中国語ニュースを読むための辞書


【注】中国本土、香港、台湾などの中国語ニュースを読むための辞書。一般の辞書に載っている単語は原則として収録しない。特に注記しない限り、中国本土に関する説明。取り上げる単語は日本の漢字で表記する。


【A】

■愛国賊 aiguozei=愛国奴。愛国者の振りをして、実際には国に害を与える者を指す。「売国賊 maiguozei=売国奴」を参考にした造語。排外的な中国本土の対外強硬派もしくは保守派(左派)を指すことが多い。

■愛国者治港 aiguozhe zhigang=愛国者による香港統治。習近平政権の言う「愛国者」は事実上、親中派を指す。したがって、民主派の政治活動は否定される。香港国家安全維持法(国安法)体制下で特に強調されるようになった。マカオ(澳門)の場合は「愛国者治澳」。

■愛国主義教育 aiguozhuyi jiaoyu=中国共産党の歴史観に基づいて祖国と党を愛するよう教える社会主義思想教育。江沢民時代から強化された。「日本軍国主義打倒」を共産党政権の正統性の主な根拠としているため、国民の反日感情を高める作用がある。2005年と12年に起きた大規模な反日デモの一因となった。


【B】

■白紙運動 baizhi yundong=2022年11月に上海、北京など全国各地で起きたゼロコロナ反対デモ。10人の死者が出たウルムチ(新疆ウイグル自治区)の火災で、ゼロコロナ(清零 qingling)政策に基づくビル封鎖などが原因で被害が大きくなったとの説がきっかけとなった。1989年の天安門事件後で最大規模の政権批判デモ。「習近平退陣」というスローガンも叫ばれた。ゼロコロナ政策の緩和につながった。

■辦公室 bangongshi=事務所、オフィス。公的機関の名称にも使う。トップは主任。例えば、国務院(内閣)の香港マカオ担当部門は香港マカオ事務弁公室と称する。

■辦公庁 bangongting=事務局、官房。組織運営に関する事務を取り仕切る。トップは主任。例えば、共産党には中央弁公庁が置かれている。

■保釣 bao Diao=釣魚島(尖閣諸島の中国名)防衛運動。中華圏各地に団体がある。代表的な団体は香港の「保釣行動委員会」。各地の団体の連合体として、「世界華人保釣連盟」(本部・香港)がある。

■北上広深 Bei Shang Guang Shen=北京・上海・広州・深圳の中国本土4大都市。北京・上海は中央直轄市(地方行政区で省・自治区と同格)。広州と深圳は広東省の市。広州は省都。深圳は代表的な経済特区で、香港と接する。

■本土派 bentupai=香港の非親中派政治勢力の一つ。伝統的民主派と異なり、「一つの中国」に否定的で、香港を自分たちの本土と見なす。一部は大陸出身者排除や香港独立を主張する。若者が多く、街頭行動を重視。10年代の過激なデモを主導した。かつて「熱血公民」「青年新政」「本土民主前線」などが活動していた。同じ新興反中勢力である自決派と合わせて、本土自決派と呼ばれることもあるが、自決派より急進な傾向がある。

■本土自決派 bentu zijuepai=香港の本土派と自決派の総称。いずれも2014年の雨傘運動(占拠運動)を機に台頭し、16年の立法会(議会)選挙で親中派、伝統的民主派に次ぐ第3勢力となった。伝統的民主派と合わせて「民主派」と呼ばれることもある。香港国家安全維持法(国安法)の施行で徹底的に弾圧され、壊滅状態となった。

■部委 buwei=国務院(内閣)を構成する中央官庁。外務省(中国語で外交部)、国家発展改革委員会などがある。

■部長 buzhang=閣僚。委員会と称する中央官庁では主任。共産党中央委員が務めるケースが多い。地方の省首脳と同格。政府は党の指導下にあるため、閣僚は事務レベルのトップで、実権はあまり大きくない。「正部級 zhengbuji」は閣僚級を意味する。

■部長助理 buzhangzhuli=次官補。次官と違って、必ずしも置かれない。


【C】

■常務委員会 changwu weiyuanhui=公的機関の指導部。共産党の中央政治局や地方委員会、全国人民代表大会(全人代=国会)などに常務委員会が置かれている。政治局常務委員会は党の最高指導部で、総書記が率いる。常務委員会の略称は「常委会 changweiyui」、常務委員は「常委 changwei」。

■超級大国 chaoji daguo=超大国。習近平政権は米国を世界唯一の超大国と見なしている。中国は人口が多いため経済規模(国内総生産=GDP)が大きいが、発展レベルを示す1人当たりGDPは先進国よりはるかに小さいことから、中国では自国を普通の大国もしくは世界最大の発展途上国と規定している。国威発揚を重視する保守派(左派)には中国超大国論がある。

■春運 chunyun=春節(旧正月)輸送。春節の前から後にかけて、膨大な数の人々が帰省などのため交通機関を利用する現象。1カ月以上続く。


【D】

■大国 daguo=大国。習近平政権は自国のほか、米国とロシアを大国と規定。欧州連合(EU)も全体として大国と扱う。日本はかつて大国とされていたが、今は「周辺国」の一つと分類されている。

■大陸 dalu=中国本土の通称。本土・台湾間では公式にも使う。台湾メディアは見出しなどで「陸」と略することがある。本土・香港間では公式には「内地」と言う。香港では俗に「国内」とも言う。

■大湾区 dawanqu=広東・香港・マカオ大湾区(中国語で粤港澳大湾区)。広東省の広州、深圳両市と香港、マカオの両特別行政区を4大中心都市とする中国の先進地域。広東と香港・マカオの経済的連携を強め、世界レベルの都市群建設を目指す国家プロジェクトの対象となっている。

■単辺主義 danbian zhuyi=一国主義。中国では主に対米批判で使う。反対は「多辺主義 duobian zhuyi」。

■党和国家領導人 dang he guojia lingdaoren=党・国家指導者。共産党中央および国家レベルの指導者を指す。事務レベルのトップである閣僚より地位が高い。具体的には、党中央の政治局・書記局メンバーや国家主席・副主席、国務院(内閣)の首相・副首相・国務委員、全国人民代表人民大会(全人代=国会)の正副委員長、人民政治協商会議(政協)全国委員会の正副主席、最高人民法院院長(最高裁長官に相当)、最高人民検察院検察長(検事総長に相当)らを指す。

■党指揮槍 dang zhihui qiang=共産党が軍隊を指揮するという革命時代からの原則。人民解放軍は国軍ではなく、党の軍隊とされている。軍事の最高決定機関は中央軍事委員会。

■党組 dangzu=共産党が国家機関、団体などの中に設ける指導組織。中央官庁では通常、閣僚がその官庁の党組書記を兼ねる。筆頭次官が務めるケースもある。外務省は例外的に専従の書記が置かれている。機関によっては「党委員会」を設けている。

■多辺主義 duobian zhuyi=多国間主義。中国が外交の基本路線としている。反対の一国主義は「単辺主義 danbian zhuyi」。


【E】

■二奶 ernai=愛人。愛人を囲うは「包二奶 bao ernai」。愛人が多く住む地区を「二奶村 ernaicun」と言う。腐敗幹部の多くは愛人がいるといわれる。類義語に「小三 xiaosan」がある。

