ムーンライト
ポスターからも判るように
少年、十代、成年と
一人の少年の成長を3世代の俳優が演じています
黒人対白人の構図の映画ではありません
アメリカの黒人社会のなかの
さらに差別をうける境遇にある少年シャロン
生活苦から麻薬中毒になり育児放棄をしている母親
学校では、身体の小ささから“チビ”とあだ名をつけられ
歩き方を揶揄され、いじめの対象になります
シャロンは自分の境遇を受け入れながら
まっとうに、真っ直ぐに生きようとします
同級生たちから追いかけられ
廃墟のアパートに逃げ込んだシャロンを救ったのは
麻薬密売人のフアンでした
フアンは父親不在のシャロンにとって
それを埋めるような大切な人となっていきます
食事を食べさせ
恋人のテレサとともに頑なシャロンに向き合い
心を開かせるフアン
月夜の海に連れて行ってシャロンに泳ぎを教えるフアンは
信頼する人に心を委ねること
自分の人生を切り開くこと
をシャロンに教えます
“他人に自分の人生を決めさせるな”というフアンとの出会いが
その後も続く過酷な人生を
シャロンが泳ぎつづける支えとなるのです
フアンが密売している麻薬が
実はシャロンの母親に渡っていることを知ります
自分の仕事がシャロンの不幸に繋がっていることを知って
苦しむフアン
この作品でアカデミー賞で助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリは
シャロンを包み込む大きな優しさと
亡くなってからもシャロンの支えであることを納得する
素晴らしい演技です~☆
観終わったあとに心に残るのは
月の光にも似た清冽な思い
シャロンが歩んできた道は
アメリカの黒人社会の中にあって
さらに特殊なことではなくて
どの国の、誰の日常にも起こりうる
変わらない出来事であると
そう思える物語でした
作品賞の受賞は当然だと思います
鑑賞日;2017年4月1日