【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

「事故は実験中」 ソ連原発事故で 安全委副議長



【モスクワ21日AP】

ソ連のシドレンコ国家原子力発電安全委員会副議長は21日、ソ連外務省で一部西側記者と会見し、チェルノブイリ原子力発電所の4号炉が爆発したのは、専門家が同原子炉で実験をしている最中だったと述べた。しかし同副議長は実験の詳しい内容や実験が事故と関係あるかどうかについては明らかにしなかった。


(毎日新聞 1986/05/22)


【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

ソ連事故炉 設計基準は米商用炉並み 周囲に堅固な構造物
米専門家分析



【ニューヨーク19日=共同】

ニューヨーク・タイムズ紙は19日、事故を起こしたソ連チェルノブイリ原子力発電所の4号原子炉が鋼とコンクリートの堅固な構造物に囲まれていたことなどが新たに判明、推定されていたほど安全面でずさんな施設ではなく、米国の多くの商業用原子炉(沸騰水型軽水炉)の設計基準とほぼ同等の圧力に耐え得るよう造られていたことが分かったと報じた。


これは米政府や国際原子力機関などが最近集めた技術情報などを基に米国の原子力専門家が分析した結果分かったもの。


専門家によると、同原子炉は炉心の下に過剰な水蒸気を吸収する大きな水槽を持ち、炉の周囲には火災を防ぐ窒素ガス容器があり、西側原子炉と同じタイプの最新式制御機器を備えている。またケーブル類は複線化してよく保護されており、問題が起きた部分を遮断するバルブや配管も完備するなどすべて米国の現行商用原子炉並みの設計になっている。


これらの新しいデータにより3年前から稼働していたチェルノブイリ原発4号機がソ連の原子炉の中でも最も新しく、安全な炉だったことがはっきりしたという。しかしこれらの設備が大事故の際、有効に働くようになっていたかどうかは明らかでないという。


(朝日新聞 1986/05/20)

【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

7、800メートルの高さまで放射性物質噴き上げ ソ連事故原発


【モスクワ16日=新妻特派員】

ソ連気象環境監視国家委員会のコズロフ副議長は16日、モスクワで記者会見し、チェルノブイリ原子力発電所の原子炉破損事故が起こったとき、放射能物質は700メートルから800メートルの高さまで噴き上げられたことを明らかにした。また、同副議長は「破損した第4原子炉は14日に密閉を終えたので、新たな放射能汚染はない」と言明した。


しかし、原発から30キロ以内の地域は、今も農地の使用禁止など厳重な規制措置がとられていることを確認した。この一帯では事故発生のあと、1時間当たり10ミリレントゲンから15ミリレントゲンの放射能が測定された、としている。


また、原子力発電所から南約130メートルのウクライナ共和国の首都、キエフでは4月30日、最高の1時間当たり0.4ミリレントゲンを記録したが、今は1時間当たり0.18ミリレントゲンから0.2ミリレントゲンに下がっている。


さらに、コズロフ副議長は「4月26日未明に事故が起きたあと、幸いにこの地域には雨が降らず、原発近くのプリピャト川に放射能が流れ込むことがなかった。ソ連保健省の調べでも、プリピャト川、キエフの貯水池などの水からは、正常値を超える放射能は検出されていない」と語った。


(朝日新聞 1986/05/17)


【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

ソ連の緊急装置 頼みの注入水、役に立たず
日本と同様のシステム 万全に疑問符


原子力発電所には、最悪の事故「炉心溶融」を防止する緊急炉心冷却装置(ECCS)がある。


ソ連チェエルノブイリ原発の4号炉にも、ほぼ日本と同様の、この装置があった。結果的にこの装置が役立たなかったことは、「万一の時にもECCSがあるから大丈夫」といわれていただけに、今後の原発安全論争に大きな影響を与えそうだ。


事故を起こした原子炉は、ソ連が開発した黒鉛チャンネル型炉。黒鉛レンガを積み上げた直径11.8メートル、高さ7メートルの円筒形炉心に、練炭のように垂直方向に穴をあけウラン燃料の入ったパイプを1693本通している。このパイプの中は70気圧の高圧冷却水が循環し、核分裂で生じた熱を運ぶと同時に、炉心の過熱を防いでいる。


