涙が出そうだ。
遠くから見た君の姿に、僕は動揺した。
「ユチョ・・・」
声を振り絞ったつもりだったのに、喉の奥が微かに振動しただけだった。
名前を呼びたいとずっと思ってきた。
昔のように、肩を叩き笑い合いたい。
僕が君の名前を口にしないのは、怒っているからじゃない。
今でも君の声を幻のように聞く。
僕達はどこまでも一緒だと誓い合ったあの日。
君は忘れてないよね。
僕は忘れないよ。
だって僕達は奇跡の証人。
巡り合って共に歩んだ奇跡を無かったことになんて出来るかい?
僕らが間違っていたと思うかい?
神が居るならば、神の御心のままに進んだだけ。
人混みに紛れて君の背中が消えて行く。
僕の目に、うっすらと幕が張る。
ぼやけて滲んだ視界の中で、あの見慣れた笑顔が振り向いた。
驚いたように目を見張り、僕を見つめる君。
名前を呼ぶんだ。
彼の名前を。
でも、涙が溢れて声にならない。
立ち尽くす僕に向かって彼が走る。
息を切らして、僕の目の前に立った君が、くしゃっと微笑んだ。
「ジュンス」
肩を叩かれた僕は、何も言えないまま君に飛び付いた。
会えると信じていた。
それがどんなに小さな可能性でも。
きっとゼロじゃない。
