「んー、何でもない」
じっと俺の顔を見つめる君に、「何?」と聞いたら、微笑みながらそう言った。
その後もにこにこしながら、俺を見つめている。
何となく恥ずかしくて、それを悟られたくなくて強く言う。
「何だよ、言えよ」
「何でもないよ」
穏やかに微笑む君。
でも、気になる。
俺、何かしただろうか。
今日一日を振り返るが、変わり映えのしない日だった。
いつものように仕事をして、いつものようにご飯を食べ、いつものように君の側に座っているだけ。
それなのに、君は一日中ご機嫌で、俺を優しく見つめている。
くすぐったい。
理由が知りたい。
そしたら、明日からも君を笑顔に出来るかも知れない。
「気になるから教えてよ」
絶対何かあるはず。
君を笑顔にする魔法が。
真剣な俺の表情に、君は覚悟を決めたのか、おもむろに姿勢を正して言った。
「いつも通りって幸せだなぁと思って」
平々凡々。
そんな日々が魔法の日に変わる。
俺もだよ。
君が側に居て、笑顔で居てくれること。
それが、俺の幸せ。
ドラマチックなんていらない。
幸せは平凡なんだから。