■厄爾尼諾現象 Eerninuo xianxiang=エルニーニョ現象。中国も、豪雨・洪水などの影響を受けることがある。


【F】

■発改委 fagaiwei=国家発展改革委員会の略称。国務院(内閣)で最大の経済官庁。俗に「小国務院」と呼ばれる。官庁としては例外的に、国務院と同様に正副秘書長が置かれている。マクロ経済政策などを管轄。前身は国家計画委。国家発展計画委を経て、現在の名称となった。

■反腐敗闘争 fanfubai douzheng=共産党・政府官僚などの汚職取り締まりキャンペーン。党の規律検査委員会が主導する。習近平政権になってから摘発が強化されている。事実上は党内主流派が反対勢力を粛清する権力闘争の手段になっている。

■反間諜法 fanjiandiefa=反スパイ法。2014年制定。主管部門は国家安全省。23年、サイバーセキュリティー強化などのため改正された。

■反送中 fansongzhong=2019年に香港で行われた大規模な民主化運動。「100万デモ」や「200万人デモ」で中国本土への犯罪容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正に反対した。香港政府が改正案を撤回した後も、全面的民主化を要求して運動が続き、デモが過激化。中国が香港国家安全維持法(国安法)を制定する口実となった。

■汎民派 fanminpai=香港の民主派。親中派と対立する。狭義では民主党、公民党など伝統的民主派を指し、新興の本土自決派は含まない。2020年制定の香港国家安全維持法(国安法)による弾圧で壊滅した。

■放管服 fangguanfu=(政府機関が)無駄な権限を手放し、管理を改善し、サービスを向上させること。市場経済化を進める改革で必要とされる。かつての李克強首相がその必要性をよく強調した。市場に対する統制を重視する保守派(左派)はほとんど言及しない。

■非典型肺炎 feidianxing feiyan=重症急性呼吸器症候群(SARS)の通称。略称「非典」。2002年秋に中国広東省で初めて感染者が確認され、03年夏まで同国本土、香港、台湾などで流行して、約800人が死亡。致死率は約10%と高かった。中国の関係当局は当初、感染拡大の事実を隠蔽し、十分な対策を取らなかった。対策の不手際で衛生相と北京市長が解任された。

■副部長 fubuzhang=次官。中央の各官庁に複数いる。委員会と称する中央官庁では「副主任」。閣僚級とされるケースもある。地方では副省長(副知事に相当)などが同格。「副部級 fubuji」は次官級を意味する。

■富二代 fuerdai=富裕層の2代目。改革・開放と市場経済化の結果生じた貧富の格差の象徴。親の七光りのようなニュアンスがある。


【G】

■港独 Gangdu=香港独立派。中国共産党政権は、2010年代に台頭した本土自決派を港独と見なしたが、実際には同派にすら独立追求の勢力は少なく、政治的影響力はほとんどなかった。代表的団体の「香港民族党」は18年、非合法化された。

■公安 gong'an=中国本土の警察。警視庁公安部のような特定の部門ではなく、警察全体を指す。中国語の「警察」は警察官を指すことが多い。

■公安部 gong'anbu=公安省。警察を管轄する中央官庁。最大の治安関係国家機関で、共産党の独裁体制で大きな役割を果たす。国務院(内閣)の一部門だが、実質的には党中央政法委員会の指導下にある。トップの公安相(中国語で公安部部長)は国務委員や中央政法委副書記を兼ねる。現公安相は習近平派の王小洪(国務委員・党中央書記局書記兼任)。

■公安局 gong'anju=市、県などの警察本部。大きな市では公安局の下に複数の公安分局を置く。市公安局長は副市長を兼ねることもある。

■公安庁 gong'anting=省レベル地方政府の警察を管轄する部門。トップの庁長は中央官庁の局長級。副省長(副知事に相当、次官級)を兼ねることもある。

■共産主義青年団 gongchanzhuyi qingniantuan=共産党が指導する青年組織。事実上のエリート官僚養成機関で、これまでに胡耀邦元総書記や胡錦濤前国家主席、李克強前首相らを輩出している。その勢力は「団派」と呼ばれる。略称は「共青団」。胡錦濤政権で全盛となったが、習近平政権下で衰退した。

■工会 gonghui=労働組合。中国では共産党の指導下にあり、自由な労働運動はできない。全国組織は「中華全国総工会」。総工会主席は党中央委員の王東明氏で、全国人民代表大会常務副委員長(国会副議長に相当)を兼ねている。

■工信部 gongxinbu=工業・情報化省の略称。工業の情報化ではなく、工業と情報化(IT化)を管轄する。

■共同富裕 gongtong fuyu=全人民が普遍的に豊かになること。共産党政権の長期的政策目標。改革派は「一部の人・地域が先に豊かになって、他の人・地域をけん引する」という鄧小平路線の先富論(xianfulun)に基づいて積極的な市場経済化を主張するが、習近平国家主席ら保守派(左派)は平均主義的傾向があり、市場に対する統制を重視する。

■官二代 guan'erdai=高官の子供。親の七光りで威張っている人々というニュアンスがある。類義語に「太子党」。

■管控 guankong=管理・制御する。コントロールする。

■光復 guangfu=滅びた国家を再建したり、奪われた領土を奪回したりすること。香港の反中政治運動で一時、多用されていた。香港国家安全維持法(国安法)の制定後、「光復香港」のスローガンは香港独立を意味し、国安法に違反するとされている。

■国防部 guofangbu=国防省。形式上は国務院(内閣)を構成する官庁だが、事実上は中央軍事委員会の傘下にある。担当閣僚はいるが、次官は置かれていない。軍隊の指揮権はなく、軍事に関する宣伝や対外交流を主な役割としている。

■国家安全部 guojia anquanbu=国家安全省。スパイ防止や対外情報活動を担当する中央官庁。略称「国安」。警察を統括する公安省と違って、閣僚以外の高官の氏名や省内の部門などの内部情報はほとんど非公開。現国家安全相(中国語で国家安全部部長)は習近平国家主席派の陳一新。国家安全機関は公安機関(警察)と同様、逮捕権を持つ。地方に国家安全庁や国家安全局を置く。近年は、訪中した日本人や在日中国人を拘束することが多い。

■国家安全法 guojia anquanfa=①国家安全保障の基本方針を示した2015年制定の法律。国家安全工作は共産党の指導の下、国家安全機関、公安機関(警察)、関連軍事機関が職権を行使するとしている。香港特別行政区国家安全維持法は別の法律。いずれも略称「国安法」。②スパイ防止に関する1993年制定の法律。2014年の「反スパイ法」制定に伴って廃止された。

■国家金融監督管理総局 guojia jinrong jiandu guanliju=習近平政権3期目(2023年5月)に新設された金融機関の監督官庁。旧銀行保険監督管理委員会を基礎にして、中国人民銀行や証券監督管理委の権限の一部も移管して設けられた。総局長は、中国工商銀行副頭取や四川省副省長を歴任した李雲沢。

