がくっついとるちゅうような考え方なんやなぁ。このへんが日本と朝鮮の慣習・概念の違いなんやね」

写経屋の覚書-フェイト「でも、土地家屋証明規則の施行以降は廃れてきたともあるよ」

写経屋の覚書-なのは「家に土地が附随するという考え方だから、宅地である『垈』の扱いについてもいちいち細かく規定していかないといけないの。土地家屋証明規則については、獄長日記のエントリー『土地家屋証明規則』を読んでね」

写経屋の覚書-はやて「やっぱし、掘っていったら必ずどこかで獄長日記に突き当たってしまうんやなぁ。ま、そのほうがええけど」

写経屋の覚書-なのは「そういうわけで今回は土地と家屋の慣習についての史料をあげてみたんだけど、次回も土地に関する話になるからね」

写経屋の覚書-フェイト「どんな話になるの?」

写経屋の覚書-なのは「『駅屯土』についての話なんだけど、どう進めていこうかな?」