2009年はダーウィン・イヤーである。
ダーウィンとは、某局の『ダーウィンが来た!生きもの新伝説』でもお馴染みの進化学者チャールズ・ダーウィンのこと。今年は彼の生誕200周年であると同時に『種の起源』の出版から150年目の記念すべき年である。
そんな年にタイムリーにも出版されたのが、本書、『進化から見た病気「ダーウィン医学」のすすめ』
である。
病気の話なのに実は著者は医者ではない。著者の栃内新は、生物学者であり、専門は動物発生学、免疫学、進化学である。そう、ダーウィン医学とは、実は、所謂『医学』とは別物なのだ。病気を生物学、特に発生進化学・生態学の立場から見直そうと云う全く新しい潮流の学問であり、本書はその入門書である。
本書は、誰でも罹る様な身近な病気や、或いは、一般に良く知られている病気を例に取り上げ、それを『生物学』の観点から解釈し直すことで、これ迄の『医学の常識』を見直している。つまり、ダーウィン医学に依る観点から病気を観るとどうなるかを説明することで、逆にダーウィン医学とは何かを解いて行く、と云う方法で書かれている。
概ね平易な文章で綴られて居り、恐らく高校生でも無理無く理解出来る内容となっている。
敢えて辛口の評価をすれば、対象としている読者の幅を、恐らく、可成り広く見積もっている所為であろう、全体の構成が、帯に短し、襷に長しになってしまっている感は否めない。
具体的に云えば、上記の様に平易に書いているある反面、前置き無しに専門用語が出て来て、一般の読者には若しかしたら意味が通じないのでは?と思われる様な箇所、また、平易にする余り、厳密には間違った表現になってしまっているような箇所や説明が重複して冗長に感じられる箇所が見られる。例えば、各所で
『DNAへと逆転写』『RNAに転写』『RNAが翻訳』等の表記が見られるが、ココでの『転写』や『翻訳』は、生物学用語である。或いは、181頁では、
『老化を促進するかのようなこの遺伝子』と云う表現が見られるが、これは正確には、
『・・・この"変異"遺伝子』或いは『・・・この遺伝子の"変異"』であろう。
或いは、一般読者と云うより、より専門家に対する著者の好意で、参考文献・資料として専門論文が引用されている。しかし、誌面スペースの制約の為なのであろうが、ごくわずかだけであり、個人的には、もっと多くの論文を引用して欲しいところだ
。また、本文中のどの箇所に相当する文献なのかも分かり難いのも難点ある。
が、此れ等の短所は、マイナーなポイントであり、本書は、ダーウィン医学への優れた入門書であり、本書に通じて、読者は、病気をこれ迄と違った見え方で捕らえることに新鮮な驚きを覚えるだろう。
今日の世の中: n.d
今日の瞬間最低体脂肪率: n.d.
今日の万歩計: n.d.