「ああ、幸せ」
しずくと真夏は同時に言って、顔を見合せた。
「良かったね」
「うん」
「ハルハルのおかげだね」
「うん」
「もちろん、ユンのおかげでもあるけど」
「うん」
「ハヤトが勇気を持って、告白してくれたおかげだね」
「うん」
「春が来たね」
「うん」
「本物の春だね」
「うん」
「真夏」
「うん」
「泣かないで」
「しずくも泣いてるよ」
「だって嬉しくて」
しずくの目から、また涙がこぼれ落ちた。
春ファン以外の人からすれば、馬鹿馬鹿しく感じるだろう。
でも、しずくと真夏にとっては、まるで片思いが叶ったような気分なのだ。
ハルハルのブログには、アイドルグループのユンがハヤトの肩に手を置いて微笑む写真が載っていた。
見出しは〈アイドル同士の熱愛発覚!?〉
普通ならばショックを受けていただろう。
でも、あのオフ会に参加した人は皆手放しで喜んだはずだ。
あの日、オフ会が御開きになりそうな時間に駆け込んできた二人組が、目深にかぶった帽子とメガネ、マスクを外した時、誰もが目を疑った。
そこには画面の中にしか存在しなかったアイドルグループのユンとヨンが満面の笑みを浮かべていたから。
続く