1973年に発売される「狂気」は,1972年1月20日のブライトンドームで初めて披露された.この初演は,残念ながら音響機器故障の関係から「Money」で演奏が中断され完奏はできなかったが,その後1年弱かけて,その形を整えていきました.
 本作は,1972年10月21日のロンドンエンパイヤプールから開始された,ヨーロッパ・ツアーの終盤に当たる,1972年12月1日パリ近郊セント・オーウェン公演の音源であり,スポンサーだった関係からか現地ラジオ局:RTL (:Radio Télévision Luxembourg) が録音&放送したものです.

 既発音源と比較すると,高音部が強調された印象を受けます,その関係もあり,音質的な好みでは,既発の方が聴きやすいという人もいるかも知れません.

 メーカからの情報によると
 「今回のSigma盤では、ディスク1,2共に、後半になるに従って徐々に下がっていくピッチの狂いを完璧に補正,より正確な内容で収録されています.放送の段階で欠落していた「Speak To Me」,「Breathe」,「On The Run」の前半,更には「One Of These Days」,「Echoes」の最初の部分(合計約10分間)を,その前のショウである11月29日のフランス・ポワチエ公演のテイクを自然な質感で繋いでおり,よりスムーズにショウの全貌を楽しめるように仕上げてあります.サウンドはしっかりとミックスされていますが,やや細めのサウンドであり,肉厚感に欠けるモノラルの音像です.しかしながら高域の抜けは良く,音像の劣化も殆ど無いだけに,聴き応えは相当なものがあります.」
との事.

 セットリストは,このツアーでの定番であり,第一部が当時未発表だった「狂気」,第二部が往年の名曲で構成され,このツアーの中盤まで,最後に演奏されていた「Set The Controls For The Heart Of The Sun」に変わり,『Obscured By Clouds』収録の「Childhood's End」が演奏されており,これが全て放送されたと考えると,時間的な面も,そして「Childhood's End」が演奏された事も含めて驚きです.ただフロイドの放送音源と言えば,過去にも定番の BBCを始めとして幾つかリリースされていますが,BBC音源のような音を期待すると,初めてこの音源を聴く方はがっかりしてしまうかも知れません.「Dark Side Of The Moon」は,既に完成された形で披露され,BBCには劣るものの演奏自体は安定して聴くことができます.ちなみに私は,既発盤も聴いていますが,そんなに音質的な差は無かったので,少しがっかりしました.

 本音源は,ラジオ放送音源という事で「On Of These Days」が終了した後に,DJ の MCが被っています.またラジオ局が収録した割りには,マイク関係のトラブルとも取れる状況も多々あり,「Careful With That Axe, Eugene」でのロジャーのスクリーミングが殆ど収録されていませんし,「Us And Them」そして「Brain Damage~Eclipse」等も殆どオフ気味です.その部分は非常に残念ですが,歴史的な1枚が,既発に比べて,高音質で聴けるというのは,魅力です.


Saint Ouen 1972 (Sigma 72)
  cinnamonの独り言:音楽ときどき競馬予想
  Live at Centre Sportif de l’Ile des Vannes,Saint Ouen,France 1st December 1972
  (Radio Broadcast Recording)

Disc 1
 Dark Side Of The Moon
 1.Speak To Me
 2.Breathe
 3.On The Run
 4.Time
 5.Breathe (Reprise)
 6.The Great Gig In The Sky
 7.Money
 8.Us And Them
 9.Any Colour You Like
10.Brain Damage
11. Eclipse

Disc 2
 1.One Of These Days
 2.Careful With That Axe, Eugene
 3.Blues
 4.Echoes
 5.Childhood's End


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[参考]
Saint-Ouen (Paris)
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