☆うろ覚えで好きだった話を書いてみる
おおかみのまゆげ
昔、あるところに裕福な一家があった。
一家には三人の娘がいたが、上の二人の娘はおへちゃ、一番下の娘だけが、
なぜか美人で性格も良かった。
上の二人の姉は、妹に嫉妬していびり、母親も自分に似ていない妹を疎み、
その内、娘は姉二人と母親の手によって、山に置き去りにされてしまった。
娘は山をさまよい、草の露を集めて喉を癒し、木の実で飢えをしのいでいたが、
やがて、獣道で一匹の狼に出会った。ああ、自分はこの狼に食われて死ぬのかと覚悟を固める娘に、
しかし狼はくるりと背を向け、道案内をするように先を進んでいく。
不思議に思って狼について行った娘は、やがて、言葉を話す狼たちの里にたどり着き、
そこで歓待を受けた。
姿だけでなく、心も美しく素直な娘を、狼たちは不憫に思ったのだそうだ。
そこでしばらく過ごした娘は、やがて人里が恋しくなり、山を降りると狼たちに告げた。
それを聞き、ひときわ立派な毛並みをした狼の長老は、娘に、自分の眉毛を一本引きぬきなさいと言った。
引きぬいたそれは、銀色に輝く立派な毛だった。
狼の長老が言うには、それを目の上にかざして人を見ると、その人間の本性が見えるのだという。
それを聞いた娘は、眉毛をかざして、狼たちの姿を見た。
彼らは皆、一様に立派な人間の姿をしていた。
娘は長老に礼を告げ、山を降りた。
山を降りて人里に出た娘は、早速出会った虚無僧や、道をゆく立派な商人達に、狼の眉毛をかざしてみた。
するとどうだろう、狼の眉毛越しに見た彼らの姿は、醜いカエルや、あさましい豚などの姿ばかりだった。
衝撃を受けた娘は、街をさまよい歩いた。山を降りたばかりでみすぼらしい姿の娘を、
人々は眉をひそめ、よけて歩いた。
そんな娘が力尽きた町外れで、彼女へいっぱいの水を差し出した青年があった。
娘は、彼の姿を狼の眉毛越しに見てみた。青年は、青年の姿のままだった。
貧しい炭焼きだったその青年のもとに、娘は身を寄せることにした。
炭焼きを手伝い、娘は狼の眉毛を使って、時折青年に助言をした。
どんなに立派な身なりや、徳の高そうな高僧でも、狼の眉毛をかざして見ると、
みな、浅ましい獣の本性を見せた。
そうして、ある日娘は青年に言った。
どんな立派な人よりも、あなたは人間らしい。どうか、あなたのお嫁さんにして下さい。
それに、青年は答えた。
狼の眉毛のようなものに頼って、人を判断する女は、嫁には出来ない。
それを聞いた娘は、微笑んで、そっと風に狼の眉毛を流しました。狼の眉毛は、
さらさらと風に乗ってどこかへ消えて行きました。
これで、私はただの女になりました。あなたのお嫁さんにして下さい。
そうして、娘は貧しい炭焼きの妻になった。
それから、不思議な事にあれよと炭焼きは繁盛し、やがて、いつの間にか夫婦は、
町中でも評判の富豪になってた。
そんなある日、娘は、裏口にやってきた物乞いに、見覚えがあることに気付き、あっと声を上げた。
それは、遠い昔に、自分を家から追い出した、姉の一人だった。
訝しむ物乞いに、懐かしさからお姉さん、と声をかけた娘めに、物乞いはやがてみるみる青ざめ、
やがて、恥ずかしさと悔しさに、その場で息絶えてしまったそうな。
おわり
おおかみのまゆげ
昔、あるところに裕福な一家があった。
一家には三人の娘がいたが、上の二人の娘はおへちゃ、一番下の娘だけが、
なぜか美人で性格も良かった。
上の二人の姉は、妹に嫉妬していびり、母親も自分に似ていない妹を疎み、
その内、娘は姉二人と母親の手によって、山に置き去りにされてしまった。
娘は山をさまよい、草の露を集めて喉を癒し、木の実で飢えをしのいでいたが、
やがて、獣道で一匹の狼に出会った。ああ、自分はこの狼に食われて死ぬのかと覚悟を固める娘に、
しかし狼はくるりと背を向け、道案内をするように先を進んでいく。
不思議に思って狼について行った娘は、やがて、言葉を話す狼たちの里にたどり着き、
そこで歓待を受けた。
姿だけでなく、心も美しく素直な娘を、狼たちは不憫に思ったのだそうだ。
そこでしばらく過ごした娘は、やがて人里が恋しくなり、山を降りると狼たちに告げた。
それを聞き、ひときわ立派な毛並みをした狼の長老は、娘に、自分の眉毛を一本引きぬきなさいと言った。
引きぬいたそれは、銀色に輝く立派な毛だった。
狼の長老が言うには、それを目の上にかざして人を見ると、その人間の本性が見えるのだという。
それを聞いた娘は、眉毛をかざして、狼たちの姿を見た。
彼らは皆、一様に立派な人間の姿をしていた。
娘は長老に礼を告げ、山を降りた。
山を降りて人里に出た娘は、早速出会った虚無僧や、道をゆく立派な商人達に、狼の眉毛をかざしてみた。
するとどうだろう、狼の眉毛越しに見た彼らの姿は、醜いカエルや、あさましい豚などの姿ばかりだった。
衝撃を受けた娘は、街をさまよい歩いた。山を降りたばかりでみすぼらしい姿の娘を、
人々は眉をひそめ、よけて歩いた。
そんな娘が力尽きた町外れで、彼女へいっぱいの水を差し出した青年があった。
娘は、彼の姿を狼の眉毛越しに見てみた。青年は、青年の姿のままだった。
貧しい炭焼きだったその青年のもとに、娘は身を寄せることにした。
炭焼きを手伝い、娘は狼の眉毛を使って、時折青年に助言をした。
どんなに立派な身なりや、徳の高そうな高僧でも、狼の眉毛をかざして見ると、
みな、浅ましい獣の本性を見せた。
そうして、ある日娘は青年に言った。
どんな立派な人よりも、あなたは人間らしい。どうか、あなたのお嫁さんにして下さい。
それに、青年は答えた。
狼の眉毛のようなものに頼って、人を判断する女は、嫁には出来ない。
それを聞いた娘は、微笑んで、そっと風に狼の眉毛を流しました。狼の眉毛は、
さらさらと風に乗ってどこかへ消えて行きました。
これで、私はただの女になりました。あなたのお嫁さんにして下さい。
そうして、娘は貧しい炭焼きの妻になった。
それから、不思議な事にあれよと炭焼きは繁盛し、やがて、いつの間にか夫婦は、
町中でも評判の富豪になってた。
そんなある日、娘は、裏口にやってきた物乞いに、見覚えがあることに気付き、あっと声を上げた。
それは、遠い昔に、自分を家から追い出した、姉の一人だった。
訝しむ物乞いに、懐かしさからお姉さん、と声をかけた娘めに、物乞いはやがてみるみる青ざめ、
やがて、恥ずかしさと悔しさに、その場で息絶えてしまったそうな。
おわり