「メルキアデス・エストラーダの三度の埋葬」 トミー・リー・ジョーンズ監督



素晴らしい現代版の西部劇だと思います。

西部劇は、なんだか見ていてホッとする部分があると考えています。

雄大な自然、土ぼこり、馬、ジーンズ、拳銃、ウェスタンハットと、

出てくる背景や小道具は素朴なものばかり。

素朴な素材ばかりの中で、人間性が浮き彫りになってくる。

現代社会を包囲するがんじがらめのルールがここでは一時的に

脇に追いやられます。


その分、当事者以外誰も見ていないという状況の中で、

気分次第で銃がぶっ放されるという、命丸出しの物語が展開され、

空恐ろしいものも感じてしまう、

そのあたりが西部劇の魅力だと感じています。


本作品も、アメリカとメキシコという国境を巡る大きなルールが存在し、

それを抑圧材料として物語はスタートしますが、

いざメキシコへの旅が始まると、トミーリージョーンズ扮する主人公の

独断的で英雄的なルールによって国境警備員の運命は流されていきます。


とにかく無骨な男たちの物語。

それをとりまく女性たちが、

男のかっこよさと愚かさを浮きぼらせていく

という脚本はとても素晴らしい。

飽きのこないロードムービー。


それには、トミーの渋い髭面が大きく貢献しています。

こんな爺さんになれたらいいなー。

この映画でのトミーは、コメディカルな部分も含めて

めちゃくちゃカッコイイです。


弔いと復讐、贖いと償いをこのような形で映像化してしまう

脚本、演出には舌を巻かざるを得ない。

一つの死を、ここまで見つめることができるのであれば、

争いといったものはある程度抑制が効くのではないかという

幻想すらも抱いてしまう、美しい映画であった。



cozy