■国家主席 guojia zhuxi=中国の国家元首。他国の大統領に当たる。儀礼的ポストであり、政治の実権はないが、首脳外交が活発になった江沢民時代の1993年から政権トップの共産党総書記が兼務。習近平政権による2018年の憲法改正で2期10年の任期制限が撤廃された。総書記は任期がないが、国家主席を兼ねることで、政権トップは事実上10年で交代することになっていたが、国家主席の任期撤廃は政権トップ終身制の道を開いた。なお、毛沢東は亡くなるまで党主席を務めたが、儀礼的な仕事を嫌って、国家主席は途中で退任した。

■国事訪問 guoshi fangwen=国賓としての公式訪問。中国の国家主席や他国の大統領、国王などが国家元首として公式に外国を訪れることを指す。

■国務委員 guowu weiyuan=上級閣僚。普通の閣僚と違って、正副首相と共に国務院(内閣)常務会議に出席できる。閣僚より地位の高い国家指導者とされる。外相などの主要閣僚を兼ねたり、共産党政治局入りしたりするケースもある。

■国務院 guowuyuan=中央政府もしくは内閣に当たる。首相(中国語で総理)が率いる。弁公庁、外務省、国家発展改革委員会、中国人民銀行(中央銀行)などから成る。共産党中央の指導下にあり、党の方針に沿って政策を策定する。正副首相と国務委員が出席する常務会議で重要決定を下す。国務院秘書長(国務委員兼任)が官房長官のような役割を果たす。首相は党政治局常務委員、副首相は党政治局員が務める。国務委員は政治局員でないケースが多い。

■国務院弁公庁 guowuyuan bangongting=国務院(内閣)の事務局。弁公庁主任はおらず、官房長官に当たる国務院秘書長の指導下にある(同秘書長は国務委員兼任)。略称「国辦」。

■国務院常務会議 guowuyuan changwuhuiyi=国務院(内閣)指導部の会議。首相、副首相、国務委員が出席する。国務院の政策は通常、全体会議ではなく、常務会議で決定される。


【H】

■海警 haijing=海警総隊もしくは海警局の略称。治安維持を担当する軍隊である人民武装警察(武警)に属する。「中国領海内のパトロール」と称して、東シナ海の尖閣諸島近海への侵犯を繰り返している。かつては国家海洋局傘下だったが、2018年の制度改革で武警所属の軍事組織になった。海事局は交通運輸省(交通运输部)に属する別の機関。

■紅二代 hongerdai=革命指導者の子孫。「太子党」(高級幹部子弟)の中で最も格が高い支配階層の人々。典型は習近平(国家主席、習仲勲元副首相の息子)、王岐山(元共産党中央規律検査委員会書記、姚依林元筆頭副首相の女婿)、劉源(元軍総後勤部政治委員、劉少奇元国家主席の息子)ら。

■紅色 hongse=赤、赤い。政治的には社会主義的、共産主義的という意味で使われる。例えば、「紅色基因 hongse jiyin」(赤い遺伝子)など。習近平国家主席ら保守派(左派)が好む。

■火箭軍 huojianjun=ロケット軍。習近平政権下の軍制改革で設けられたミサイル部隊。陸海空軍と同格とされる。かつては「第2砲兵」と称していた。


【J】

■疆独 jiangdu=新疆独立派。新疆ウイグル自治区に住むウイグル族(イスラム教徒)の独立勢力を指す。独立でなく自治を求めても同様に見なされる。習近平政権下で弾圧が強化されている。

■交渉 jiaoshe=申し入れ。中国外務省が「厳正交渉」(厳正な申し入れ)という形でよく使う。抗議ではない。

■境内 jingnei=域外。中国本土では本土内を指し、香港・マカオ・台湾は含まない。

■境外 jingwai=域外。中国本土では本土の外、つまり、外国と香港・マカオ・台湾を指す。

■精神日本人 jingshen Ribenren=精神的日本人。略称「精日」。自分を日本人と同一視するほど日本文化が好きな中国人。「日本軍国主義を肯定している」などと批判されることが多い。

■九二共識 jiuer gongshi=92年コンセンサス(もしくは合意)。1992年、中台の交流団体間であったとされる「一つの中国」原則堅持の共通認識。香港での協議でまとまったとされるが、当時発表はなく、文書も残っていない。共産党と国民党はコンセンサスの存在を主張。民進党は認めていない。


【K】

■口岸 kou'an=出入境ゲート。当局が人の往来や物資の通関を管理する。港に限らず、陸上にもある。出入境管理は公安機関(警察)が行う。

■框架合意 kuangjia xieyi=枠組み合意。近年の中国外交では、ソロモン諸島と安全保障協力に関する枠組み合意文書に署名している。企業間の取り決めでも使う。


【L】

■藍緑白 lan lü bai=青・緑・白。台湾の中国国民党・民主進歩党(民進党)・台湾民衆党を指す。2024年1月の総統選では、国民党と民衆党が協力する「藍白合作 lan bai hezuo」の動きがあったが、失敗して、野党票が分散。民進党の3連勝を許すことになった。

■立法会 lifahui=香港とマカオの議会。香港では2020年の香港国家安全維持法(国安法)制定後、選挙制度の大幅改変で民主派の立候補が事実上禁じられたので、70人の議員は全員が親中派(自称「非親中派」はいる)。行政長官を選ぶ選挙委員会と区議会も同じ状況になっている。マカオでは一貫して、民主派議員はほとんどいない。

■立法院 lifayuan=台湾の1院制国会。院長は親中派として知られる国民党の韓国瑜(元高雄市長、元総統候補)。定数113。2024年1月の選挙で選ばれた議席は国民党52、民進党51、民衆党8、無所属2。国民党は第1党の座に返り咲いたものの、過半数を得られず、柯文哲(前台北市長)率いる第3党の民衆党がキャスティングボードを握った。

■連 lian=軍隊の中隊。連隊ではない。連隊は「団」。旅団は「旅」。人民武装警察(武警)では「連」でなく、「中隊」と呼称する。

■両個毫不動揺 liangge haobudongyao=二つの全く動揺せず。「全く動揺することなく公有制経済を強固にして発展させ、全く動揺することなく非公有制経済を奨励、支持し、導く」ことを指す。2002年の第16回共産党大会で打ち出された。公有制経済は国有企業など、非公有制企業は民営企業など。保守的な習近平政権下でもこの方針は掲げられているものの、実際には国有企業の拡大・強化が重視され、民営企業に対しては規制が強まっている。

■両個確立 liangge queli=二つの確立。「習近平同志の党中央の核心、全党の核心としての地位を確立し、習近平の新時代における中国の特色ある社会主義思想の指導的地位を確立する」という個人崇拝のキャッチフレーズ。2021年11月の共産党中央委員会第6回総会で採択された新しい歴史決議に明記された。22年10月の第20回党大会で党規約に盛り込まれるといわれていたが、実現しなかった。

■両個維護 liangge yonghu=二つの擁護。「習近平総書記の党中央の核心、全党の核心としての地位」と「党中央の権威と集中統一指導」を断固として擁護することを指す。この二つは事実上同じことで、要するに習を最高指導者として絶対的に支持せよということである。習政権2期目になってから使われ始めた。2022年10月の第20回党大会で党規約に盛り込まれた。

■両個中国 liangge Zhongguo=二つの中国。中華人民共和国と中華民国の並存を認める考え。1949年に中華民国は消滅して中華人民共和国が成立したとする共産党政権は一貫して反対。同様に「一つの中国、一つの台湾」を認める「一中一台」(yi Zhong yi Tai)も否定している。

