【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

核燃料データねつ造 高浜プルサーマル用、寸法測定せず
英社が報告 燃料漏れの可能性


関西電力は14日、高浜原発(福井県高浜町)3号機で予定されているプルサーマル用のウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料について、製造委託先の英国核燃料会社(BNFL)による品質管理検査のデータねつ造があったことを明らかにした。BNFLは関電などに対し、輸送中の高浜4号機向けのMOX燃料には問題ないとしているが、通産省・資源エネルギー庁は詳細な調査を指示、関電は現地に調査員を派遣した。高浜4号磯では11月にも国内初のプルサーマルを実施する計画だが、延期の可能性も含めスケジュールに微妙な影響を与えそうだ。

関電によると、データねつ造があったのは、ウランとプルトニウムを焼き固めた円筒形の燃料「MOX燃料ペレット」を製造する際の品質管理検査。ペレットの直径の寸法について、実際には測定せずに架空の数値を記録していたことがBNFLの内部調査で判明し、13日に関電に報告された。

ペレットは直径8.179-8.204ミリ、高さ10.0-13.0ミリの円筒形。BNFLは製造工程中にもすべてのペレットについて直径の寸法を自動測定した後、品質管理検査でも1口ット(約3000個)から200個を抜き取り、再度寸法を測定しているが、11ロットの検査データに不自然な数値が見つかった。

高浜3号機は来年にもMOX燃料を利用したプルサーマル発電を実施する予定で、25ロットで構成する燃料集合体を8体製造中だったが、すでに完成している4体はすべてデータねつ造の疑いのあるロットが含まれていた。MOX燃料は1本の被覆管(ジルコニウム合金製)にペレット約300個を入れ、長さ約3.9メートルの燃料棒となる。ペレットは規定外の寸法だと、運転中に被覆管が破損する恐れがある。
このため通産省は、BNFLが「問題ない」とした高浜4号機向けのMOX燃料も含め、再度詳細な調査を行うよう関電に指示。東京電力に対しても、福島第1原発3号機に利用するベルギー社製造のMOX燃料について、検査データを確認するよう指示した。

現在、海上輸送中の高浜4号機向けのMOX燃料は今月中にも到着するが、通産省では「安全性を確認し、信頼を得なければならない。99年中にプルサーマルを開始できるかできないか、現時点では何とも言えない」として、スケジュールの変更もあり得るとの見通もを示した。


国に徹底調査を要請 

栗田幸雄・福井県知事の話 昨年の輸送容器データ改ざんに続いてMOX燃料製造時データの疑義が判明したことは、原子力発電に対する国民・県民の不信感を招くものであり、極めて遺憾である。福井県は国と関西電力に対して徹底した調査を強く要請した。県はその結果を確認のうえ、高浜原発におけるプルサーマル計画についても必要な判断をする。


<プルサーマル> 使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムをウランと混ぜた燃料に加工し直し、再び普通の原子力発電所で燃やすこと。政府は使用済み核燃料をそのまま廃棄する方式に比べてウラン資源を有効利用できるとしており、97年2月の閣議でプルサーマルの早期実施が了解された。日本の電力会社は、今回プルサーマル用燃料を輸送している関西電力高浜原発4号機、東京電力福島第1原発3号機を皮切りにプルサーマルを拡大していく計画で、2010年までに16-18基の原発で実施する予定。


<解説> 今回、製造デ-タがねつ造された混合酸化物(MOX)燃料のペレットは大きさが指先程度で、核燃料を構成する基本単位。ジルコニウム合金製の燃料被覆管に封入し、燃料棒として扱う。ペレットは原子炉で燃やすと核分裂の影響で膨張するため、もしペレットの寸法が大きいと被覆管を圧迫し、逆に小さい場合は内部で震動を起こす。最悪の場合は被覆管が割れて燃料が漏れだし、安全性に影響が出る可能性がある。
プルサーマル用のMOX燃料は通常のウラン燃料と同様、原料粉末を円柱形状に焼き固めた後、削って寸法を整える。焼結に伴う寸法変化があるためで、直径の寸法を8.179-8.204ミリの範囲に抑えることになっている。
こうした要求に対応するため、英国核燃料会社(BNFL)の工場でもペレットの寸法測定で精度が0.1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルという超高精度のレーザー光測定器を導入しているうえ、二重に寸法をチェックする品質管理体制を敷いている。
今回問題になっているMOX燃料の一部はペレットを入れた燃料棒を束ねた最終製品になっている。被覆管は両端を溶接しているため、被覆管からペレットを取り出して寸法を再確認することは事実上不可能。通産省が核燃料を原子炉で利用する前に行う検査も、燃料棒を束ねた製品の外観検査だけで、それ以外には製造記録と製造管理体制の確認にとどまっている。

(日本経済新聞 1999/09/15)