ソ連の専門家の論文などによると、異常事態の主な想定は、冷却水パイプの破裂だ。「最悪の想定」としては、ポンプから押し出された冷却水が、炉心の燃料パイプに向かい支線に分かれる部分の、直径90センチの極太パイプが破裂したときを考えている。


この事態が発生すると、まず制御棒が炉心に挿入されて核分裂反応をストップすることになっている。しかし、核分裂反応は止まっても、燃料中にある核分裂生成物から崩壊熱が出て温度が上がり続けるので、燃料を水で冷やす必要がある。


このとき緊急に水を送るのがECCS。黒鉛炉では2つのシステムからなっている。1つは、即座に水をパイプに高圧注入する蓄圧注入装置。水タンクは比較的小さいが、停電時でも動くように水タンクが高圧ガスで常に加圧(蓄圧)されている。注水の際、破れたパイプから水があまり漏れないように、各所にある弁が有効に働く。この注水が終わると、2番目のシステムとして大きなタンクに蓄えられている水が、ポンプで送り込まれる。ポンプも安全を考えて3個ある。まさに「万全」のはずだった。


日本の場合、例えば一昨年から運転している九州電力の川内1号炉では、「蓄圧注入装置」のほか、高圧と低圧の2つのポンプによる注水装置を加えた3つのシステムがある。炉心全体を圧力容器で包む加圧水型軽水炉(PWR)なので、黒鉛炉のようにパイプに注水するのではなく、圧力容器に注ぐという違いはあるが、基本的にはほぼ同じシステムだ。


PWRでは、さらに全体を包む格納容器がある。放射能を持つ冷却水が漏れたとしても、格納容器の内部に閉じ込め、そこから外部には漏らさないという役割を帯びている。黒鉛炉でもパイプ類や炉は分厚いコンクリート壁で覆われ、漏れた冷却水を密閉するようになっている。日本の専門家も「PWRと同じ形式の格納容器ではないが、ソ連の黒鉛炉も設計上はこれで十分となっているのだろう」とみる。

事故の詳細はまだ分からない。制御棒がうまく挿入されなかったのかも知れない。ただ結果的にはECCSも、事故を防げなかった。


近藤駿介・東大教授(原子力工学)は「まだデータが少な過ぎるので……」と前置きしながらも「まず、何かの爆発があって全く想定外のものを壊したとしたらECCSは有効に働かなかったかもしれない」。また、「日本とよく似たECCSを持つ原子炉で炉心溶融が起きたことこそが問題だ」との指摘も多い。


(朝日新聞 1986/05/12)


【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

原発の緊急炉心冷却など「過重な装置、不要」 原産会議会長表明


日本原子力産業会議の有沢広巳会長は8日、東京で開かれた同会議年次大会で、「安全確保に役立っていない過重な付属設備は除去すべきである」と語った。


同会長はその例として軽水炉の緊急炉心冷却装置をあげ、その設計が「オーバー・デザイン」ではないか、配管の瞬時破断は実際には起こりえない、などとし、「ある面だけ丈夫にしても安全上意味がなく、無駄な投資だ」と、述べた。


このことから、安全規制当局も安全審査を厳重に行うだけでなく、どこまでなら安全なのかの指針を示すことが必要である、とつけ加えた。


緊急炉心冷却装置は、原子炉内の水が失われた時に、大量の水を注入し、炉心の過熱を防ぐための安全装置。1979年3月の米スリーマイル島原発事故の際、作動したが操作員が止めた。これが事故にどう影響したかが論議を呼んだ。


(朝日新聞 1986/04/08)

【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

放射能汚染の海草、大量漂着 英核再処理工場近く


【ロンドン30日時事】

英国の核燃料再処理工場近くの海岸に、放射能に汚染された大量の海草類が打ち上げられ、大騒ぎになっている。


環境省が30日明らかにしたところによると、イングランド北西部セラフィールドの浜辺に29日から30日朝にかけ、大量の海草類が漂着、調査した結果、通常の1000倍もの放射能が検出された。このため、同省はこの浜辺に立ち入らないよう付近の住民に呼び掛けている。


セラフィールドには核燃料再処理工場があり、今月中旬に、海中に捨てられていた同工場の核廃棄物が浜辺に打ち上げられたばかり。今回、放射能に汚染された海草類が漂着した地点はこの近くであるため、関係があるのではないかとみられている。


(毎日新聞 1983/12/02)

