秋の蛍(あきのほたる)
夏の日が落ちると、里山の水辺でぽつり、
ぽつりと光り始め、やがて音もなく飛び交う蛍。
そっと手で包むと、ひそやかな冷光が指の間からもれてきます。
古くから親しまれているのは体長約15ミリのゲンジボタルと、
体長約8ミリのヘイケボタルです。
蛍の名所と呼ばれる地は数多くありますが、
近年の環境破壊の影響から、
天然の蛍は減るばかりです。
生息環境を取り戻す活動の一方で、
観光資源としての養殖蛍が生態系を乱しています。
立秋を過ぎても飛んでいる「秋の蛍」は、
数もまばらで、そこはかとない寂しさが漂います。
さらに秋が進み、飛ぶこともなく草の露のように
淡く光る蛍は「病蛍」と呼ばれ、
いっそう哀れを誘います。
たましひのたとへば秋の蛍かな 飯田蛇笏