【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】
動燃また通報遅れ 「ふげん」放射能漏れ30時間余
科技庁長官 運転停止を命令
動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の新型転換炉原型炉「ふげん」(出力16万5000キロワット、福井県敦賀市)で、放射性物質のトリチウムが漏れていたことを、動燃が発生から30時間もたってから国や自治体に連絡していたことが15日、分かった。近岡理一郎科学技術庁長官は同日夜、近藤俊幸理事長を呼んで「ふげん」の運転停止を命じた。不祥事を理由に原発が止まるのは初めて。橋本首相も「いい加減にしろ」と強い不快感を表明した。また、科技庁は、爆発事故で虚偽の報告書を提出した動燃東海事業所(茨城県東海村)の管理職ら数人を16日に原子炉等規制法違反の疑いで茨城県警に告発する。
福井県原子力安全対策課によると、14日午前5時33分、ふげんの重水を精製し再使用するための装置がある建物で、内部や排気塔の放射能モニターレベルが高いことを示す警報が作動。運転員が装置を停止して調べた結果、施設1階にある重水循環ポンプ出口の配管継ぎ手から微量の重水が漏れ、含まれている放射性物質のトリチウムが、排気塔から外部の環境に漏れたことが分かった。漏れたトリチウムの量は通常の約18倍あったが、平成7年度の年間放出量実績の300分の1で微量だったという。
しかし、地元福井県に放射能漏れを通報したのは警報作動から30時間余りたった翌15日の正午だった。14日、竹下徳人所長は東京に出張中。残った幹部は、装置の停止などにより放射能レベルも通常状態に戻っていたため軽微なトラブルと考え「所長が帰るのを待って報告し、それから自治体に連絡すればいいと判断ミスした」(竹下所長)という。
14日午前9時から副所長、発電課長、技術課長らが開いた定例の所内会議でも「自治体に連絡した方がいい」との指摘も一部にあったが、ほとんど問題にならなかったという。15日午前6時15分に電話で報告を受けた竹下所長も「安全協定に基づく連絡事項と考えたが、自治体には出勤してから連絡すればいい、と自分も判断を間違えた」と釈明した。
地元自治体は安全協定違反だとして動燃に強く抗議。原発反対派住民も一昨年12月の高速増殖原型炉「もんじゅ」事故、茨城県東海村・再処理工場事故で虚偽報告した動燃の体質が変わらない証拠、と反発している。
もんじゅ事故後、ふげん発電所でも毎月1回、通報連絡訓練を実施しているが、初動の段階で通報しようとせず、訓練は役に立たなかった。竹下所長は「弁解の余地はなく本当に申し訳ない」と陳謝した。
動燃が新型転換炉原型炉「ふげん」の放射性物質トリチウム漏れを発生から30時間もたってから国や自治体に連絡していた問題で、近岡理一郎科学技術庁長官は15日夜、近藤俊幸理事長にふげんの運転停止を命じ、情報伝達体制の改善を指示した。不祥事で原発が止まるのは初めて。
<ふげん> もんじゅなど高速増殖炉が実用化されるまでの中継ぎとして開発が進められてきた新型転換炉の原型炉。燃料にはプルトニウムや、ウランとプルトニウムの混合燃料を使う。政府は、コスト面などから原型炉の次の段階である実証炉の開発を断念することを決めている。もんじゅ事故の影響で今後の取り扱いが決まらず、いわば宙に浮いた形の原発。
(中日新聞 1997/04/16)