★第94話:あるマンションの管理人を終えて | 中高年の中高年による中高年のための音楽

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 昨日は怒涛の一日だった。今日は明日から始まる新しいマンションの管理人になる前の、束の間の休日である。

自分は何度も転職をしてきたので、辞める間際の忙しさは十分承知しているはずだった。月の初めから最後の1ヶ月の計画を立てた。しかし、計画通り物事がスムーズに行くことはまずありえない。必ずと言っていいほど予期せぬ出来事が起きるからである。

 

引き継ぎ書の完成

 

 前作「第93話:今の仕事も残り5日」で述べたように、引き継ぎ書の作成にも予想以上のエネルギーが必要だった。これは3年間足らずではあったが、マンション管理人の仕事の集大成である。これを見ると、この間自分が何をしてきたかがよく分かる。文章化することで、この期間にやれたことと同時に、欠点や、やり残したことも明確になるからである。

 いつもそうだったように、ここでも引き継ぎ書がないためとても苦労をした。後任にはこの苦労を少しでも減らすためと、仕事の曖昧さを減らすためにも、業務のマニュアル化の必要性を強く感じていた。

 管理人になってからすぐに取り組んだのが「管理人マニュアル」である。その後入居者用に作った「入居者案内」。しかし、どちらも完成したとは言い難い。それに2年間ほど、定型の月次報告書とは別に「業務月報」を作成し続けてきた。 の積み重ねが、この引き継ぎ書の作成の際には随分役に立った。

 こればかりは途中で投げ出すことは出来ないので、仕事が終わった後も残ってその作成に励んだ。それでも完成したのは昨日、このマンション勤務の最終日だった。文章だけでは誰も読まない。写真や図を目いっぱい使った36ページに渡る引き継ぎ書がようやく出来上がった。これは、3年間働いた証しの貴重な財産である。

 

あいさつ回り

 

 28日(土)と昨日、40戸足らずのお宅と、近所の親しい人に退職のあいさつにお伺いした。ところが、そこでは自分史のトップに残りそうな予期せぬ感動が待ち受けていた。過去には何度も挫折し、世の中から消えてしまいたいと思うときもあったのに、長く生きるとこんなご褒美に預かることもあるのだ。

 あいさつするのに何もないと少し寂しいと思い、いつも土曜日に来るヤクルトレディにジョアとヤクルトの組み合わせの品を作ってもらい、各戸を訪問した。

 2戸ほど不在のお宅もあったが、ほぼみんなにお会いすることが出来た。いいときに辞めたせいだろうか、予想以上のねぎらいの言葉と、たくさんの方からお手紙やお菓子などの餞別をいただいた。特に嬉しかったのは何軒か、お子さんの絵や添え書きがあったことだ。残り少ない自分の人生でこんなことがあっていいのだろうか。まだその興奮の余韻が冷めやらない。「もう思い残すことは無い」と言ったら言い過ぎだろうか。

 

仕事とは

 

 50代は正に波瀾万丈の仕事人生だった。60代の黄昏時に運気が上昇した。そして昨日は71歳の誕生日。70代の出足はまずまずだが、今後は不安な健康状態がカギを握っている。

 老いて良かったのは、若いころは自分のことばかり考えていたのに、人のために仕事が出来るようになったことだ。マンションの居住者は家族、その近所の人は自分の家の隣人と思って働いてきた。その気持ちがみんなに伝わっていたことを知ったのが何よりの収穫だ。

 マンションの住民のお子さんは自分ののようだ。目の前を走る通学路の小学生の歓声を聞くのが楽しみだ。その気持ちも伝わっていた。

 それでも、仕事をしたくても出来ない人もいる。仕事にありつけたところで、いくら頑張っても報われない人生もある。自分の場合は「運」が味方に付いていてくれた。

 それには感謝しなければならないが、29日(日)のTBSテレビ「テレビ史を揺るがせた100の重大ニュース 平成・令和の記者会見」で紹介されていた有森裕子さんの有名な一言、「自分で自分を褒めたい」のように、今日だけは、自分をねぎらってやりたい。

 

 Yutubeで日本のフォークを聴きながらこの記事を書いている。フォーク・クルセダーズ「青年は荒野を目指す」という懐かしい曲が聴こえてきた。

 今は「老年も荒野を目指す」といった心境だ。明日から新しい仕事が始まる。「人生は邂逅である」。また、新しい出会いが待っている。果たしてどんな出会いになるだろうか。けれども、「人生は糾える縄の如し」。そんなに幸せばかりは続かないのは嫌というほど経験済みである。期待と不安で胸が一杯だ。

 

フォーク・クルセダーズ/青年は荒野を目指す(1968年)