退任式で花束を渡してくれた彼女は、「もう1年いてほしかった」と、私にだけ聞こえる声で囁いた。
その時はそこで時間切れとなり、式の後、生徒たちの作る花道の先で待ち構えていた彼女は、今度は大きめの声で同じ言葉を繰り返した。
「私もいたかったよ」そう返すのが精一杯だった。
彼女は泣いていた。
図書室に戻って程なく、号泣しながら入ってきた彼女は「どうして?」を繰り返していた。
来年度から雇用条件が大幅に変わるためだと説明すると、納得はしてくれたが号泣は続く。
号泣対応には不慣れな私が「あんなに一生懸命やってくれてたのにね」なんてつい言ってしまったものだから、泣き声が一層大きくなる。
「先生、ティッシュ〜!」
そんな高級なものは隠しておいて、いつもはトイレットペーパーを出すのだが、今回は別。
「大サービスだよ」と、とっておきのお高いティッシュの封を切る。
彼女は後期からの図書委員長で、任期は来年度の前期までだ。
委員長になる前からとても積極的に委員会活動をしてくれていた。
ほとんど毎日、カウンターや配架の手伝いに来て、わからない生徒には教えたりもしてくれた。
委員会活動として、ラベルの見方の指導も自ら何度も勝って出てくれた。
委員会での議題の進行も手際よくきちんとできていて、非の打ち所がない我が校誇りの立派な委員長だ。
「今までで、あなたほどやってくれた生徒は初めて」と言うと、
やっと少し泣き止んで、「誇りにする」と言ってくれた。
その時、彼女にとって私は単なる仲良しの司書ではなく、同志だったのだと理解した。
心の中でだけ「ごめんね」とつぶやく。
同志なら、声に出して言ってはいけない言葉だ。
出した途端、ここからいなくなる私の行為は裏切りになってしまう。
そんな気がした。
少しして、「よし!」と何かを決意したように立ち上がった彼女は、もう泣いてはいなかった。
「頑張ってね」そう言って送り出した時には、少しだけ笑顔だった。
彼女は強い。
『未来は自分で切り開く』
それを体現するような彼女に、新しい一歩を踏み出す勇気をもらった。
別々の場所だけど、一緒に頑張ろう!
あなたと私は同志なんだから。