その日、何もかもが面倒に思えていたのだが、学校をサボる理由にはならないので、とりあえず学校には行く事にした。そして教室のドアの前、中にはクラスメイトが居る――当たり前の話だが。そう思うと、急にドアを開けたくなくなった。
 
 先に断っておくが、僕は虐められてなどいない。友達は少ない方だし、クラスでも目立たない方なのは否定のしようもないのだが。
 
 突っ立っていても埒が明かないので、他の人がドアを開けたのに乗じて教室に入り込んだ。
 入り込んだまではいいのだが、席に着く気すら起きない。仕方なく、僕は教室の後ろに立っていることにした。

 しかし、誰一人として僕に話しかけようとしなかったし、こちらを見ようとすらしなかった。
 
 しばらくすると、始業のチャイムが鳴り、先生が教室にやってきた。教室の後方に立つ僕の事は一切気にせず、出席を取り始めた。最後まで聞いていたが、僕の名前が呼ばれる事は無かった。僕は教室の後方に立っていたのにだ。
 
 それから2日を経た今日、僕は相変わらず教室の後方に立っていた。何をするでもなく、ただ単に。
 相変わらず、誰も僕に声を掛けようとしないし、僕を見ようとすらしない。
 
 そんな変化も無い日常に歪みが生じた。
 “彼女”が居なくなったのだ。
 
 僕と同じく、ヤツを見る事のできた”彼女”。
 あれ以降も特に仲が良くなったわけではなかったが、若干の仲間意識めいたものがあったのは確かだ。
 
 そんな”彼女”の姿を二度と見れないと思うと――正直言って寂しい。
 
(続く)