そんなバナゝの昼下がり | make life sing

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人には夫々の運があるものだが、仏教の世界でも物事の優劣や勝敗をジャンケンで決した昔があるという。頸を傾げる向きもあると思うが嘘のような本当の話だ。『石と紙と鋏が示す結果を民意の法則』と定め、易や占師が使う『一指は天地なり』という八卦(手に掴る筮竹の数)は時の運命と決定づけてきたのである。一見愚かとも受け取れるが『ジャンケンポン(ホウイ)』は『料簡法意』(リョウケンホウイ)の音写と言われ、浄土宗の教えにもある と聞く。皆様も日頃の会話で「料簡が悪いとか、了見が狭い」などと使われることがあると思うが「法意(仏様)の思案」も及ばない場面では『公正無私、時の偶然が齎す(勝敗)は此れを真と成す』と定めた「ジャンケンホウイ」だったようである。賽コロやじゃんけんで人の運命が左右されるなんてとんでもない??とご立腹の向きもあるだろうが、善悪や優劣だけでは決め難い局面もあり、そんな時に編み出された高僧たちの知恵だったと言われると不思議に頷きたくなる。夏の太陽が照り付ける昨年の丁度今頃のことであった。八つ時なので珈琲を飲もうとダイニングに近づくとテーブルの上に天狗の団扇か? 野球のキャッチャー?ミットか? と思える馬鹿でかいバナゝの房が置かれていた。一人じゃ抱え切れないだろうと思う数量に見える。孫太郎もママと一緒に運搬のお手伝いをしたという日曜日の「農協祭」で文字通りお祭り騒ぎだったらしい。親子でバナゝの本数を数えている最中であった。笑顔を見せながら運動会の玉入れ宜しく数えるのを珈琲を飲みながら傍観していた。一房に22~3本が連なっているようで、それが三房??合計68本もあったと親子で勝ち誇った顔を見せている。野菜など他の買い物もあったようだが、バナゝの量に目を丸くしていると嫁さんが成り行きを説明してくれた。『毎日みんなが食べるし 結構廉価だったので大房を一つ買ったんですよ、そうしたらネ??「もう一房買って頂いた人にはジャンケンの権利が生まれ、私(業者)との勝負に勝てばお買い上げの二倍(もう一房)を差し上げます」って言うんですよ??ゲーム感覚で、やってみようか??と言うことになり挑戦しました??』夫婦、親子がお互いに顔を見合わせながら私に聞かせてくれた。家中で一番の勝負運を持つ嫁さんは商店街やスーパーなどでの抽選で度々一等賞や特賞を当てる強運の持ち主だ。当家では籤引きの役どころは嫁さんに決まっていて、得々と語る様子を微笑ましく聴くティータイムであった。     『アイコでしょ??で次を読み勝ちしたようです??』南シナ海では南沙諸島の領有権を巡ってフィリピンと中国が真っ向から対立する構図が背景にあるようで、昨今の国際舞台でも話題を投げ掛けている問題がある。大連や上海では通関手続きも出来ないのだとか??。国境に生じた軋轢の影響がバナゝに関しては日本の消費者に味方したようだ。安値を更新しながら謂わばバナゝデフレを起こしているらしい。気温により旨味を損なうこともあるので更に相場は下落傾向にあるということであつた。バナゝが日本人の口に入るようになったのは明治36年頃で台湾バナゝだったとされるが、私が幼なかった昭和の前半には貴重な果物で一般家庭では簡単に食せなかった記憶がある。小学生(国民学校)の頃も遠足だとか、風邪ッ気で食事が喉を通らない時以外、バナゝと玉子焼きは食べられなかったことを思う。戦時下ではセロファンに包まれた干しバナゝの記憶しか私にはない。カロリーは蜜柑の約二倍もあるというバナゝ??栄養価は高いという。「じゃ 爺さんも一本ご馳走になろうかな??」偽りの無い大安売り??そんなバナゝの昼下がりであった。今年も恒例の農協祭が近づいたようだ。