「上がるよ」
「えっ?」
空を見上げていた君が僕を見る。
瞳の中に首を傾げる僕が映っている。
「雨、上がるよ」
「でも、雲が・・・」
小降りになってきた雨を透かしてみる空は、厚い雲に覆われている。
星を見るには難しい天気。
「雲は見ないでおこうよ」
「無理だよ」
「想像するんだ。雲を抜ける自分を」
「飛ぶってこと?」
「心を飛ばしてごらん。どんなに厚い雲でも、心は簡単に突き抜けるよ」
空を見上げた。
くすんだ雲をどかしてみる。
心の中で。
「あっ、青空だ」
「うん、どんなに厚い雲も、僕らを遮ることは出来ないさ」
そう言って笑った彼と、今日も会う。
世間と言う厚い雲を突き破り、満面の笑顔で。
それはまるで月夜のランデブー。
