「遠くに来たのかな?」
君の問い掛けに頷こうとして躊躇った。
確かにあの頃から、遠くに来てしまったのかも知れない。
でも、まったく同じ場所にいる気もする。
遠くて近くて曖昧なここ。
過去も現在も未来も、カオスのようにいっしょくたになっている。
時間の定義はあまりにも曖昧で、遠い過去も今になる。
今、自分がいるのはここだけど、心にあの頃を思い描くと、すぐにそこに戻る。
過去に生きているわけじゃなく、でも、過去が現在を作り、未来を輝かせる。
「遠くではなく、より近くなっているのかも」
そう答えた俺に、君は口角を上げて微笑んだ。
うん。
やっぱり遠くではなく、近くに居る。
あの頃は今も続いている。
