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Frogの研究者の息抜きblog

--- since 01-06-07 ---

Fetal microchimerism(FMc)と云う現象があります。哺乳類の胎児の細胞が、血流に乗って、母体内に侵入する現象で、その意味で、母体は、部分的にキメラだと云う訳です。

母体の血液中から、胎児のDNAを回収して、遺伝的疾患がないかの出生前DNA診断が可能になっているそうです(恐らく、費用の面から、未だ、実用的ではないのだと思いますが)。

この現象は、母体に、有利に働く場合(傷ついた組織の修復力や免疫力を高める)もあるし、不利に働く場合(自己免疫疾患の原因になる)もある様です。

此れ等が、妊娠中に起き得るのは、まぁ、解りますが、なんと、マウスでは、此れ等の胎児由来の細胞が、母体の脳の中に残っていることが分っていましたが、今回、実は、ヒトでも同様のことが起きていることが判りました。

59人(32歳から101歳で死んだ女性)の脳の剖検サンプル(でY染色体特異的な遺伝子)を調べた結果、実に63%のケースで、男性(Y染色体)由来のDNAが検出されたそうで(但し、此れ等の女性の妊娠歴が判らないそうで、中途半端なデータだ・笑)。

ところで、アルツハイマー病(AD)は、一説には、妊娠の回数が多い程、そのリスクが高まる可能性があるので、次に、同チームは、此れ等の脳組織にADの兆候が見られるか、また、FMcとの関連性が見られるかを調べたところ、33例でADの兆候が見られ、お”、若しかすると、胎児由来のDNAが、影響を与えているのか?と思いきや、予想に反して、33例の脳では、ADではない26例に較べ、男性(Y染色体)由来のDNAを持つ割合が有為に少なかったそうで。

と云うことは、つまり、若しかすると、胎児由来の細胞が、AD予防になっているのか?

マウスに於いては、胎児由来の細胞が、母体の心臓に到達し、更に、心筋へ分化し、傷ついた心組織の修復を助けている例が報告されているので、同じこと ー 脳に到達した胎児由来の細胞が、神経細胞に分化し、傷ついた脳組織の修復に関わっている、かも???

ま”、真相は、未だ、闇の中(笑)。


と、たまには、ちょっとサイエンティフィックな話でも(笑)。

いや、たまたま、記事を見たのでね。原著論文は、コチラ

Sat, Dec 01