「ボルベール 帰郷」
ペネロペクルス主演

女性の強さと悲しさが沢山詰まっている作品です。
ペネロペクルスはこの両面を見事に体現している。
表題にもなっている歌を
熱唱シーンにそれは凝縮され、心に響く。

この監督の作品には常に男性の変質的な側面が描かれる。
そして、共感は女性の側に寄せられる。

しかし、かく語る監督自身は男なわけで。
女性を描くことを通して男性の性について
深く考察しているように思われる。
そこには自己批判や自己懐疑も含めて
深い懊悩のうちに生きざるを得ない
監督の性が見え隠れするわけで。

そういうところに感動した次第。

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「ロードオブドッグタウン」
ヒースレジャー出演


70年代スケートボード界において革命を起こした
LAの若者たちの物語。


経済的成功を収めた彼らは
資本主義に揉まれ、
友情も微妙なものになる。

しかし、久々に再会した昔の遊び場で
彼らは童心に帰り
無邪気にスケボーに興じる。

このシーンが最高にいい。
帰る場所があるというのは、
そしてそこに仲間が待っているというのは
何物にもかえがたく
素晴らしいことだと思う。


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「BLINDNESS」
アレハンドロイニャリトゥ監督
ガエルガルシア出演


とんでもない衝撃作です。
ドイツ映画「es」以来久々に内臓にズシンとくる力作だと思います。

突然原因不明の伝染病が全世界に蔓延、
感染者は全員失明してしまう中、
一人だけ感染せずに
見え続けることを「強いられた」女性が主人公の物語。

イニャリトゥ監督の前作「シティオブゴッド」の手法を活かして、
全編ドキュメンタリータッチでその恐怖感を煽ります。

主人公の女性は幸いにも
失明を免れますが、
失明者がマジョリティを占める状況下においては、
むしろ苦痛の種となってしまうところが
とても興味深いです。

また、視力を失ってアナーキズムに陥った時に、
混沌→自治→ファシズム→共同体の細分化
という人類史を模倣的に辿るプロセスもとても考えさせられる。

極限状態に追い込まれた人間たちの行動様式が、
とてもよくシミュレートされていると思います。

差別被差別の問題、
フェミニズムの問題、
極端に細分化された「異文化共生」の問題…


ただ全世界が失明したら面白いよね~
というSF的なエンターテイメントに走らずに
人間存在の多くの問題点とわずかな希望を
深く掘り下げたゆえに
この作品は心に残る衝撃作として
存在し続けるだろう。


劇場で観れなかったのが悔やまれる。


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