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Frogの研究者の息抜きblog

--- since 01-06-07 ---

2月に一時帰国した際に本を買い込んで来ました。その中の一冊。

霧村 悠康 『脳内出血』 (だいわ文庫)。所謂、ミステリィ。

たまたま、書店で手に取って、パラパラとめくったら、ノックアウトマウスと云うのが眼についたので購入。

いや、個人的には面白かったですが、恐らく、一般の読者の反応は芳しくないかも。

千葉のホテルの一室で、女性の遺体が発見される。最初は、絞殺に依る殺人だと思われたが、実は、脳内出血による突然死の後にベルトで首をしめられた死体損壊ということが判明するが、被害者は偽名を使って宿泊しており身許は要として知れない。唯一の手掛かりは財布の中から見付かった0ldosnと書かれた一片のメモのみ。一方、大阪にある国立O大学医学部では、若き秀才の大学院生、島田に依る、脂肪細胞中で脂質合成に関わるusop10遺伝子に関する研究成果が『ガイア・コスモス』と云う世界的に権威のある科学雑誌の医学版に掲載されたばかりであり、死体が発見された当日には、島田は東京で開かれていた代謝病遺伝子学会でその概要を発表し喝采を浴びていた。ところが、その論文のデータは捏造された物であると云う告発が医学部長の元へ届けられ、やがて、マスコ ミにも知れることとなり、大騒ぎになる。やがて、ホテルで見付かった遺体の身許が分かると、意外にも・・・・、と云う感じで、論文捏造事件と死体損壊事件が絡みあい乍らストーリーが展開していくのだが、まぁ、所謂、ミステリィとしては、それ程評価は出来ない。例えば、被害者の候補者が見付かった際に、候補者のアパートに落ちていた毛髪からDNA鑑定をして、被害者とは別人であることが判明するが、DNA鑑定などせずとも部屋には幾らでも指紋があるだろうに!一部、叙述トリックがあり、ひとつは直ぐに分かるが、もう一つは、ちゃんと布石があったにも関わらず迂闊にも引っ掛かって仕舞った(笑)。しかし、これに関して、最後のエピローグは、全くの蛇足の極みである。

著者の霧村悠康は、大阪大学医学部卒の現役医師である。また、本書に描かれている内容から推論すると、恐らく、臨床だけではなく、所謂、基礎研究で分子生物学に触れた経験があるに違いない。

実は、本書に描かれている島田に依る論文捏造事件は、実際に大阪大学で起こった事件を題材に採っていることは明白である。2004年にPTENと云う遺伝子(因に、本文では、usop10がタクシーの運転手にuso 嘘・p10 ペテン、と揶揄される場面があるが、実際の遺伝子がPTENであった)に関する論文がNature Medicineと云う世界一流の雑誌に掲載され、2005年に論文が取り下げられている。関係した指導教授2名は、2006年になってから停職処分(で 済んだのは、この後、相次いで発覚した他の論文捏造事件で関係者が懲戒免職になっていることを考えると、大甘の処分であろう)を受け、また、捏造の張本人とされる学生が2教授を名誉棄損で提訴するなど一時世間を騒がせたのだが、恐らく一般の方々の記憶にはほとんど残っていない事件であろう。それがソックリそのまま、本書では再現されており(←実際の事件がそうだったと云う意味ではないですよぉ!)、若しかすると、著者は、当時、その身近に居たのでは?と云う様な行間を読むのが非常に面白い。

閑話休題。

評に戻ろう。(私は分子生物学的研究を生業としているので、読者としては可成りバイアスが掛かってしまっており、冒頭に述べた様に一般の読者は全く違う 感想を持つかもしれないが、)個人的には、この本は、物語としては面白く読めた。ただ、その昔、渡辺淳一が『ダブル・ハート』で、札幌医科大学を追われたが、著者の身の上がちょっと心配でもある。

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