【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
東海村と那珂町が120人を被ばく認定 長期健康調査へ
茨城県東海村の民間ウラン加工施設「ジェー・シー・オー(JCO)」の臨界事故で、茨城県と東海村、那珂町は、事故で被ばくした住民を確定し、遺伝子への影響を調べるDNA検査や長期の健康調査を継続するための「被災地住民登録」を開始した。実質的な被ばく者登録に当たる。事故発生時、現場から半径350メートル付近にいた住民や勤務者ら約250人をはじめ、通行人、通過車両も対象に、県などが行動調査をし、科学技術庁が算出中の臨界の規模、放射線量と照らし合わせるなどして、登録者を確定する。東海村と那珂町はすでに、事故当日に避難所を利用した120人については「放射線を浴びた可能性が高い」と判断して登録した。県などは、登録者には今後10年以上の健康調査が必要としており、科技庁や厚生省と財源や具体策を協議する方針だ。
科技庁の調査では、今回の被ばく者数は69人とされてきた。内訳は、JCO関係者59人、救急隊員3人、付近の建設会社社員7人。住民については直後の詳細な検査が実施されなかったため、何人被ばくしたか不明だ。
科技庁は臨界が起きた「沈殿槽」に残ったウラン溶液を採取して、臨界の規模や周囲に放出された中性子線の総量などを算出中だ。県などはこの結果によっては、被ばく者数が大幅に増える可能性が高いとみており、登録制度を運用することにした。
被災地住民登録は、科技庁が医療関係者向けにまとめた「緊急時医療の知識」をもとに、県が防災計画で定めている。原子力災害が起きた場合、避難住民らを対象に、「事故発生時の状況の記録」と「医療問題や損害賠償問題が生じた際の資料」とすることを目的に、市町村などが聞き取り調査をして、住民の登録を進めるとしている。
聞き取り調査は、事故発生から10分間ごとの居場所、手や体を洗浄した時期など除染の方法、避難した道順や手段など、事故当時の行動が中心となる。これに、事故時の放射線量データなどを照らし合わせることで、被ばくの有無や放射線を浴びた量などが分かり、登録者が確定される。線量が高ければDNA検査なども実施する予定だ。
調査の対象は、事故時に避難区域に指定された半径350メートル内の東海村と那珂町の全住民約150人、同区域内の企業など11法人の社員ら約100人。付近の通行人や通行車両の運転者も調査したい考えだが、事故時に付近を通過した車両については、特定方法を検討している。
この登録は、法律に基づいた制度ではないため、県などは今後、他県などに転居する登録者も含め、長期にわたる健康追跡調査を続けるには、国の早急な法制化が急務としている。
(朝日新聞 1999/10/30)