【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

「危険な原発に“もんじゅ”とは!」 仏教徒ら改名求める

危険な原発に菩薩(ぼさつ)名を付けるのは、罰当たりだ──。ナトリウム漏れ事故を起こした動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の改名を求める署名運動に、仏教関係者が立ち上がった。
オウム真理教事件への対応が鈍かったとされる仏教界のマイナスイメージをぬぐい去りたい、という願いを込めた運動だが、思わぬ提案に動燃側も戸惑っている。
署名を始めたのは宗派を超えて布教活動に取り組んでいる「南無の会」(事務局・東京都大田区、松原泰道会長)。
同会によると、仏教を悪用したオウム真理教の一連の事件について、キリスト教などは積極的に問題点を指摘し、被害者や脱会者の支援に当たったのに対し、仏教界は動きが鈍かった。
そんな中、仏教で知恵を象徴する菩薩の名を与えられた「もんじゅ」で昨年12月、ナトリウム漏れ事故が起き、動燃の事故隠しも明らかに。「仏教は誤ったイメージを持たれ、埋もれてしまう。今こそ行動し、社会に提言していかなければ」と危機感を持ち、慈悲の菩薩名を持つ動燃の新型転換原型炉「ふげん」(敦賀市)を含め、改名を呼び掛けることにした。
同会は、機関紙を通じて署名を呼び掛け、改名を求める市民の集いを結成。集いの発起人には、作家の永六輔さん、立松和平さん、大学数授らさまざまな分野から100人以上が集まった。
地元の福井県でも、この話を知った中島弥昌県議会議長らが、同県を訪れた中川秀直科学技術庁長官に「ふさわしくない菩薩名をやめて科学的な名前に変えたら」と詰めよる場面もあったが、中川長官ははっきりと返答することは出来なかった。
動燃によると、「もんじゅ」と「ふげん」は、知恵と慈悲で巨獣を制御している両菩薩にあやかり、原子力も同様にコントロールできるようにとの願いから命名。菊池三郎・もんじゅ建設所長は「謙虚な気持ちで使っており、署名が集まっても改名の予定はない」という。
最初に改名を呼び掛けた機関紙の前田利勝編集長は「ただ、名前を変えさせればいいというのではなく、運動を通して、原発の安全性やエネルギー問題について広く考えるきっかけにしていきたい」と張り切っている。(三国通信部・沢田一朗)

(中日新聞 1996/03/24)