■両国論 liangguolun=中国本土と台湾は「特殊な国と国の関係」であるという説。1999年に李登輝台湾総統が提起した。中国側は、「一つの中国」の原則に反するとして非難している。

■00後 linglinghou=2000年以後(00~09年)に生まれた人々。マイカーやマイホームが急速に普及するなど、前世代よりかなり豊かな環境で育った。親は「60後」や「70後」が多い。

■六四 liu si=1989年6月4日に北京で起きた天安門事件の俗称。民主化運動が「動乱」から「反革命暴乱」に転化したとして武力で鎮圧され、多数の死者が出た。正確な死者数はいまだに不明。死者の大半は天安門広場西方の路上で戒厳部隊に射殺されたとみられる。中国では現在、「1989年政治風波」と言うことが多い。


【M】

■麻煩 mafan=面倒(をかける)。1972年に日中国交正常化交渉のため訪中した田中角栄首相は日本の過去の対中侵略について謝罪の意味で「迷惑をかけた」と述べたが、日本側がこの「迷惑」を「麻煩」と誤訳したことから、周恩来首相ら中国側は猛反発。田中はその後、真意を説明して、毛沢東共産党主席の了解を得た。

■迷惑行為 mihuo xingwei=不可思議で面白おかしいこと。特にインターネット上の画像や文章を指す。日本語の「迷惑行為」とは意味が異なる。


【N】

■南巡 nanxun=鄧小平の南部各地視察(1992年1~2月)。鄧が広東省などで天安門事件後停滞していた改革・開放の加速を指示し、高度経済成長のきっかけとなった。保守派(左派)に迎合していた江沢民共産党総書記は鄧の圧力で政策を転換した。一党員ながら党・軍に大きな影響力を持っていた鄧が発動した事実上の政変だったとみられる。

■内巻 neijuan=無駄もしくは不毛な内部競争。受験競争などについて使われる。

■農民工 nongmingong=農民出身の出稼ぎ労働者。全国で3億人近くおり、深圳、広州、上海、北京などの大都市に多い。建設労働者などとして、都市開発に貢献してきた。都市に住むが、戸籍が農村のままで、公共サービスを十分に受けられないケースが多い。俗に「民工」と言う。


【O】

■欧亜大陸 Ou Ya dalu=ユーラシア大陸。「亜欧大陸 Ya Ou dalu」とも言う。外務省ユーラシア局(外交部欧亜司)はロシア、ウクライナ、中央アジア諸国などを担当する。


【P】

■平台経済 pingtai jingji=プラットフォーム経済。インターネットサービスの大手企業を指すことが多い。テンセント(騰訊 Tengxun)、アリババ(阿里巴巴 Alibaba)、百度(Baidu)など。市場化による経済発展で大きな役割を果たしていたが、保守的な習近平政権下で規制が強化された。

■破氷 pobing=氷を砕く。砕氷。1970年代初めの米中接近のように、国と国が障害を乗り越えて関係を改善することについてよく使う。


【Q】

■清零 qingling=ゼロコロナ。もともとは「寂しくて孤独」「ゼロにする」という意味だが、2020年以後は新型コロナウイルス関係で使われることが多い。中国の政策としての正式名称は「動態清零」(ダイナミック・ゼロコロナ)。22年11月に各地で抗議デモ(白紙運動)が起きたため、翌12月から緩和。23年1月、正式に撤廃された。

■七七 qiqi=7月7日。日中戦争のきっかけとなった盧溝橋事件が起きた日。

■七一 qiyi=7月1日。①中国共産党創立記念日。実際には第1回党大会は1921年7月下旬に開かれた。②香港返還記念日。行政長官就任日でもある。かつては民主派の大規模なデモが行われていた。

■強国 qiangguo=強国。強国と大国を同一視し、経済や軍隊などの質と量を混同することが多い日本と異なり、中国では「××大国であるだけでなく、××強国になろう」というスローガンがよく使われる。共産党政権の目標も「社会主義現代化強国」とされている。

■窮二代 qiong'erdai=貧困層の2代目。農民や農村出身の出稼ぎ労働者(農民工)に多い。反対語は「富二代」。

■去風険 qufengxian=デリスキング。「去風険化」とも言う。中国では「デカップリングと同様、非中国化を意図しているのではないか」と警戒されている。

■全国代表大会 quanguo daibiao dahui=共産党大会。中央委員などを選び、基本政策を示す政治報告を採択する。大会直後の中央委員会総会(全体会議)で総書記、中央軍事委主席、政治局常務委員、政治局員などを選出する。5年に1回開催する。中央委が党大会決議を執行し、党を指導するとされているが、中央委も原則として年1回しか開かれないので、実際には政治局および政治局常務委員会が重要な決定を下す。第×回党大会は「×大」といわれる。例えば、第20回党大会(2022年10月)は「二十大 ershida」。

■全国代表会議 quanguo daibiao huiyi=共産党の臨時大会。毛沢東時代の1955年と鄧小平時代の85年の2回しか開かれていない。前者は高崗事件の処理、後者は改革・開放を進める体制整備のために開かれた。


【R】

■人民代表大会 renmin daibiao dahui=中国本土の議会。略称「人大 renda」。立法機関だが、共産党の指導下にあり、党の方針に沿って法律を制定する。全国と省・市などの地方の各レベルにある。国会に相当する全国人民代表大会の略称は「全国人大」(quanguo renda)。「全人代」は日本での略称。国家主席や首相など国家指導者を選出するが、実際には党が内定した人事をそのまま承認するだけ。全人代常務委員会の委員長は国会議長に当たり、党政治局常務委員が務める。省人大のトップである常務委員会主任は閣僚級。

■人民武装警察 renmin wuzhuan jingcha=治安維持を担当する軍隊。略称「武警 wujing」。犯罪を捜査する一般の警察(公安機関)ではない。メンバーは兵士であり、警官ではない。人民解放軍と同様、中央軍事委員会の指導下にある。かつては軍事委と国務院(内閣)の二重指導を受けていた。共産党・政府機関や大使館などの重要施設の警備に当たる。海洋警察に当たる海警も武警の指揮下にある。


【S】

■上海幇 Shanghai bang=上海閥。かつての江沢民元国家主席派の中核となった勢力。江が上海市の市長・共産党委員会書記を務めた頃の部下らから成る。曽慶紅(元国家副主席)が番頭格だった。その他の代表的人物は呉邦国(元全国人民代表大会常務委員長)、韓正(国家副主席)、王滬寧(人民政治協商会議主席)。胡錦濤政権でも大勢力だったが、習近平政権では影響力が縮小した。

■省委 shengwei=地方行政区である省レベルの共産党委員会。北京、上海などの直轄市や自治区の党委と同格。トップの書記は基本的に閣僚級。広東省などは閣僚より格が高い党中央指導部メンバーの政治局員が書記を務める。

■市 shi=地方行政区の一つ。地区級の市(地级市 dijishi)は省・自治区の下、区・県の上に位置する。北京、上海、天津、重慶は直轄市で、省や自治区と同格。県レベルの市もある。

■市委 shiwei=市レベルの共産党委員会。省都など大都市の党委書記は次官級で、省委の指導部入りする。北京、上海など直轄市は省・自治区と同格で、書記は党中央指導部メンバーの政治局員が務める。