【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

浜辺に核廃棄物 英で放射能汚染騒ぎ


【ロンドン20日=時事】

英国で、海中に捨てられた再処理工場の核廃棄物が浜辺に打ち上げられたため、付近一帯が立ち入り禁止になるという騒ぎが持ち上がっている


英国営核燃料公社(BNF)が20日明らかにしたところによると、イングランド北西部にあるセラフィールド(旧ウィンズケール)核燃料再処理工場から近くの海に捨てられた核廃棄物が潮流で海岸に押し戻された。このため180メートルに及ぶ一帯を立ち入り禁止とし、同工場の科学者らが廃棄物の回収作業に当たっている。BNFは「付近の住民には危険はない」と述べている。


しかし、地元のヨークシャー・テレビが3週間前に、同工場の安全性について強い疑問を投げかけた番組を放映したばかりであり、住民の不安は高まっている。


(時事通信 1983/11/21)

【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

「原発は金になる」 推進講演会で敦賀市長


全国原子力発電所在市町村協議会長(全原協)を務める福井県敦賀市の高木孝一市長が北陸電力(本社・富山市)の原発建設候補地である石川県羽咋郡志賀町での講演会で「56年4月の日本原電放射能漏れ事故はマスコミが騒いだだけ。原発は金になる」などと発言していたことが4日、明らかになった。敦賀市の反原発団体が同日午後、講演テープをつきつけたのに対して、同市長は謝罪したが、同市や志賀町の原発反対住民の怒りはおさまりそうにない。


この発言は原発推進派の羽咋広域商工会が1月26日、町民約150人を集めて開いた講演会で飛び出した。このなかで高木市長は「原発反対運動は県議選で過去2回も惨敗しており、住民に密着していない」「原発は電源三法交付金や原発企業からの協力金があり、たなぼた式の金だ」とぶちあげ


「(放射能の汚染で)50年後、100年後に生まれる子供がみんな障害者でも心配する時代でない」と結んだ。


(毎日新聞 1983/02/05)

【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

冷却水流失事故で原子炉破裂の恐れ 米の研究で明らかに




【ニューヨーク20日=共同】

加圧水型原子炉(PWR)で冷却水流失事故が発生した場合、急激な温度変化によって原子炉圧力容器が傷み、将来、圧力容器破裂という大事故に発展する恐れのあることが、米原子力規制委員会(NRC)の委託によるオークリッジ国立研究所の研究で明らかになった。


「加圧下における熱衝撃評価」と題するこの研究は、米原子炉メーカー、バブコック・アンド・ウィルコックス(B・W)社製の加圧水型炉を対象とした第一段階のものだが、同社製以外のPWRに共通する問題である。


日本では現在PWR10基が稼働している。


原子炉圧力容器は厚さ30-40センチの鋼鉄製で、炉心から出る中性子の照射を絶えず受けている。この照射によって鋼材はもろくなり、容器の内側に小さなひび割れが出来やすくなる。特に鋼材に不純物が多く含まれている場合には、照射によるぜい弱化が起こりやすい。


報告書が問題としているのは、冷却水流失事故などで緊急炉心冷却水を圧力容器内に注入した場合、温度が急激に低下することにより、このひび割れが一挙に拡大する恐れがある点。

解析は、ひび割れ拡大の引き金となりそうな冷却水流失事故や主蒸気管破断事故など6つのケースについて実施された。


その結果、小規模な冷却水流失事故では、ひび割れが拡大、そのまま運転を続けると、原子炉の寿命が来る前に、圧力容器が破裂するような大事故になる

ことがわかった。


(朝日新聞 1981/11/22)

【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

敦賀原発で放射能汚染 海草類から通常値の10倍
一般排水路出口でコバルト60など検出


福井県敦賀市の浦底湾に面する日本原子力発電会社の敦賀原発(沸騰水型、出力35万7000キロワット)の

一般排水路の出口にたまった土砂が高濃度の放射能に汚染されていることが18日、通産省・資源エネルギー庁への報告で明らかになった。



この排水路は冷却水系とは関係のない、背後の山からわき出る地下水や雨水などの水路であり、このような場所から高い放射能が検出されたことはわが国の商業原発では例がなく、同省は事態を深刻に受け止め、調査を開始した。



原因はわかっていない。汚染は同原発が面している浦底湾の広範囲にわたっている可能性があり、海草だけでなく魚にも影響が出ている可能性もある。同省は「今のところ、人体に直接の影響はない」としているが、汚染状況と原因を徹底究明するという。


