「で、どうなるの?」
 
 彼女の疑問はもっともだが、あんな得体の知れない化け物の生態なんて、僕だって知るわけがない。とはいえ、この数日で分かった事もある。
 まず、普通の人には全く見えないらしい。友人に話してみたのだが、全く相手にしてもらえなかった。
 そして、人に気付かれる事が嬉しいらしい。こっちが向こうに気付くたび、喜んでいるのが感覚的に分かるのだが、それが無性に腹立たしい。
 幸いな事に、実害としてはイライラする程度のものだ。
 
「つまり、無視するしかないって事?」
 
 結果から言うとそういう事になる。分かったのはヤツの行動パターン程度のもので、対処法ではないのだから。
 あと、確証は持てないのだが、ヤツは扉を開ける事ができないのかもしれない。
 
「それなら、あんたの部屋に閉じ込めておけば私の生活は平穏ね」
 とんでもない事を言い出した。
 
「断固として断るよ」
 
 そもそも、ヤツがどっちに憑いて行くのかも分からないのだ。もし、彼女の方に憑いて行った場合はどうするつもりなのだろう?
 返答は分かりきっているものの、うっかり口に出してしまった。
 
 案の定――きつい否定の言葉が返ってきた。
 
 
 
 保健室で彼女と話をしてから数日が過ぎた。
 あれから身の回りに起こった変化としては――ヤツの姿が視えなくなった事。
 
 そしてもう一つ。
 
 ――僕がみんなに無視され始めた事。
 
(続く)