■双循環 shuangxunhuan=(経済の)国内大循環と国際大循環のダブル循環。第14次5カ年計画(2021~25年)に盛り込まれた。「国内大循環を主体とする」とされている。事実上は部分的なデカップリング(分断)を想定しているとみられる。

■四辺機制 sibian jizhi=日米豪印4カ国の連携枠組み(クアッド)。習近平政権は、中国に対抗するための排他的連携と見なして警戒している。

■四個意識 sige yishi=「政治意識」「大局意識」「核心意識」「一致意識(中国語で看斉意識)」の四つの意識。習近平国家主席が強化を呼び掛けている。要するに「習率いる共産党中央に絶対従うという意識を持て」という趣旨である。

■四個自信 sige zixin=「道の自信」「理論の自信」「制度の自信「文化の自信」の四つの自信。習近平国家主席が堅持を呼び掛けている。「道の自信」は中国の特色ある社会主義の道を指す。胡錦濤前国家主席が打ち出した「三つの自信」に「文化の自信」を付け足した。要するに「中国共産党の一党独裁体制に自信を持て」という趣旨である。


【T】

■台独 Taidu=台湾独立を目指す勢力もしくは運動。民進党など「一つの中国」を受け入れない勢力を、中国共産党政権は台独と見なして敵視している。実際には、「台湾共和国」建国を目指して結成された民進党も、現在は中台関係の現状維持を主張している。

■躺平 tangping=寝そべる。横たわる。まるで寝そべっているかのように、物事に消極的な姿勢を指す。競争社会に疲れた若者に多いといわれる。習近平政権下の政治的締め付け強化で、官僚にも増えているとみられる。

■特首 teshou=特区首長。香港、マカオ特別行政区行政長官の通称。特別行政区の首長であり、政府を率いる。形式上、現地の間接選挙で選ばれるが、事実上は共産党政権が水面下で内定する。

■団 tuan=①軍隊の連隊。旅団ではない。旅団は「旅」。中国の「連」は中隊を指す。②共産主義青年団(共青団)の略称。

■団派 tuanpai=政治勢力としての共産主義青年団(共青団)派の略称。代表格は胡錦濤前国家主席、李克強前首相、胡春華前副首相ら。この3人はいずれも元共青団第1書記。団出身者が団派とは限らない。源流は団第1書記だった胡耀邦(故人、元共産党総書記)。習近平時代になってから勢力が衰え、2022年の第20回共産党大会で党・政府指導部から一掃された。

■脱鉤 tuogou=(経済の)デカップリング(分断)。習近平政権は米国などの対中デカップリング政策に反対している。

■脱欧 tuo'ou=欧州連合(EU)離脱。普通は英国の離脱を指す。


【W】

■外交部 waijiaobu=外務省。アジア局(亜洲司)、北米大洋州局(北美大洋洲司)、報道局(新聞司)などから成る。報道局の正副局長が報道官を務める。外相のほか、党組書記(閣僚級)と数人の次官・次官補がいる。2023年7月、秦剛外相が解任された後、前任者で共産党中央外事工作委員会弁公室主任(党政治局員)の王毅が外相を兼ねる異例の人事となった。外相は通常、政治局員より地位が低い幹部が務める。現筆頭次官の馬朝旭は閣僚級。

■網絡暴力(网络暴力) wangluo baoli=インターネット上の(言葉による)暴力。略称「網暴」。

■玩火自焚 wanhuo zifen=火遊びをして自ら焼け死ぬ。中国当局者が台湾問題などに関する対外的な警告でよく使う。「自焚」は炎による自滅を意味し、「焦げる」「やけどする」といった軽い意味ではない。

■五常 wuchang=(国連安全保障理事会=安保理の)米英仏中ロの5常任理事国。安保理は「安全理事会」で、略称は「安理会」。常任理事国の拒否権は「否決権」。

■五年規劃 wunian guihua=5カ年計画。政府が5年ごとに制定する国民経済・社会発展計画。2021~25年は第14次5カ年計画(第十四個五年規劃)。略称は「十四五」。共産党中央委員会総会が提案という形で基本方針を事実上決定。これに基づいて、国務院が計画の「綱要」案を策定し、国会に当たる全国人民代表大会がほぼそのまま承認する。

■武漢肺炎 Wuhan feiyan=新型コロナウイルス感染症の俗称。中国本土では使えない。正式名称は「新冠肺炎」。

■無核化 wuhehua=非核化。中国は、核保有国が国外に核兵器を配備することに反対する立場を表明しているが、ロシアがベラルーシに核兵器を配備することには反対していない。北朝鮮の核問題では、北朝鮮ではなく、朝鮮半島の非核化を主張している。


【X】

■西朝鮮 Xi-Chaoxian=習近平体制下の中国に対する俗称。左傾化して北朝鮮のようになっているという意味。共産党に批判的な在外中国人らの間で使われている。

■習家軍 Xijiajun=習近平派。習近平国家主席がかつて勤務した浙江省、福建省、上海市の党・政府機関出身者が多い。派内の浙江閥は「之江新軍」と呼ばれる。習政権下で形成され、「上海閥」などの江沢民元国家主席派や胡錦濤前国家主席ら共産主義青年団(共青団)派に対して優勢になった。有力幹部として、李強首相(元浙江省長)、党中央書記局の蔡奇筆頭書記(元福建省党委員会幹部)、丁薛祥筆頭副首相(元上海市党委幹部)らがいる。習政権3期目で蔡を筆頭とする福建閥が台頭している。

■県 xian=地方行政区の一つ。市の下、鎮・郷の上に位置する。市の中心部が区、周辺部が県という構造が多い。県が区に改編されることもある。北京、深圳などの大都市は区だけで県がない。東莞(広東省)のように鎮だけで県・区がない市もある。

■香港特別行政区維持国家安全法 Xianggang tebie xingzhengqu weichi guojia anquanfa=香港特別行政区国家安全維持法。略称「国安法」。2020年6月に中国全国人民代表大会(国会)で制定された香港における国家安全保障に関する法律。19年に香港で起きた大規模デモが過激化したことを口実に制定された。国家分裂罪、国家政権転覆罪、テロ活動罪、外国・域外勢力結託国家安全危害罪を規定(最高刑は無期懲役)。実際には反政府活動を禁止するもので、一国二制度下の「高度な自治」は事実上廃止された。同法により、香港特別行政区に中央政府が監督する国家安全維持委員会(中国語で維持国家安全委員会)が設けられたほか、中国治安当局の出先機関として国家安全維持公署(維持国家安全公署、略称「国安公署」)が新設された。香港警察にも国家安全局(国家安全処、略称「国安処」)が設置された。

■香港特別行政区維持国家安全公署 Xianggang tebie xingzhengqu weichi guojia Anquan gongshu=香港国家安全維持法(国安法)により新設された中国政府の香港出先機関。北京の国家安全省や公安省などから職員が派遣されている。トップは元国家安全次官の董経緯。香港警察の国家安全局を直接指導しているとみられる。

