紅葉。
この土地を開拓しようと思いたった理由
はふたつです。
ひとつめ
眼下に広がる銀杏並木の美しさと、
おまけに春のさくらの初々しさを
見て惚れることができるから。
ふたつめ
隣地に彩られる、深紅の紅葉、
今までに見たことのないような
朱色の紅葉の群れが、そよ風に
ふかれて、颯爽とその朱色の輝きを
増すから。
↑ 開拓完了直前の紅葉は、
未だ秋の訪れを前に、緑々とした
風情を保っていました。
↑解体工事完了後の紅葉は、
2本を残し、すべてを切り取られていました。
その光景を見た時、最初は現実を
受け止められませんでした。
解体屋さんが、お隣に植っている
紅葉もろとも、すべてを葬り去ったのか。
いえ。
すぐ見当がつきました。
こちらの土地の具合の打ち合わせの日、
お隣の土地から見た、私どもの土地の
身なりを確認していたとき、
ちょうど紅葉の所有者の奥様と
出会い、ご挨拶をしました。
そのときに、
興奮してしまい、
つい、
紅葉の素晴らしい佇まい、
それらの葉が落ちたときには、
当事務所の若手が拾い集めますので、
これからもよろしくお願いしますと。
これが仇となりました。
聞けば、お隣の土地の方が、
解体最終日の夕方、
うちの紅葉も切ってください。
大変で、管理ができません。
と、解体屋さんにご依頼されたようです。
あの日、お手伝いします的な
おせっかいを言わなければ、
お隣の方は、気を遣わず、
あっぱれな紅葉の彩を、
見続けていたことでしょう。
こちらの、勝手な気持ちを
おしつけたがため、
命ある紅葉は、
その未来を絶たれることに
なってしまいました。
善意と善意が申し合わせた結果、
尊い紅葉を失ってしまいました。
この土地で、新たなスタートを
切るには、出足から後悔の念が
耐えませんが、
またすぐ植樹して、
希望の朱色を
この土地に
根付かせたいと
思います。