【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
大内さんの被ばくは約17シーベルト 造血幹細胞移植へ


茨城県東海村の民間ウラン加工施設JCO東海事業所で起こった臨界事故で、放射線医学総合研究所(千葉市)は2日、大量の放射線を浴びた作業員の大内久さん(35)の被ばく量が、放射線によってできた血液中のナトリウム24の量から「約17シーベルト相当」と推定されることを明らかにした。これは、職業上の被ばくに対する年間の最高線量限度の340倍。

大内さんは2日午後、放射線医学総合研究所から東京都文京区の東京大学病院に移された。リンパ球の減少が激しく、東大病院は免疫細胞のもとになる「造血幹細胞」を移植する方向で準備を進めている。
放医研によると、大内さんは1日夜、腸管の膨満などがみられたが、2日朝にやや回復したという。佐々木康人所長は「消化管症状がひどくなる前に移植をしなければならない。副作用のリスクはあるが、あえてすべきだと考えた」と話した。

大内さんは2日夕、東大病院の集中治療室で点滴などを受けている。意識はあり、血圧や体温は比較的落ち着いているが、「過去の放射線事故の例から考えると見通しは厳しい」(木村哲・副院長)という。
放医研は、同時に被ばくした2人の推定被ばく量を、それぞれ「約10シーベルト相当」、「約3シーベルト相当」とみている。


◆造血幹細胞移植
赤血球や、リンパ球など白血球をつくる骨髄の大切な働きが失われた場合、それを回復させるのをねらう治療法。造血幹細胞は、リンパ球などをつくるもとになる細胞のことで、骨髄液にあるほか、最近では赤ちゃんのへその緒(さい帯)の血液や、体を流れる血液(末しょう血)からも採取できるようになった。
白血球の型(HLA)が合う提供者から造血幹細胞を採取し、増殖させるなどしたうえで患者に移植する。

(朝日新聞 1999/10/03)