「久しぶり」
出すつもりのない手紙。
だからこそ書ける言葉もある。
「またこの季節が巡って来たね」
覚えているだろうか。
花吹雪の中のキス。
「会えないかな」
あの日のように。
二人寄り添いながら、歩きたい。
「今でも僕は君を」
そこまで書いてペンを置いた。
窓から空を見る。
青く澄んだ空に、腕を伸ばすようにその花は膨らみ始めている。
まるで僕の気持ちのように。
あの頃からずっと膨らみ続けているこの想いを、花が咲いたら君に届けようか。
「好き」
空に向かって呟くと、一片の花が飛んだ。
君の元へと、言葉が翔けた。

