白い壁。
清潔なシーツ。
浸透していく静寂に身を置いて、ほっと息を吐く。
君に会うのはいつ以来だろう。
うるさい世間の目から逃れるように、ただ静かに身を隠した君。
そんな君から突然の手紙。
『あの部屋で。あの記念日の、あの時間』
「Y」とだけ書かれた署名。
それでも僕にはすぐに分かった。
二人で特別な時間を過ごした部屋は、今もそのままだった。
とっくに誰かのものになっていると思ったのに、君から貰った鍵を差し込むと抵抗もなくドアが開いた。
懐かしい空気。
微かに感じる君の気配。
ここに来て改めて気付く。
僕の心は変わっていない。
ずっとずっと君のことを想っている。
「今でも愛してるんだ・・・」
気持ちを吐露した僕の耳に、カシャンとドアの開く音がした。
肩越しに振り返る僕の瞳に君が映る。
「おかえり」
僕の元へ。
今、君は帰る。