敦賀原発は今月初め、原子炉内で起きた事故を報告せず、応急修理して運転を続けたことが問題になったばかりだが、改めて原発の安全性を根幹から問われる事態を引き起こした。




湾全体汚染の恐れも


日本原電から18日未明、通産省に入った報告によると、原発取水口付近にある雨水や井戸水を流す一般排水口近くの土砂1グラムから放射性物質のコバルト60が61ピコ(1兆分の1の単位)キュリー、マンガン54が10ピコキュリー検出された。これは、微量の放射能を含んだ冷却水が流れる別の放水口付近の土砂から日常的に検出される放射能値に比べても、約100倍という異常値である。


ふだんはまったく放射性物質が流出するはずのない場所からこれほど高濃度の放射性物質が出たことは、わが国の原発史上まったくなかったことである。


検出のきっかけになったのは、福井県が今月8日に行った1カ月に1度の定期的な環境モニタリング調査


この調査で、一般排水路出口から南東へ約700メートルの地点で海草「ホンダワラ」を採取して分析したところ、1グラム当たりコバルト60が0.49ピコキュリー、マンガン54が0.16ピコキュリーと、ここ数カ月の測定値の7-49倍もあった。このため、県は14日に日本原電に「浦底湾に大量の放射性物質が流出している疑いがある」と通報、これを受けて日本原電は同じ場所でホンダワラを採取し分析したところ、平常値の約10倍のコバルト60などが検出された。


さらに日本原電が15日、原発の放水口や一般排水路付近の土砂を採取し調べた結果、16日午後になって一般排水路付近の土砂にコバルト60やマンガン54が大量に含まれていることがわかった。


通産省が日本原電から事情を聴いたところ、48年ごろまでは、今回検出された海草の放射能値は「平常値」だった。しかし、その後、コバルト60やマンガン54などを除去する装置を付け、放水口から流し出す放射性物質の量をかなり抑えたため、ホンダワラに蓄積される放射能は少なくなっていた。


ここ数年の数値からすると、一般排水路からこうした高濃度の放射性物質が発見されたことはまったく異常といってよく、同原発の安全管理のずさんさを露呈したものといえる。


原子炉等規制法などに基づいて定められた周辺監視区域外(発電所敷地外)の液体廃棄物放出量の許容濃度はコバルト60が1ccで30ピコキュリー、マンガン54は1ccで100ピコキュリーとなっている。


日本原電は現在、一般排水路を含む発電所内の9地点の土砂を採取し分析しているが、今のところ、冷却水が流れ出る放水口では、異常値は出ていないとしている。また、一般排水路出口は海面より1メートルの高さで、満潮時でも海水につかるところではなく、また、一般排水路から放水口までは250メートル離れており、冷却水の放水口付近からの逆流も考えられないとしている。


なぜ、汚染されるはずのない一般排水路出口で高濃度の放射性物質が見つかったかについては、同省もすでに係官を派遣、調査しているが不明である。


敦賀原発は今年1月、原子炉内の給水加熱器が2度にわたってヒビ割れし、1次冷却水が建屋内に漏れている。この事故を通産省や地元の県や市にも報告せずに補修していた。このため、事故隠しが発覚した今月1日、原子炉の運転を停止しているが、一般排水路の出口の土砂が汚染されていることと、この時の冷却水漏れの関係についても同省で調べている。


原発は全国で22基が現在、運転されているが、このようにまったく予想外の場所から海へ放射性物質が流出したことはない。48年6月、東京電力の福島第1原発1号機で放射性廃液をくみ上げ、ろ過処理中、バルブが締まらなくなり、原子炉建屋外に漏れたことがあったが、汚染した土を取り除いただけですんでいる。


通産省の調査 結論は来週に

通産省は日本原電に指示し、18日午前9時から流出経路を究明するため、発電所構内の放水口、一般排水路など9カ所で水の調査を始めた。また、浦底湾の11カ所で、海水、海底の土砂を採取し、4カ所で海草などを採り、放射性物質がどの程度含まれているか汚染状況の調査を開始した。結果が出るのは来週早々という。
また同省は同日、日本原電本社幹部から今回の放射能漏れについて事情聴取した。




