【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

チェルノブイリ汚染地域 子の甲状腺障害は10倍
非汚染地と比較 信州大調査

チェルノブイリ原発事故で汚染された地域の子どもたちの甲状腺(せん)にしこりができる障害は、汚染されていない地域の子らに比べて10倍あることが、信州大医学部第2外科の菅谷(すげのや)昭講師、飯田太数授らのグループの調査でわかった。汚染地域と非汚染地域を比較することで、事故の影響がはっきりしたとしている。
事故の汚染地域では、子どもの甲状腺に、がんなどの異常が発生し、事故で放出された放射性物質の影響が大きいと考えられている。
しかし、汚染地域は内陸部にあり、甲状腺ホルモンの材料になるヨウ素を多く含む海草などの摂取量が少ない。このため、甲状腺がはれる症状をもつ住民も多く、放射性物質の影響なのかはっきりしないとの意見もあった。
菅谷さんらは、民間の日本チェルノブイリ連帯基金(本部・長野県松本市)の協力で1991年から5回、ベラルーシを訪れた。そして汚染地域のチェチェルスク市の子ども888人と、非汚染地域のボブルイスク市の子ども521人を調べた。
甲状腺がはれている子どもの割合は、非汚染地域が75.6%で、汚染地域の54.3%を上回っていた。これは、汚染地域では事故後、政府の指示でヨウ素を積極的にとるようになったためらしいことがわかった。
その中で、はれが大きい子ども約300人ずつの甲状腺を超音波で詳しく検査した。その結果、しこりがある子どもの割合は汚染地域が11.4%で、非汚染地域の1.2%の約10倍になった。血中の甲状腺ホルモンの量は、どちらの地域でも正常範囲内だった。
菅谷さんは「汚染地域の子どもたちの甲状腺は、ヨウ素が不足していたところへ、事故で放射性ヨウ素が取り込まれ、障害を受けた可能性が大きい」と指摘。「しこりががんになったり、これからしこりが生じたりする可能性もあるので、長期間、追跡調査する必要がある」という。

(朝日新聞 1993/03/10)