【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

核燃料廃棄物、民間で埋設 原子力委懇談会案
地下数百メートルへの最終処分 費用、電気代に転嫁

原発の使用済み核燃料から出る高レベル廃棄物の処分について、原子力委員会の高レベル放射性廃棄物処分懇談会(座長=近藤次郎・元日本学術会議会長)は29日、地中深くに埋める処分は民間組織が行い、費用は電気料金の原価に算入して消費者が負担すべきだという報告書案を公表した。発生者責任と受益者負担を強調している。電気事業連合会の荒木浩会長(東京電力社長)は「国が前面に出てもらわないと」と、構想に異論を唱えた。
高レベル廃棄物は、使用済み核燃料から、まだ燃やせるウランやプルトニウムを取り出した残り。フランスから返還されたガラス固化体について、30-50年間の「一時貯蔵」が、青森県六ケ所村の日本原燃貯蔵管理センターで始まっている。議論されているのは、その後に地下数百メートルの安定した地層に埋める「地層処分」を、だれがどのように実施するかだ
報告書案は「原発で発生した高レベル放射性廃棄物1996年現在、ガラス固化体(直径40センチ、高さ1.3メートル)にして約1万2000本にのぼる。2030年までには、さらに約5万8000本が発生する」と現状を分析した。「国や電気事業者は原発の立地に重点を置き、廃棄物処分問題への対応を十分にしてこなかった」と批判し、すでに地層処分の会社をつくったスウェーデンや、国が処分地を探している米国やドイツに比べて「10年程度遅れている」と指摘した。
そのうえで、国民1人ひとりの身に迫った問題と位置付け、2000年をめどに地層処分を担う組織を設立できるよう法律などの早急な整備を求めている
処分の担い手については、国の場合と民間の場合を比較し、発生者負担の原則とともに、国が事業の実施と監督の両方を行うことを問題とし、民間主体で進めることが適当と結論づけた。国は円滑な処分と安全確保のための制度と体制を整備する。電力会社は実施主体とともに、資金の確保と処分地選定に当たる。
事業資金は、受益者負担の原則から「処分に直接要する費用は、電気料金の原価に算入し電気利用者が負担することが適当」との考えを示した。直接の処分費用は電気料金1キロワット時あたり数銭から10銭程度との試算を示した。立地地域との共生事業は、内容によっては国が取り組む。
処分地の選定では、求められる条件や事業内容の情報公開を徹底し、共生事業案とともに提示する。そのうえで、公募や申し入れに基づき処分する組織が選ぶが、関係行政機関が一体となって処分地の確認にあたることを求めた。
報告書案は外部の意見も検討したうえで、来春、最終報告書にまとめる。懇談会委員の荒木氏は「少なくとも処分地の選定は、民間では難しい」「決して逃げているわけではないが、法的な裏付けが必要だ」と述べた。
懇談会は、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)理事長、原発立地県などでつくる協議会の会長(鹿児島県知事)、大学教授、生活評論家ら幅広い分野の25人で構成されている。


通常産廃と同じ原則 「負担の公平」図る必要

<解説> 原子力委員会の高レベル放射性廃棄物処分懇談会が29日公表した報告書案は、「放射性廃棄物も通常の産業廃棄物と同じ原則で処分されるべきだ」ということを初めて明確に示した。
地層処分は、地上とは隔絶された深い地下に、ガラスに封じ込めた廃棄物を埋める。放射能を含むウラン鉱床が地下深くに眠っていても地上には影響がないから、安定な地層なら大丈夫というのが国や研究者の言い分だ。反原発団体などは半永久的な放射能管理が必要と主張。事業を国が担うか民間が担うかは、世界でも2つの流れがあった。
地層処分は、動燃が茨城県東海村で地下深くの条件を再現して研究しているほか、岐阜県瑞浪市におく超深地層研究所で数百メートルから1000メートル程度の地下研究を計画している。同研究所の設置は、地元の求めで、放射性廃棄物を持ち込まず、将来処分場にしないとの協定が結ばれた。北海道幌延町で計画している貯蔵工学センターは高レベル廃棄物の貯蔵もする構想だが、ここも「総合研究センターを目指すものであり、処分場の計画と明確に区別」(1996年版原子力白書)することになっている。
民間主体の方針に電力業界が異論を唱えたのは、民間だけでは地元に同意を得るのが容易でないとの懸念があるからだ。とはいえ、原子力委員会は懇談会などでの論議の積み上げで政策を決めている。電力業界の代表も入った懇談会が、民間主体を打ち出した案を公表したことで、大きな流れが提示されたといえる。
もちろん、「国策」として原発建設を推進してきた国が、民間に任せきりでいいわけはない。「電力消費地域と処分地地域の公平」や「世代間の負担の公平」の実現に、真正面から取り組む必要がある。

(朝日新聞 1997/05/30)