【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
科学技術庁、JCO施設を7年間調査せず 問われる安全行政


茨城県東海村の民間ウラン加工施設「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所の臨界事故で、科学技術庁が施設への調査を7年前からまったくしていなかったことが8日、わかった。今回は、ウラン溶液をつくる際に許可を受けていないステンレス製のバケツを使うなど、違法な作業手順を記した「裏マニュアル」の存在が明らかになったうえ、それをも逸脱した作業がなされていた現実が浮かび上がった。ウラン加工施設への調査は、法的な義務づけのない「任意調査」だが、違法行為を見抜けなかった背景には、こうした監督体制の甘さがあったとみられ、安全行政のあり方が改めて問われそうだ。


施設調査の実態は、原子力安全委員会の事故調査委員会(委員長=吉川弘之・日本学術会議会長)がこの日開いた初会合で、明らかになった。
科技庁によると、JCOのようなウラン加工施設への調査は「保安規定順守状況調査」と呼ばれ、作業上の安全対策などを定めた保安規定が確実に守られているかどうかを確認するねらいがある。保安規定は、原子炉等規制法で科技庁長官への提出が義務づけられている。

調査では、科技庁の調査官が現地に出向いて、保安の実態が、提出された書類と違っていないかを確かめる。実際に工場内に立ち入り、作業の様子を見たり、安全教育や訓練がどのように実施されているかを点検したりする。


科技庁が事故調査委員会に提出した資料によると、この調査は、事故があった転換試験棟が操業を始めた1985年から92年までは、ほぼ年に1回のペースで実施されていた。ところが、92年11月の7回目の調査以降は、1度も行われていなかった。

科技庁は、東海村の核燃料サイクル開発機構(核燃機構)東海再処理施設の火災・爆発事故を受け、昨年4月から、核燃料施設が安全に運転されているかどうかを確かめる「運転管理専門官」を、核燃機構内に常駐させている。


これ以来、運転管理専門官はJCOの転換試験棟を2度、巡視したが、いずれも運転休止中で作業ぶりを見る機会はなかったという。


「保安規定順守状況調査」は法で義務づけられていないとはいえ、ウラン加工施設には原発のような定期点検の義務づけもない。このため、国にとって、施設完成後は、この調査が安全を確認するための事実上、唯一の手段だ。

7年間も調査しなかった理由について、科技庁は「地元の東海村には核燃機構という巨大な事業所があり、ほかの施設の点検まで手が回らなかったのではないか。これから実態を調査する」と説明している。

(共同通信 1999/10/09)