心配な魚介類 通産省は「人体影響なし」


放射性物質コバルト60やマンガン54がこびりついた海草を食べたらどういう影響があるのか。18日明らかになった日本原子力発電敦賀原発の放射能汚染事故は浦底湾で魚をとり、その周辺で暮らす住民に強い不安をもたらした。


本来、放射性物質とは無縁のはずの一般排水路から放射性物質が海に流出し、海草を汚染していた。魚の体内にも蓄積されている可能性がある。「ただちに人体に影響はない」と通産省は言うが、長い間食べ続けたらどうなるのだろうか。


通産省の試算によると、今回高濃度のコバルト60、マンガン54が検出された海草「ホンダワラ」を毎日40グラムずつ1年間食べ続けたとすると、コバルト60で0.02ミリレム、マンガン54で0.001ミリレムになるという。


原子炉を建設する際の安全審査の目標値によると、原発周辺では空中の放射能、また食物を通して体内に入る放射性物質など原発そのものによって一般人が浴びる線量は「年間5ミリレム以下に管理する」とされている。となるとホンダワラを1年間食べても被ばく線量はこの200分の1以下だという。通産省ではこうした試算をもとに「浦底湾の海草を食べてもまず心配はない」といっている。


だが、海草だけではない。魚や貝類も流れ出た放射能で汚れている可能性が強い。通産省は「魚や貝類が汚染されていたとしてもホンダワラに付着した放射能を上回ることはない。魚介類、海草を集中的に食べ続けても5ミリレムをはるかに下回る」と計算している。


周辺の住民の安全のために定められた目標値5ミリレムと同じ程度の被ばく線量になるのは1日に魚介類、海草をざっと8キロ食べることになる、という。しかし、測定結果が出たのはほんの一部だけで、学者の中には浦底湾の汚染の度合いがもっとひどいのではないか、という意見もあり、通産省の試算どおりにいくかどうかはわからない。




「最近にない異常な高さ」


同原発の放射能汚染について放射線医学総合研究所那珂湊支所の上田泰司・海洋放射生態学研究部長は次のように語っている。


原子炉から出る温排水(2次冷却水)には極微量ながら放射性物質が含まれているので、われわれは以前から継続的に調査している。ホンダワラに含まれるコバルト60の濃度を測定するわけだ。浦底湾の敦賀原発の場合、10年ほど前は、生ホンダワラ1グラム当たり最高178ピコキュリーという高い値を検出したことがあるしかし、その後、放射能除去の技術も進んだようで、ここ数年は0.01ピコキュリーと安定していた。したがって、0.49ピコキュリーというのは最近にない異常に高い値だ。


海底にたい積している土の場合はもっと高く、1グラム当たり2-3ピコキュリーというデータもある。しかし、一般排水路からそんなに高い値が出るのはおかしい。海草は放射能をとり込みやすいが、なかでもホンダワラは濃縮係数2000(倍)で最高。これに比べれば、貝は40-50(倍)、魚は1程度。したがって魚中の放射能はホンダワラよりもずっと少ない。結局、今回の汚染値は、ここ数年にない高い値だが、一般の人への放射線被ばく線量と考えれば医学的には大して心配はない。




「過去測定最大値の半分」 


日本原電日本原子力発電(鈴木俊一社長、資本金620億円)は龝山通太郎(あきやま みちたろう)常務が18日午前11時半から東京・大手町の経団連会館で記者会見し、福井県の敦賀原子力発電所周辺で起きた放射能汚染について「申し訳ない」と遺憾の意を表明、「安全確保に万全を期するため原因究明を急いでいる」と次のような簡単なコメントを発表した。また、今回の放射能の濃度について「過去に同じ地点で測定された最大値(48年7月)の半分で人体には直接影響ない」と指摘した。


今回検出された環境モニタリングの結果は、過去において測定されている最大値を下回っており、現在のところ環境への特段の支障はないものと考えている。いずれにしても安全確保に万全を期する観点から早急に原因を究明する。




核種まだ他にも?“隠された部分”が怖い 関係者


本来“死の灰”が混じるはずのない一般排水口の泥から通常の100倍もの放射性コバルト、マンガンを検出──。


故障隠しと無謀修理が次々に明るみに出て周辺住民から不信の目で見つめられていた日本原電敦賀発電所にまたまた暗いカゲがさしたが、


18日早朝発表されたデータは「午前5時記者会見」という異例ぶりに加え、内容の面でも異常ずくめ。「一体、発電所内で何が起きたのか」「まだまだ隠されたデータがあるのではないか」とナゾは深まるばかりだ。


「えっ、夜明け前の発表?妙ですねェ。何か重大なことが、それも長期にわたって隠されているのではないか」と疑問を投げかけるのは、久米三四郎・大阪大理学部講師(放射化学)。


「不審な点」は、排水口の泥の採取が昼間でなく、17日夜に行われたこと。14日の福井県衛生研究所の測定結果がいかに日本原電を驚かせたとは言え、夜間作業までした“熱心さ”の理由は?


