家庭をかえりみず、会社で仕事一筋に生きてきた結果、長く連れ添ったはずの妻に離婚を言い渡される…。この頃よく耳にする「熟年離婚」です。
当人は「家族のために働いてきたのに」という思いが強いと思いますが、残念ながら思いが通じ合っていなかった、ということになります。
言葉は悪いのですが、「食べさせてやっている」といった夫の態度など、精神的暴力も離婚の理由とされることも、熟年離婚が増えた理由のひとつに含まれています。
法的には“扶養の義務”を立派にはたしたと言えますが、夫婦の間には何とも説明しがたい感情がありますから、ビジネスのようにはいかないものです。
今までの日本では、長い間、夫の仕事を陰ながら支えてきたとしても、離婚した妻は夫の年金を受け取ることができませんでした。そのため、老後の生活の不安から、熟年と呼ばれる世代での離婚は少ないものでした。
こういった不安を解消し、離婚後の年金受給額の差を無くすために、2007年の4月1日から「年金分割制度」が導入されました。
「年金を分割する」といっても、年金(現金)を直接わけるものではありません。
結婚生活の間に支払われた保険料は、夫婦が協力して支払ったものとみなし、「保険料納付記録」を相手に移しかえ、年金加入記録を変更することができる、というしくみです。
年金額は、この記録をもとに計算されるので、その記録に応じた年金を受給することができるようになるのです。
年金分割制度を利用したとしても、必ず年金受給額が増えるというものではありませんので、全体的な額をよく確認することが大切です。