この時期といえば、高校野球。

高校野球を見ていると、自然にドキドキし、応援し、

涙してしまう、じゃ、なんでそういう気持ちに

させるのでしょうか?


 今回は、今まで高校野球を経験し、ずっと観て

温めてきた僕なりの高校野球の解釈をしたいと思います。



1 「環境」

 まず、高校野球に必要な事は、「環境」です。

そうです、野球をやれる環境です。


 野球は、サッカーと違い大変お金のかかるスポーツです。

硬式グローブで数万円、バットもスパイクも、移動コストも、

ユニフォーム一式の負担だってあります。


 金銭的負担は、単に部活動の範疇を超えます。

ここに最初の環境に対する感謝、つまり、野球をやらせてもらえる

両親への感謝の気持ちが芽生えます。


 そして、野球ができるということは、すなわち、健康であるという

ことで、これは、野球がとても危険で、命を落とす可能性があることを

意味します。


 僕も高校時代、鼻骨を骨折しましたが、コルクに糸を巻いて、

皮の布で包んだ硬式球は、スポーツという娯楽を遥かに超えた

危険負担を承知しなければなりません。

 その危険に対し、事前に声かけをしてくれる指導者、

また周囲の大人に感謝の気持ちが絶えなくなります。



 また、高校生活は、部活だけではありません。

学業に対する負担も計り知れません。


 子供にいつも言うのですが、野球ができても一流にしかなれない、

超一流の選手になるには、学力が必須だと、心から思います。



 早実の清宮君、元巨人の桑田投手は皆学校でも優秀です。

清宮君は、全校でも一ケタ台、また、僕と一緒に3年間野球漬になっていた

同級生は、現役で東大に入っています。


 世の中、あきらめる人が負けるんだと、つくづく思います。

野球を言い訳に勉強しない時代はとっくの昔に終わりました。


 むしろ、昔から、野球と勉学は両立して当たり前なんだと思います。




2 トーナメント


 次に、高校野球に感動し、応援するのは、大会が、

一発勝負のトーナメント戦だからです。


 真剣勝負で3年生は負けたら即引退。

でも、高校時代の恩師(甲子園で全国制覇)は、

こういいました。

 「これで負けても、命を落とすわけではないんだから、

常に堂々と戦え」


 勝負の世界はやるかやられるかです。

ある意味いじめに近い考え方です。


 つまり、勝つには徹底的に勝たないと勝てない。

遠慮したり、躊躇したりした瞬間、したたかな相手に

ひっくり返されておしまいです。


 そんな状況で、自分の力を発揮するにはどうしたらいいか。

それは、つまり努力の量、つまり、練習しかありません。


 石川県の小松大谷高校は、昨年、県大会の決勝で、星陵高校に、

9回裏8点差を逆転され負けました。

 本年、小松大谷は、同校に、9回裏3点差をひっくり返し勝ったのですが、

その練習に密着した取材で、勝てた秘訣を目の当たりにしました。


 グランドでのノックの最中、ノックを受ける当事者以外に、

後方で待つ選手も、同じ動きをして、イメージトレーニングを

していました。


 高校野球では、先ほどもお伝えした通り、固い硬球が命を

落とす危険をはらんでいます。


 グランドが小さく、野球センスのある水戸商業でも、ノック中に少し油断した隙に、

守っていた選手の顔に打球が直撃し、大事に至ったケースを

聞いています。


 ですから、ノック中のよそ見は厳禁なのですが、このチームの

集中力は、いつでも他人事とは思えない生き方を今後

できるという点で、どれほど優れた指導なのかと、本当に感心しました。





3 集団のスポーツであるということ


 野球は、9人でやるスポーツですが、ベンチ入りは、だいたい

20人まで認められています。


 強豪校になると、100人越えの大所帯になる訳ですから、

清宮君1人じゃ勝てないスポーツです。


 ここで、大切な事は、チームとして、ひとりひとりの選手を

活かすこと、殺すことです。


 つまり、裏を返せば、レギュラーになるには、

活かされて、殺されやすい自分にならなければなりません。


 まれに、高校野球を「残酷物語」と罵る方もいます。

確かに高温の中、連投する投手を観て感動するということは、

残酷なことかもしれません。


 でも、ここで重要なのは、投手が、その試合の大部分を

背負ってくれているということです。


 だいたいのチームは、上手で、器用で、負けず嫌いな子が

投手になります。

 勝って当たり前、負けたらそいつのせいになってしまいます。

    つまり、一生懸命やってるのに報われない機会が多いのが、


投手の宿命であり重圧です。



 では、どれだけ投手の、そのような精神的負担をなくす事が

できるか、これが、チームワークであり、高校野球で最も

覚えなければならない、犠牲になったチームメイトに

対する「配慮」なんだと思います。


 もし、自分が打ったヒット1本に酔いしれ、

その試合に負けた投手の気持ちを慮れない人間であれば、

それは、チームにいる必要がありません。


 勝つ事は負ける事が伴うという事、

つまり、勝っても負けても、態度や気持ちをいちいち

変えてはならないのです。



4 地域を背負う


 最後に高校野球は、地域の戦いです。

住めば都、自分の地域が勝って欲しいから、

応援したくなるのです。


 反面、それは、多大なるプレッシャーを

選手に与えてしまいます。


 WBCでは、あのイチローでさえも、

プレッシャーの真ん中にいました。


 今回、歴代2位の安打数に辿り着いたのですが、

イチローは、プレッシャーのない打席はない、

その中でどう力を発揮するかを延々と考えている

ようでした。



 何かを背負う事は、大変なことかもしれませんが、

背負うものが大きいほど、やり遂げたときの感動や喜びは

ひとしおなんだと、常にやり遂げた方の表情をみて思います。



 ここで大切なのは、成功するだけがやり遂げる訳じゃない

という事です。


 勝つ事と負ける事が常に紙一重のこの世界で、

負けたことに反省し、勝った事に不安を抱く人間こそが、

超一流になって行くのだと思います。



 この夏頑張っている全選手にエールを送りたい、

そんな気持ちにさせる高校野球。


 今週は、いよいよベスト8から決勝まで。

 まだまだお見逃しなく、です♪

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