武術のプランク系体幹トレーニング、「臥虎功」(フロントブリッジ)と、 「鉄板橋」(バックブリッジ)

 

臥虎功

同功法は、その名の通り虎などのネコ科が伏せをしている様子に見立てて臥虎と呼んだことに由来する。少林寺七十二芸に記載があり、現在国内で行われている似たような功法はここから派生したものらしい。武当派でも工夫を加えて練習している。内容としては体幹トレーニングのフロントブリッジのバリエーションの一つであると思ってもらって構わない。

 

練習方法 

腕立て伏せの姿勢を作り、両手は八の字に向けて合わせ、間隔は手首から指先(中指)くらいまで離す。肘は120度前後まで曲げる(狭い腕立て伏せを途中で止めたような形)。曲げる限界は90度まで。両足は合わせて身体全体を真っすぐに張ったロープのようにする。

形が出来たら静止したまま同姿勢を力尽きるまで保ち続ける。自然呼吸で、初期は意念を仮借しない。練習が終わったあとは軽くジャンプしたり体を震わせる(貧乏ゆすりのように小刻みに震わせる)などして体をほぐし、気血(血行)を良くする。

 

注意点

1.腰は下に落としてはならない。くびれ(名門)は真っすぐな状態を保つ。背中側から見たとき身体が平面に見えるように。

※「真っすぐ」が意識しにくい場合は、壁に寄りかかって立ち、背中から腰全体を壁に貼り付けるようにして立ち、感覚的に身体に記憶させると良い。

2.正しい姿勢を維持しながらも、放松(リラックス)を心掛ける。必要最低限の筋肉を使い、余分に力まないように力加減を探っていくことが重要だ。


全身の力で支えなければその姿勢を維持するのが難しい状況の中で松を求め、筋肉を緩めたら身体は何で支えるのか?使うのは靭帯だ。伝統武術、特に内家拳における筋骨力の訓練は松と緊の間、ちょうどよいゆったりとした、安定した力の使い方を意味している。

 

練習時間

同功法は30秒やって一度休む、というように分けて行うことはせず、1回何分できるのか、で時間の目標を立てる。

最初は3分を目標にするが、普段体幹トレーニングに類似した運動を行っていない場合、おそらく頑張っても2分前後が限界であると思う。徐々に増やしていくよう努力し、半年で3分~5分を目指す。3年程度で20~30分姿勢を維持することを同功の最終的な到達点とする。

日に5分を続けられるようになると、興奮剤を飲んだかのように精神が充実し、疲れにくくなる。しかし、こうした効果は少なくとも2週間ほどは続けなければ感覚としては現れない。10分を超えられるようになったあたりからは呼吸を逆式の腹式呼吸で行うこととする。

 

腕が限界を迎えた場合は通常のプランクに切り替える

同功法を行うと、身体(体幹)はまだ支えられるのに腕が辛くて耐えられないということが起こる。当然だが腕の力が体幹より強いはずはなく、限界は腕が先にやってくる。その時は通常のプランクに切り替えて続ける。両肩は下に向けて沈むように肩甲骨を押し下げ、背中は上に押し上げる。胸部は下に落ちないようにして他の部位の体勢が崩れないようにする。硬いマットの上などで、肘の痛みから練習が中断してしまわないように薄いクッションや座布団などで支えてもよい。また、肘を120度曲げたまま支えるのが難しいという場合は、腕立て伏せを行う前のように肘を伸ばしていてもかまわない。あくまで120度での維持が厳しい場合のみの切り替えとし、普段は最初からプランクの姿勢や肘を伸ばした状態で行わないようにしたい。

 

 

 

鉄板橋

バッグブリッジに相当する練習方法で、椅子を使って行う。中国内では男性の滋養強壮に良いということで、南少林のものとして紹介されているのをよく見かける。こちらも少林寺の七十二芸が市井に広まったものだ。同じく武当派でも練習されており、段階を追って意念を追加していく。

 

練習方法

椅子を二脚用意する(同じような支えになるものなら別のものを使っても構わない)。仰向けになり、肩から上、首や頭部を一方の椅子に載せ、もう一方の椅子には膝から下を載せる。支えの無い身体を真っすぐに伸ばし、その状態を維持する。その姿から鉄板で橋が架かったように見えるので鉄板橋という。

 

注意点

臀部は下に落としてはならない。必ず真っすぐな状態を維持する。両手は腹部の上に載せる。このことから、手が解放され、支える部位は腰と背中に集中する。(肩を椅子に載せる位置に注意する。首や頭で支えることがないようにすること)。初期は意念の仮借、運気等は行わない。

普段体幹トレーニングを行っていない場合、1分もすれば腰に痛みが生じるようになる。

 

練習時間

最初は3~5分を目標にして行い、最終的には30分を目指す。こちらは臥虎功とは異なり、早ければ3ヶ月~半年程で30分に達することができるだろう。初期は効果が表れると便意が強くなり、余分な毒素を排出するようになる。続けることで身体が軽くなり、疲れにくくなる。腰、背中に痛みのある場合はそれが解消されるなどの効果も期待される。

30分から先は自身の進度に合わせて時間調整を行うが、時間の延長などのほか、補助練習として腹部に本などを載せ、徐々に負荷をかけていく。重さは最大20~25㎏とするのが望ましい。(パフォーマンスで人を載せるのを見たことがあるが、身体に良いとは思えない。)慣れたら呼吸を逆式の複式呼吸に変えて行う。