胃抱蛙 | Flog

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Frogの研究者の息抜きblog

--- since 01-06-07 ---

Gastric brooding frogと呼ばれるカエルが、オーストラリアに居ました(過去形)。

Gastric/胃で、brooding/卵を抱える、つまり、オタマを胃の中で育てて、子ガエルになったら口から吐き出すと云う変わったカエル。卵の周りには、prostaglandinが蓄えられており、其れに依って、胃液の分泌を抑えて、消化から免れている様です。
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Rheobatrachus属の2種のみだったんですが、2種とも1980年代に絶滅してしまいました。

そのうちの1種、R. silus(southern gastric brooding frog)は、そもそも、発見されたのが、割と最近で、1972年だそうです。それで、10年余りで絶滅とは・・。上述の不思議な生態が最初に確認されたのが1974年で、それが論文になったのが、1981年です。因みに、Natureは、rejectしたそうで(笑)。野生で、個体が最後に見られたのが、1979年、ないし1981年、で、飼育されていた個体が死んだのが、1983年で、それがこの種の最期。

その翌年、今度は、R. vitellinus(northern gastric brooding frog)が、発見されました!、と喜んだのも束の間、翌年には、二度と姿を見なくなっていました。


Lazarus Project - マリアの兄でイエスが蘇らせた男の名に因んで名付けられたプロジェクト。

5年にも及ぶ試行錯誤の結果、凍らせて保存されていたR. silusの体細胞から核を取り出し、近縁種のMixophyes fasciolatusの卵に移植することで、R. silusのゲノム情報を持った初期胚の発生を進めることが出来た、と云う話。これは、正に、Gurdon先生のノーベル賞受賞の元になった研究の応用例です。

これは、ほんの序章にしか過ぎません。発生は、未だ、gastrulationすらまともに起こらず、死んでしまう状況です。仮に、もっと先迄発生が進んでも、そもそもが胃の中で育つカエルをどうやって、in vitroで育てることが出来るのか?課題は、山積みですが、好きです、こう云うサイエンス。