「お邪魔します」
誰も居ないと分かっているのに、そうっとドアを押し開け部屋の隅々にまで目を走らせる。
「入ります」
ドアの隙間から体を滑り込ませ、音がしないようにドアを閉めた。
今、家には自分しか居ない。
誰に見咎められる訳でもないのに、抜き足差し足で静かにそこに近付いた。
主の性格を現わす様に、綺麗に整頓された飾り棚には本や小物がバランスよく配置されている。
「こんなに小難しそうな本を読んでるのに・・・ねえ」
その中の一冊を手に取り、パラパラと捲ってから呟くと、気付かれないようにきちんと元の場所に戻した。
ずらりと並んだ本の背表紙を見つめ、端から指で辿る。
背表紙独特の固さと、でも紙の質感の残る感触に指を滑らせていくと、ひとつだけ質感の違うものに行き当った。
「これか・・・」
背表紙の一番上に指を掛けて手前に引くと、それが間違いなく探していた物であることを証明するように、本の中でカランと音がした。
これを知ったのは本当に偶然だった。
それは数日前の真夜中のこと。
「ふう、よく頑張った。今夜はこれくらいにしよう」
目頭を押さえ疲れを解すように数回揉むと、耳を塞いでいたヘッドフォンを外す。
椅子の背もたれに体を預けて伸びをすると、口が痛いくらいに大きなあくびが出た。
「もう、こんな時間か・・・」
時計を見るとかなり根を詰めていたのが分かる。
ここまで夢中で頑張れるのはやはり好きだからだろう。
椅子から立ち上がりまた大きく伸びをすると、トイレに行くために部屋を出た。
真っ暗な廊下。
でも一筋だけ灯りが漏れてぼんやりと明るい場所がある。
夜更かし仲間が居たようだ。
その部屋の前を通ったのに他意があったわけじゃない。
ただトイレに行くのにその部屋の前を通らなければならなかっただけのことだった。
まさかこれのことを知ってしまうなんて。
並べられた本の中からそれを思い切って引き抜くと、本来なら聞こえるはずのない音がまたカランと響き渡った。
To be continued.....
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皆様。
じゅんじゅんでございますm(_ _ )m
この週末はみきらぶ、ちぃ亀と楽しいおデート中に付き、何を予約投稿しようかと悩みました結果、表で小説を上げてみようと思い付きました。
裏のミステリーユンジェに倣って、ちょっとミステリーっぽくいってみたいと思います( ´艸`)
前、後編で終わる予定でございますが、お楽しみ頂けたら幸いでございますm(..)m
では、皆様。
また明日、ミステリーの続きでお会いしましょう( ̄▽+ ̄*)←裏は止まっているが