走圏②の「後趟」では、「掀蹄(踵を地面から離して挙げる)」せず、踵から歩を進める功法を記述した。

今回は次に行う「前趟」、そしてその後に続く「平趟」について。

 

「前趟」

「後趟」が踵を中心とした歩行であったのに対し、「前趟」は脚掌を中心とした歩行となる。

「後趟」と異なり、「前趟」では若干「掀蹄」し、踵が見えるが、「亮掌(脚掌(前足底とその周り)が見えるように足を降ろす)」はしない。足を降ろす時は、脚掌と地面が平行とになるように降ろし、降ろす直前に約半歩程前に滑らせるように進める。程派の擩步涌步などと類似した歩法だ。滑らせるのに気を取られて、また背中の呑吐を強調しすぎて命門が崩れ、背中が反るような動きになってはならない。

 

「探歩」

「後趟」が踵で畑を耕すように、土を掘り起こすように強く地面と摩擦させて進む歩法であったのに対し、「前趟」では川や海の中で抵抗力を感じるように進む。速度はゆっくりと。初期は歩を進めている途中、足は脚掌の中心部に位置する涌泉穴を中心に、手はてのひらの中心部に位置する労宮穴を中心に(掌式がどのような形でも同じ)、暖かで全体に広がっていくような、両手両足が厚い膜を張っているような気感を得られ、脚を滑らせている途中は次第に強い抵抗感を感じるようになる。走圏①で書いた、要求(腰を塌腰、命門を突き出すようにした形を維持したまま回す)ができていないと、腰を回した途端に感覚は消えてしまう。八卦掌を続ける限り、転腰の練習は日々習慣的に行わなくてはならない。

 

「趟tang1」は「探tan4」でもある。

「前趟」の第二段階では、歩く際に前足を左右に蛇行させながらゆっくりと歩を進める。これは進む方向を前足で「探(探っている)」している状態で、意念仮借で、反応を研ぎ澄ます訓練だ。これを「探歩」という。意は魚が川や海の流れを読んで泳ぎ進むように、あるいは蛇が野を進むように。基本的には武当派の特徴を表す「四功」の拳訣を離れることはなく、蛇、亀の意を用いて行ってよい。

同時に、「後趟」よりも後ろ足(走圏中内側の足)の引き寄せ、外擺(または進)に移るタイミングについての細かな要点が着け加えられていく。

 

「平趟」

「後趟」・「前趟」の練習が進んだら、最後に「平趟」へと進む。文字通り脚を地面と平行に上げて進み、「掀蹄亮掌」しないように心掛ける。、かつ後、前2種で養った力を保ちながら歩く。

「後趟」・「前趟」を練習してから歩く「平趟」は、水飴を混ぜるような粘り強さ、抵抗力と重さがあり、最初から平起平落を行う練習者のそれとは形が同じであっても質が違う。これらがしっかりと身についた上で、「三盤」を語るべきだ。架式は長く練習し、必要な功がついてくれば徐々に下がるようになっていく。

 

「鶏形歩」、「鶴行歩」といった歩法もあるが、それはまたいずれ。