エイヴォン親子長期研究

第5章 腸内細菌の伝達と帝王切開

エイヴォン親子長期研究は、別名「九〇年研究」とも呼ばれ、イギリス西部のブリストル市を中心とした人口約一〇〇万人の地域において行われた。

一九九一から九二年に誕生した子ど も約一万四五〇〇人とその両親が参加し、続く一八年間の追跡調査が行われた。研究への参加 一率は九〇パーセントにも上った。それによって、成人期の疾患に対しても、その原因を母親の妊娠以前の要因や、胎児期、子ども時代に遡って検索することができることになった。そこにこの研究の特徴があった。

 ブリストル市を中心とした人口約一〇〇万人の地域が選ばれた理由は、人種を含む人口構成、 および社会経済的階層構成が英国全体のものに近く、既知の環境汚染がないというものであった。こうした背景があって、初めて、多くの意味のある研究が行われる。 研究のなかに、出産法の違いと肥満についての研究もあった。

研究からは、帝王切開と肥満 の間に因果関係があることが示唆された。妊婦の帝王切開同意書に、帝王切開のリスクとして、 子どもが将来肥満になる、あるいは喘息やアレルギーを起こす可能性がある、という一文が加 えられる日が来るかもしれない。ただし、間違ってはいけない、と思う。何度も書くが、帝王 切開が悪いわけではない。帝王切開は、多くの子と母親の命を救ってきた。注意すべきはその 乱用なのである。