■香港特別行政区維持国家安全委員会 Xianggang tebie xingzhengqu weichi guojia Anquan weiyuanhui=香港国家安全維持法(国安法)により新設された香港特別行政区の機関。行政長官が主席を務め、政務官などの上級閣僚、保安局長(閣僚)、警務局長(中国語で警務処長、警察トップ)らをメンバーとする。中国政府の香港出先機関トップである連絡弁公室主任が「事務顧問」とされている。

■小圏子 xiaoquanzi=小さなサークル。外交問題では、米国などがつくる数カ国の反中的グループを指す。

■小組 xiaozu=特定の業務や学習のために設けられたグループ。共産党中央や国務院(内閣)にはさまざまな指導小組があり、政策決定で重要な役割を果たしている。党中央の外事工作指導小組などは機構改革で委員会に格上げされた。

■新冠病毒 xinguan bingdu=新型コロナウイルスの中国本土での正式呼称。同ウイルスが引き起こす肺炎は「新冠肺炎 xinguan feiyan」と言う。湖北省武漢市で2019年12月に初めて確認された。しかし、十分な対策が取られなかったため、同市内で感染が爆発的に拡大。その後、他の地方や外国でも感染が広がった。対策の不手際で同省共産党委員会書記(省指導部トップ)が解任された。中国政府は「武漢が発生源だという確証はない」と主張し、「武漢肺炎 Wuhan feiyan」(武汉肺炎)という呼称を拒否している。

■新質生産力 xinzhi shengchanli=新しい質の生産力。イノベーションにより、新興産業をつくり出す先進的生産力。習近平国家主席が2023年9月の黒竜江省視察で提起した。

■行政長官 xingzheng zhangguan=香港とマカオの特別行政区行政長官。略称「特首」。現地の間接選挙で選ばれるが、事実上は中国共産党指導部が水面下で人選を決める。

■行政院 xingzhengyuan=台湾の最高行政機関。行政院長は首相に当たり、総統が任命する。内政、外交、国防の各部、大陸委員会などの省庁から成る。現院長は前副総統の陳建仁。

■雄安新区 Xiong'an xinqu=河北省に設けられた国家レベルの新区。2017年、習近平国家主席の肝煎りで設立が決まった。北京、天津両市に比較的近い。深圳特区(広東省)や浦東新区(上海市)にような新興エリアを目標としているが、開発は順調に進んでいないといわれる。

■学民思潮 xuemin sichao=2011年に香港の高校生、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)らが結成した自決派の政治団体。国民教育反対運動や雨傘運動(占拠運動)に参加。広報担当の周庭(アグネス・チョウ)は「学民の女神」と呼ばれた。「民主の女神」と呼ばれたことはない。16年解散。黄らは「香港衆志」を結成したが、20年の香港国家安全維持法(国安法)制定を機に解散した。


【Y】

■厳打 yanda=犯罪組織や腐敗官僚などに対する厳しい取り締まり。1980年代から何度も大々的なキャンペーンとして実施されてきたが、習近平政権下で恒常化した。

■一帯一路 yidai yilu=陸海のシルクロード経済圏。一帯はシルクロード経済ベルト(絲綢之路経済帯 sichou zhi lu jingjidai)、一路は21世紀海上のシルクロード(21世紀海上絲綢之路)。2013年に習近平国家主席が提唱した。中国の国際的影響力を拡大するとともに、国内の過剰生産力のために海外市場を開拓する狙いがある。一帯は中央アジア、中東、ロシアを経て、欧州に至る。一路は南シナ海、インド洋、地中海を経て、欧州に至る。

■一個中国 yige Zhongguo=一つの中国。「中国は一つしかない」という考えで、共産党政権の国家統一政策の基礎になっている。この「中国」は本土、香港、マカオ、台湾を全て含む。中国側にとっては中華人民共和国、台湾側の国民党にとっては中華民国を意味する。民進党はこの原則を受け入れていない。略称は「一中」。

■一国両制 yiguo liangzhi=1国2制度。香港とマカオに対し、それぞれの特別行政区基本法によって適用されている。「香港人(マカオ人)による香港(マカオ)統治」が原則だが、習近平政権では「愛国者による香港(マカオ)統治」が優先されている。香港では実質的に基本法を凌駕する国家安全維持法(国安法)の制定(2020年)で民主派が徹底的に弾圧され、「高度な自治」は事実上廃止された。マカオは一貫して民主派がほとんどいない。香港は本土の都市にはない国際金融センターの機能、マカオはカジノ産業(本土では違法)を維持するため、同制度の枠組みが維持されている。中国共産党・政府は、台湾にも同制度を適用して「祖国完全統一の大業」を達成することを悲願としている。しかし、台湾側は民進党も国民党も同制度の受け入れを拒んでいる。

■意識形態 yishi xingtai=イデオロギー。社会主義体制の中国では共産党宣伝部が管轄する。近年は「インターネット・イデオロギー」(網絡意識形態 wangluo yishi xingtai)の工作や安全保障が特に重視されている。

■一中各表 yi Zhong ge biao=「一つの中国、各自が表現」(一個中国、各自表述 yige Zhongguo, gezi biaoshu)の略。「一つの中国」原則堅持の92年コンセンサスの意味は、中台がそれぞれ解釈するという国民党の考え。中国側は同意していない。


【Z】

■蔵独 Zangdu=チベット独立派。1959年、インドへ亡命したチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世やチベット亡命政府を、中国共産党政権は蔵独と見なして敵視しているが、実際にはダライ・ラマらは独立ではなく、少数民族の自治を求めている。亡命チベット人の中には独立論もある。

■戦狼外交 zhanlang waijiao=習近平政権の対外強硬外交の俗称。中国の戦争映画「戦狼」に由来する。外国メディアで批判的な意味で使われることが多い。⇒総加速師

■戦略支援部隊 zhanlüe zhiyuan budui=サイバー戦、宇宙戦などを担当する部隊。習近平政権下の軍制改革で新設された。陸海空軍と同格とされる。

■戦区 zhanqu=人民解放軍の軍管区。陸海空軍の部隊を擁する。陸軍は複数の集団軍(師団の上級部隊)が配置されている。2016年の軍制改革で、7大軍区が5大戦区に改編された。北部、中部、東部、西部、南部の戦区がある。日本と接する東シナ海で活動する東海艦隊は東部戦区に属する。南シナ海で活動する南海艦隊は南部戦区に属する。

■占中 zhanzhong=香港民主派が2014年9~12月に行った占拠運動(雨傘運動)。「占領中環(セントラル)」の略。行政長官選挙制度の民主化を要求したが、失敗した。伝統的民主派と異なる本土自決派が台頭するきっかけになった。金融街の中環を占拠する計画だったが、実際には金鐘(アドミラルティー)、銅鑼湾(コーズウェイベイ)、旺角(モンコック)が占拠された。

■政府工作報告 zhengfu gongzuo baogao=政府活動報告。施政方針演説に当たる。経済成長率の目標などが明記される。首相が春の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で行い、承認を得る。実際には、前年後半に共産党が中央委員会総会(全体会議)や中央経済工作会議が決めた方針に沿って策定される。

■政務司 zhengwusi=香港政府の政務省。公務員事務局、政治制度・内地事務局、民政事務局、保安局などの官庁を管轄する上級官庁。トップの政務官(政務司長 zhengwusizhang)は行政長官に次ぐ政府ナンバー2。歴代政務官のうち3人が行政長官になっている。

