病気を「治したくない」あるいは「治りたくない」と言う人がいます。普通に考えたら、「え? そんな人いるの?」って思いますよね。病気になれば痛いし苦しいし、やりたいこともできなくなってしまいます。従って一刻も早く治したいと言うのが人情だと思うのですが、いったい「治したくない」、「治りたくない」とはどういうことなんでしょうか。

　　　　　　　　　画像　youtube.com 　摂食障害治りたくない

例えば「酒をやめたいけど、やめたくない」、「拒食症を治したいけど、治したくない」、「誰かに相談したいけど、誰にも話したくない」、「助けて欲しい、だけど放っておいて欲しい」

一体どっちやねん! と突っ込みたくなってしまいます。しかしこのような訴えをする人は、確実に増えているのです。

おそらく様々なジレンマに陥って、身動きが取れなくなっているのかもしれません。そんな人たちに向かって私たちは、いわゆる「常識」を突きつけたくなってしまいます。

例えば、「これ以上飲んだら、死んじゃうよ」

「しっかり食べなきゃだめでしょ」

「あんた一人で解決できると思ってんのか」

しかし、常識を突きつけられるほど、患者はたいてい反発してしまうものです。

　　　　　　　　　　画像　ckwarp.com 治りたくない理由

「酒をやめてまで、長生きしたいとは思いません」とか、

「あんたなんかに何が分かるんですか」などと言う具合です。患者のこのような抵抗に遭うと、治療者は患者自身(の性格とか生い立ち)に問題があると考えがちになります。

確かに患者の責任にすれば話は簡単です。しかし人が変化していく過程で、しばしば「アンビバレンツ」な状態が生じるのは、ある意味自然な事なのではないでしょうか。

例えば皆さんだって、「ダイエットしたいけど、食べたくて仕方がない」とか、『勉強しなくちゃならないけど、やる気が起きない』などの葛藤も、ごくあり触れたものとして、体験されているでしょう。

そういう意味で患者さんは、「このままではいけない」ことは重々承知しています。ただそれを他者から指摘されると、抵抗してしまうのです。これを森田では「犬も頼めば糞食わずの心理」と言います。

酒がやめられず、自暴自棄になっている人に向かって、「お前は全くダメ人間だ」などと言ったらどうなるでしょう。治療どころの話ではなくなりますよね。

参考・・・「懲りない困らない人々」、「助けてが言えない」

「変わりたくない」人々