それが悪いか chapter23 | infection  ~YooSu~

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「はい、カット」

 

 

監督の声が響き渡ると、張り詰めた空気が緩んだ。

これが撮影であることを忘れ、役にのめり込んでいたハヤトは、ルイを見つめたままうっとりとしていた。

 

 

「ハヤト」

 

 

ルイの形の良い唇が動く。

こんなに近くでハヤトの名を呼んでくれるなんて奇跡だ。

その唇に触れたい。

先ずは唇ではなく、指先でその柔らかさを確認したい。

 

 

「ハヤト」

 

 

ためらうハヤトを誘うように、またルイの唇が動く。

ハヤトは愛情を込めて、指先を伸ばした。

 

 

「あ、痛っ」

 

 

ルイの唇に触れようとした途端、指先に痛みが走って、ハヤトは伸ばした指先を引っ込めた。

見ると指先には波状の跡がついていた。

 

 

「早くどけ」

 

 

ルイはつれなくハヤトの体を押し退けた。

 

 

「酷いよルイ。歯形つけるなんて」

 

 

「ハヤトがいつまでも動かないからだろ」

 

 

「当たり前じゃないか。恋人といちゃついて何が悪い」

 

 

「恋人なのは撮影の間だけだ。カットの声が掛かったら魔法は解ける」

 

 

さっさと行ってしまいそうになるルイを引き止め、ハヤトは顔の前で両手をくねくねと動かし唱えた。

 

 

「アブダカダブラ」

 

 

「何だよ、それ」

 

 

「しっ、ルイに魔法かけてるんだよ。ずっと恋人でいるように」

 

 

「ばか」

 

 

パチンとおでこを叩いたルイの顔は微かに赤く染まっていた。

 

 

 

続く