しかも原子炉内の“死の灰”の回収系統とは無関係な一般的な雑排水を吐き出す排水口が調査対象に含まれたこと自体、原電側は「放射能が漏れた」ことを知っていたのではないか。ふだんは測定地点に入っていないから、比較するデータは“取水口付近”という別の地点のものになっており「放射性物質の測定は少しでも場所がずれると数字がガラリと違うから、その意味では“100倍”という数字よりもっと深刻な事態があるかもしれない」と久米講師は指摘する。


関係者が強い関心を寄せているのはコバルト、マンガン以外の“隠された核種”についてのデータ。


原発内で生まれる放射性物質には多くの種類があり、事故の種類によってその構成はガラリと変わる。


コバルト、マンガン以外に放射性の鉄や亜鉛が出ていればパイプ類のサビと考えられ、さほど大きな異常があったと見なくともよい。しかし、セシウムやストロンチウムなどが入っていれば、これは燃料棒に出来た小さな穴から核物質が直接漏出したものとみられ、さらにウランやプルトニウムが検出されれば、燃料棒が破れる大事故があったとしか考えられず、雑排水に入ったとすれば大変。


今回のような測定ではコバルトなどと同時にすべての核種についてデータが出ているはずなのに、なぜこの2種だけしか発表しなかったのか。これまた重大な疑問だ。


関電美浜原発の燃料棒事故(48年3月)の追及を続けている小出裕章・京大原子炉実験所助手は「排水口で異常があるなら、敷地内の排水ルートをさかのぼって泥を取れば、すぐ出発点を突きとめることが出来るはず」といい、「原因不明」という発表に首をかしげている。


「今回のデータは外部に情報が漏れそうになってあわてて一部を公表したような感じで、隠しきれるものなら隠していたのではないか」と、久米講師らは資料の全面公開を強く求めている。



<日本原子力発電敦賀原発> 昭和32年、9電力会社、政府などの出資で原子力開発を目的に設立された日本原子力発電会社が茨城県東海村の東海発電所に次いで45年3月に運転を始めた、わが国2番目の原発。関西電力高浜、大飯、美浜など原発の集中する福井県の若狭湾沿岸、敦賀半島の先端に位置、敦賀市から約12キロ離れている。敷地面積は約220万平方メートル。


原子炉は我が国初の沸騰水型で出力は35万7000キロワット。同じ型の原子炉は福島県の東京電力・福島第1原発、静岡県の中部電力・浜岡原発、島根県の中国電力・島根原発で稼働しているが、出力は敦賀原発が一番小さい。日本原子力発電では53年にさらに加圧水型の2号機(出力110万6キロワット、加圧水型軽水炉)の建設計画を決めている。


同原発前の海域では、敦賀市漁協、福井県水産試験場が同原発から排出される温排水を利用、昭和46年からマダイ、ハマチ、イシダイ、ヒラメ、アユ、クルマエビなどを繁殖している。



<コバルト60、マンガン54> 放射性同位元素の代表的なもので、放射能が半分になる半減期は、コバルト60が5.24年、マンガン54が291日。原発からは核分裂生成物(死の灰)が出るが、コバルト60、マンガン54は核分裂生成物ではなく、原発内の鉄サビなどに中性子があたってできる。これが1次冷却水の中に入り込み、さらに一部が2次冷却水にまぎれ込む。



<沸騰水型軽水炉> 冷却材の普通の水(軽水)を炉内で沸騰させ、その蒸気で直接タービンを回して発電する原子炉。炉心を囲む圧力容器の中で蒸気を発生させるので、加圧水型のような蒸気発生器がいらない。

タービンを回す蒸気は、1次冷却水そのものであるため放射能を含み、放射線管理が複雑になる。発電炉専用として米・ゼネラルエレクトリック(GE)社が開発した。


(毎日新聞 1981/04/18)