■政治安全保衛局 zhengzhi anquan baiweiju=反体制派を取り締まる公安省(公安部 gong'anbu)の最重要部門。かつては「国内安全保衛局」(略称=国保)と呼ばれたが、習近平政権下で改称された。

■政治協商会議 zhengzhi xieshang huiyi=共産党指導下の統一戦線組織。略称「政協」。事実上は議会形式の政治諮問機関として機能し、共産党だけでなく翼賛政党や各界の代表も参加している。議会である人民代表大会と違って、立法権はない。全国レベルの組織は「中国人民政治協商会議全国委員会」(全国政協)。地方の各レベルにも置かれている。全国政協の主席は党政治局常務委員が務める。現主席の王滬寧は政治学者出身のイデオローグ。政協はかつて臨時議会の役割を果たし、中華人民共和国の建国を決めた。

■支聯会 zhilianhui=支連会。香港市民支援愛国民主運動連合会(香港市民支援愛国民主運動聯合会 Xianggang shimin zhiyuan aiguo minzhu yundong lianhehui)の略称。1989年6月4日の天安門事件で弾圧された中国民主化運動への支援を機に発足し、香港最大規模の民主派連合組織となり、毎年6月4日に大規模な同事件犠牲者の追悼集会を開催。穏健民主派の司徒華が長く主席を務めた(2011年死去)。香港国家安全維持法(国安法)制定翌年の21年、解散した。

■中等収入陥穽 zhongdeng shouru xianjing=中進国(中所得国)のわな。中進国の経済発展が停滞して、先進国(高所得国)になれない状態を指す。1人当たりの国内総生産(GDP)などを基準にすると、中国は中進国の段階にあり、改革・開放政策はそこから脱して先進国となることを目標としている。

■中国式現代化 Zhongguoshi xiandaihua=習近平政権が掲げる発展の概念。欧米式の現代化に対抗する意図があるとみられる。第20回共産党大会(2022年)の政治報告によると、具体的には①人口規模が巨大な現代化②全人民共同富裕の現代化③物質文明と精神文明が強調し合う現代化④人と自然が和諧共生する現代化⑤平和的発展の道を歩む現代化─を意味するとされる。中国式現代化について、習近平国家主席は23年2月の演説で「『現代化=西洋化』という神話を打ち破った」「発展途上国の現代化の模範を確立し、全く新しい選択を提供した」と述べた。

■中国人民銀行 Zhongguo renmin yinhang=中国の中央銀行。略称「央行」。他国の中銀のような独立機関ではなく、国務院(内閣)を構成する中央官庁の一つ。国務院(内閣)の指導下で通貨政策を制定・執行する。総裁(中国語で行長)は閣僚級ポストだが、現職の潘功勝は共産党中央委員会メンバーではなく、政権内での地位は低い。

■中聯辦 zhonglianban=中央人民政府在香港特別行政区連絡弁公室(中国語で中央人民政府駐香港特別行政区聯絡辦公室)の略称。中国政府の香港出先機関。トップの主任(閣僚級)は、共産党広東省委員会秘書長や香港国家安全維持公署の初代署長を歴任した鄭雁雄。

■中央弁公庁 zhongyang bangongting=共産党中央の事務を取り仕切る部門。略称は「中弁」。トップの主任は党総書記の首席補佐官のような役割を担う。現主任は史上初めて党中央書記局筆頭書記(蔡奇)が兼ねている。前主任は筆頭副首相の丁薛祥。

■中央財経委員会 zhongyang caijing weiyuanhui=経済政策に関する共産党中央の調整機関。主任は習近平総書記が兼ねる。習政権下で中央財経指導小組から格上げされ、党中央の経済政策に対する権限が強まった。副主任は李強首相、委員は党中央書記局の蔡奇筆頭書記と丁薛祥筆頭副首相。事務局長に当たる弁公室主任は何立峰副首相が務める。

■中央国家安全委員会 zhongyang guojia anquan weiyuanhui=国家安全保障政策に関する共産党中央の調整機関。主席は習近平総書記が兼ねる。習政権下で新設された。副主席は李強(首相)、趙楽際(全国人民代表大会=全人代=常務委員長)、蔡奇(党中央書記局筆頭書記)の3人(いずれも党政治局常務委員)。

■中央紀律検査委員会 zhongyang jilü jiancha weiyuanhui=共産党の中央規律検査委員会。略称「中央紀委」。幹部の不正を調べる党中央の機関。通常は次官級以上を対象とする。警察や検察より強大な権限を持つ。トップの書記は党政治局常務委員が務める。現書記は習近平派で前広東省党委書記の李希。政権の実力者や主流派の政敵を倒すために使われることが多い。省など地方にも同委員会が設けられている。

■中央金融委員会 zhongyang jinrong weiyuanhui=金融政策に関する共産党中央の調整機関。金融に対する党の指導を強化するため、習近平政権3期目(2023年)に新設された。トップの主任は李強首相。弁公室の主任(事務局長)は何立峰副首相、副主任(日常工作担当)は王江(前中国建設銀行頭取)。

■中央金融工作委員会 zhongyang jinrong gongzuo weiyuanhui=金融機関の党務を統一的に指導する共産党中央の機関。習近平政権3期目(2023年)に中央金融委と共に新設された。トップの書記は何立峰副首相、副書記(日常工作担当)は王江(前中国建設銀行頭取)。

■中央経済工作会議 zhongyang jingji  huiyi=経済政策の基本方針を決める共産党・政府の重要会議。年末に開かれる。党中央委員会総会(全体会議)並みに格が高く、党政治局常務委員が全員出席する。この会議で決まった方針に基づいて、政府活動報告が策定される。

■中央軍事委員会 zhongyang junshi weiyuanhui=共産党の軍事指導機関。略称「中央軍委」。党と国家の中央軍事委があるが、メンバーは同じで、実権は党の方にある。党中央軍事委主席は党総書記と並ぶ重要ポストで、1989年から総書記が兼ねている。副主席や委員は全員が軍の制服組。現副主席は張又侠、何衛東の両上将で、前者が制服組トップ。江沢民時代以後、胡錦濤と習近平だけが国家副主席の時に軍事委副主席を兼ねた。中国の軍隊は政府ではなく、党の指導下にあり、「軍隊の国家化、非党化」は否定されている。

■中央全面深化改革委員会 zhongyang quanmian shenhua gaige weiyuanhui=中央改革全面深化委員会。各種の改革に関する共産党中央の調整機関。習近平政権下で新設された(当初は指導小組)。主任は習近平総書記が兼ねる。副主任は李強(首相)、王滬寧(人民政治協商会議=政協=主席)、蔡奇(党中央書記局筆頭書記)の3人。

■中央社会工作部 Zhongyang shehui gongzuobu=習近平政権3期目(2023年)に新設された共産党中央の機関。経済・社会団体や民間企業を指導する。初代部長は中央・国家機関工作委員会の常務副書記(閣僚級)だった呉漢聖。

■中央書記処 zhongyang shujichu=中央書記局。共産党中央政治局および政治局常務委員会の事務機関。メンバー(書記)は中央委員会総会(全体会議)で決定する。中央弁公庁主任、中央組織部長などの兼任が多い。業務は総書記が主宰する。筆頭書記は幹事長に当たり、政治局常務委員が務める。現筆頭書記は習近平派の蔡奇。社会主義体制で政府など国家機関には実権がなく、党中央の総書記─中央書記局筆頭書記─中央弁公庁主任、中央組織部長のラインが政権を動かしている。

