「噂なんてそんなものだよ」
彼はそう言うと、紫煙をくゆらせた。
あることないこと噂になる。
『火のない所に煙は立たぬ』
でもまるで何もない所でも火事になる。
それがアイドル。
黙って鎮火するのを待つしかない。
「おいで。綺麗だよ」
窓辺で彼が手招きする。
ホテルの部屋からは、街の夜景が綺麗に見えた。
誘われるままにベッドから立ち上がり、紫煙の残り香が香る彼の腕の中へ生まれたままの姿で飛び込んだ。
「朝まで愛し合おう。俺達はずっと繋がっている。それでいい」
世間はもう終わったと思っているかも知れない。
でも、僕らに終わりはない。
始まり、続く。
それが噂の真相だ。


