【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

もんじゅの温度計さや 運転100時間で折損も 振動にもろい構造

動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)のナトリウム漏れ事故で、先端が折れた温度計のさやは、100%出力時にナトリウムの流れによって生じる振動と共鳴して揺れが増幅し、金属疲労を起こしやすい構造だったことが12日、動燃大洗工学センター(茨城県大洗町)の分析でわかった。100%出力の場合、最悪だと100時間前後の運転、1億回の振動で折れる危険性があるとされ、「もんじゅ」ではすでにそれに相当する流速でナトリウムを長時間動かしていた。こうした分析は、事故前にはほとんどなされておらず、動燃や国のずさんなチェックが問題になりそうだ。
同センターは事故後、大型コンピューターを使って、ナトリウムの渦による振動で、温度計さやの先端部(長さ15.4センチ、直径1センチ)がどのように揺れるかを計算した。
その結果、さやそのものが持つ揺れやすい振動数は230-300ヘルツ(1ヘルツは1秒間に1振動)で、ナトリウムが秒速5メートルとなる100%出力時の場合、流れの中で自然に起きる「流体振動」は200-260ヘルツであることがわかった。
周期が似通ってくると、振動を増幅する「共振現象」が起きて揺れがいっそう強まり、強い力がかかる。
さらに、100%出力では、幅はあるものの最悪の場合、1億回の振動で大きな金属疲労が起き、さやの急に細くなる部分に強いひずみがかかって先端が折れやすくなることがコンピューターの解析で分かった。運転時間にすると、100時間前後で振動回数は1億回に達するという。
もんじゅではこれまで、40%を上回る出力試験はしていないが、1992年の循環ポンプ試験を中心に、100%出力に相当する流速でナトリウムを800-900時間循環させており、温度計さやの振動は1億回をゆうに超えていたという。
動燃はこれまで、温度計の振動試験を独自でしておらず、事故後の分析でこうしたデータをつかんだという。現在、メーカーがどのような分析をしたのかを問い合わせるなどの調査を進めている。

(朝日新聞 1996/01/12)