■中央統一戦線工作部 zhongyang tongyi zhanxian gongzuobu=共産党中央で統一戦線工作を担当する部門。略称は「統戦部」。具体的には共産党以外の政党(民主党派)、無党派人士、少数民族、宗教団体、民営企業、香港・マカオ・台湾などを工作の対象とする。近年、格が上がり、現部長は党政治局員の石泰峰が務めている。

■中央外事工作委員会 zhongyang waishi gongzuo weiyuanhui=外交政策に関する共産党中央の調整機関。習近平政権下で中央外事工作指導小組から格上げされた。外務省(中国語で外交部)の上部機関に当たる。主任は習近平総書記、事務局長に当たる弁公室主任は、王毅外相が兼ねる。

■中央網絡安全和信息化委員会 zhongyang wangluo anquan he xinxihua weiyuanhui=中央インターネット安全・情報化委員会。インターネット統制に関する共産党中央の調整機関。習近平政権下で新設された(当初は指導小組)。初代主任は習近平総書記だが、現主任は不明。事務局長に当たる弁公室主任は、党中央宣伝部副部長・国家インターネット情報弁公室(中国語で国家互聯網信息弁公室)主任の荘栄文が兼ねる。

■中央委員会 zhongyang weiyuanhui=共産党の中核を成す権力機関。5年ごとに開かれる党大会が中央委員を選び、新しい中央委員会が最初の総会(中国語で全体会議)で総書記や政治局常務委員、政治局員などを選ぶ。中央委の総会は原則として年1回しか開かれないので、日常的には政治局および政治局常務委が重要決定を下す。第20回党大会(2022年10月)は中央委員205人、中央委員候補(中国語で中央委員会候補委員)171人を選出。後者は発言権があるが、表決権はない。中央委員は閣僚級、同候補は次官級だが、中央委メンバーでなくても閣僚級・次官級のポストに就くことはある。第×回党大会で選ばれた中央委員会は第×期(中国語で第×届)中央委員会、その×回目の総会は中国語で「第×次全体会議」。例えば、中央委員会第3回総会は「中央委員会第三次全体会議」、略して「三中全会」と言う。全体会議を日本語で「総会」と訳す場合は「3中総会」となる。

■中央宣伝部 zhongyang xuanchuanbu=共産党中央で宣伝・イデオロギー工作を担当する部門。略称は「中宣部」。部長は党政治局員が務める。現部長は習近平派の李書磊。新聞社、放送局、ウェブサイトなど国内の全てのメディアを支配下に置く。地方の各レベルの党委員会にも宣伝部が設けられている。

■中央政法委員会 zhongyang zhengfa weiyuanhui=警察、検察、裁判所などの治安機関を総括する共産党中央の組織。トップの書記は党政治局員が務める。胡錦濤時代は政治局常務委員が書記を務めたが、権限が大きくなり過ぎたことから、習近平政権1期目から政治局員に格下げされた。江沢民派の周永康・元書記は2015年、収賄などの罪で無期懲役の判決を受けた。現書記は前国家安全相の陳文清。

■中央組織部 zhongyang zuzhibu=共産党中央で人事や党組織建設を担当する部門。略称は「中組部」。次官級(副部級 fubuji)以上の人事を取り仕切る。部長は党政治局員が務める。現部長は、生態環境相や山東省の省長、党委員会書記を歴任した李幹傑。地方の各レベルの党委員会にも組織部が設けられている。

■中央政治局 zhongyang zhengzhiju=共産党中央の指導機関。中央委員会の総会(全体会議)が閉会中、中央委の職権を行使する。高官人事や基本政策などの重要決定を下す。企業の取締役会に当たる。政治局員(中国語で政治局委員=zhengzhiju weiyuan)は中央委員会総会で中央委員の中から選出され、現政治局員は24人。そのうち7人が政治局常務委員に選ばれ、党の最高幹部となっている(筆頭は総書記)。政治局員級のポストとしては副首相、党中央の主な部長、主な地方トップなどがある。上級閣僚の国務委員も政治局入りすることがある。

■中央政治局常務委員会 zhongyang zhengzhiju changwu weiyuanhui=共産党の最高指導部。序列順に①習近平(党総書記、国家主席、中央軍事委員会主席)②李強(首相)③趙楽際(全国人民代表大会=全人代=常務委員長)④王滬寧(人民政治協商会議=政協=主席)⑤蔡奇(党中央書記局筆頭書記)⑥丁薛祥⑦李希(筆頭副首相)。②は浙江省、⑤は福建、浙江両省、⑥は上海市で習の部下だった。②⑤⑥に⑦を加えた4人は習近平派といわれている。③④は非習派出身だが、近年は習を強く支持しているとみられる。李克強前首相(2023年死去)ら党指導部の非習派有力者は22年の第20回党大会で全員が引退もしくは左遷となった。

■自決派 zijuepai=香港の民主自決を主張する非親中派政治勢力の一つ。かつて、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)や周庭(アグネス・チョウ)の「学民思潮」(後の香港衆志)、「土地正義連盟」などが活動していた。香港独立は主張しない。

■自主創新 zizhu chuangxin=独自のイノベーション。先進的製造業発展の原動力として、共産党政権が重視している。

■総加速師 zongjiasushi=習近平国家主席の非公式な称号。極左政策で中国共産党政権の崩壊を加速するという批判的な意味で使われる。鄧小平は「改革・開放の総設計師(zongshejishi)」と経済面で肯定的に評価されているが、国内で市場や企業に対する統制を重視し、対外強硬の「戦狼外交」を進める習の政策は経済発展に不利との見方が多い。

■総理 zongli=国務院(内閣)のトップ。首相。現職は習近平派の李強(共産党政治局常務委員、序列2位)。社会主義政権では、国家機関は共産党の支配下にあるので、首相の権限はもともと、あまり大きくなかったが、習近平政権下で権限はさらに縮小。同政権3期目の李強首相は一段と格下げされた。副首相(副総理 fuzongli)4人のうち、筆頭の丁薛祥は党政治局常務委員、何立峰ら他の3人は党政治局員。

■総書記 zongshuji=共産党中央委員会のトップ。現職は習近平(国家主席、中央軍事委員会主席兼任)。党規約によると、党政治局と政治局常務委員会の会議を招集し、党中央書記局の業務を主宰する。党が国家機関を支配しているため、総書記は政権指導部で最大の権力を持つ。ただ、形式上は集団指導制の筆頭であり、その権威はかつて毛沢東が務めて党中央委主席に及ばない。党幹部の任免権はない。任期なし。

■総統 zongtong=台湾の最高指導者。大統領に当たる。1996年から直接選挙で選ばれている。任期は4年で、2期まで務められる。現職は民進党の蔡英文(2016年就任)。24年5月、頼清徳副総統が総統に就任。初めて同一政党の総統が3期続くことになる。96年以後の総統は李登輝(~2000年、国民党)、陳水扁(00~08年、民進党)、馬英九(08~16年、国民党)、蔡英文。


(了)