この温もりには覚えがある。
僕を抱き締める腕の心地良さ。
「会いたかった」
熱い吐息と共に耳朶に注ぎ込まれる言葉に、ぷるりと体を震わせた。
思い出す熱情。
この男のすべてを欲していたのは僕。
今更ながら、離れられないと思い知る。
「僕の方がもっと会いたかった」
顔を見て言うほどには素直になれない。
でも、抱き締められた腕の温もりの中では言える。
「いや、俺の方がもっとだ」
「僕だよ」
二人とも昔から負けず嫌いの性格だった。
お互い譲らないまま、告白を続ける。
「俺は・・・もうこんなだぞ」
「あっ・・・」
身体に押し付けられる熱に、僕の中心も熱を持って答える。
「君もこんなに待っててくれたんだ」
「あっ・・・当たり前・・・だろ」
触れた指先の感触に、言葉が途切れる。
熱い吐息だけが響き合う。
もう我慢しなくていい。
欲していたものはここにある。
目覚めた身体、解放された心。
闇に沈んでいた時間が動き出す。
「愛してる」
その言葉が側にあれば。
Fin.